「大蔵大根」です。
ぼやぼやしていたら花芽が上がってきてしまいました。
本来はこうなる前に掘り上げて個体選抜を行います。
花芽が出てから掘るとダメージが大きくなるので、なるべく根を切らないで細根をたくさん残すように気をつけます。
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最近ではスーパーに並んでいる大根は青首系のF1品種ばかりだそうで、わざわざ「大蔵はどこ?」なんか言って大根買いに行く人もいないでしょうが、何故か在来種の中では有名ドコロです。
京都の「聖護院大根」と並んで、伝統の味、と言う感じで人気が高いようです。
すると今度は栽培農家さんの生産性の要求も出て来ますので、「F1大蔵」とか「F1聖護院」と言う営利栽培向け強化品種みたいのも出て来ています。


それは良い事だろうと思います。
少なくとも「固定種至上主義」や「無農薬、無肥料至上主義」の様な内容もないのにそれ自体が目的化してしまった原理主義より、現実の栽培に適したものを開発し、良い所は残し欠点を補うと言う考え方の方が前向きでよっぽど発展的であろうと思います。


その一方で、「じゃあオリジナルはどんなだったの?」って言う「原点回帰欲求」も当然あるわけです。
オリジナルがはっきりしていないと、現在のバリエぃションのどれがどうなのか基準がなくてワケがわからないと言う事にもなります。

ところが生物というのは変化の過程の一断面ですから、常に遺伝情報は少しずつ書き換えられ、形質、性質には変異が起こり、ジワジワと姿を変えて行く、まさにその最中にあるのが生きていると言う事の実態であるわけですから、どの時点を取り上げてオリジナルと言うかは結構難しい問題です。

在来野菜にも「昔のものはもっと大きかった」とか「元々は長いものだったが丸くなった」と言うようなものが多いようです。

現在は品種登録制度が充実していますので、農水省に登録された品種特性の内容を見れば、品種として確立された時点での形質性質が詳しく分かりますので、これをオリジナルと見るのが妥当でしょう。

もう少ししたらDNAそのものを標本として保存して、何時でもオリジナルがどんな植物だったか再現して確認できるようになるかもしれません。


しかし、江戸時代などから伝わっている在来種は、そもそもその時代にどんなものだったかが不明確ですので、オリジナルの姿を突き止めるのにも限度があります。

それで、まあ、ちょっとボヤ~ッとアソビを持たせて、だいたいこの辺からこの辺までじゃないの?くらいでお茶を濁さざるを得ないのですが、植物学的あるいは品種の定義なのどムズカシイ話から言うとエエ加減なその態度が、作物文化あるいは農業文化、食文化にとっては案外妥当なのではないかとも思えます。

何事も「現場」では、あんまりキッチリし過ぎない方が、自由度があってやりやすいし、それがまた、新しい発展の元になったりもします。

そのボヤ~ッとした「大蔵大根」です。
これは自家採種からではなく大手種苗会社のタネを購入して栽培したものです。
お恥ずかしいくらいの出来の悪さです。
でも、ウチのはなんでもだいたいこんな感じです。
もうひと回りくらい全体の出来を良くしたいと思いますが、あまり出来過ぎてるのも困ります。
タネ親は栽培者の皆様のところで育つ一回り手前くらいの痩せ出来が良いのではないかと思います。
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小柄なのは無肥料のせいばかりでもないようです。
「大蔵」や「国富」の様なウイルス病に強い品種は、早播きしても大丈夫なので、もっと早く播いて秋に充分肥大させればよかったのです。チョット遅すぎました。

ウイルスに弱い品種は早播きすると未だアブラムシやカメムシなどの吸汁昆虫が活動していますので、それらが媒介してウイルスに感染しやすくなります。
人間が蚊に刺されてデング熱なんかにかかるのと同じ感じです。


形で言うと全体がズンドウで、先が丸く詰まっているのが「大蔵」らしい形ではないかと思います。
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真ん中のオシリの丸いやつが「大蔵」らしくてイイですね。
でも、他のヤツラも全体の雰囲気では悪くないので、あまりシビアにせずに、ちょっとイイカゲンな「オオクラ」でタネを採りたいと思います。


作物自体もなんとなくボヤ~ッとした感じです。
味はまろやかでオロシも甘口、煮物やオデンに向くユル~い感じのキャラですね。
真ん中ヘンのヌボ~とした感じのヤツからタネを採れば良いような気がしますが、元々あんまりカチッとした特徴の大根でもないので、シビアな個体選抜はせずにボヤ~ッとのままにしておいた方が「大蔵」らしいのではないかとも感じます。

同じ江戸大根でも「亀戸」なんかは個性がとてもはっきりしているので、タネ親もはっきりしたヤツを選びたくなりますが、ボヤキャラのオオクラちゃんが急にシャキーン!として来たりすると、「オイオイ、ちょっとオカシイんじゃないの、あんまりムリさせると逆噴射するからヤバイよ」って気もするので、「あんまり揃いが良くないし、チョイチョイ変なの出るよね」くらいのところでヤンワリ行った方が良いような気がします。