新たな土地にやって来て作物を栽培する時には、気温や日当たり、風当たり、降水量など、今までと違うのでなかなか勝手がわからず上手く行きません。

今年は移転時期が春の作付期に重なり、しかも移転先の新栽培場は農地ではなくタダの山と造成地で、圃場としての整備も間に合わなかったので、ほとんど野菜を作付ける事が出来ませんでした。

それでも夏野菜が全くないのは寂しいし、何より自分が食べるものは必要なので、ライ麦畑の隅っこに「博多長ナス」を植え付けました。

やはり、夏場は「ナス」「トマト」「キュウリ」などの果菜類を作りたいですね。

ライ麦の生育具合を見ていて、この土地は痩せていると判断しましたので、無肥料栽培は行わず、チョイチョイ鶏糞を振りまいていました。
どうもこれが判断ミスで、土壌は結構肥えていた様です。
と言うか、ライ麦を作付けた冬の間にはあまり地力が発現していなかったのですが、気温が高くなるに連れてジワジワと出て来た、と言う感じです。
たぶん、ヨモギやオオマツヨイクサなどの宿根雑草がびっしりと根を張っていましたし、ニセアカシアなどの樹木も生えていたので、ライ麦によって生育を抑えられたそれらの根が枯れて腐って分解し、肥料分となって効いて来たのではないかと想像しています。
施肥した鶏糞に加えて、地力の発現があったので、やや窒素過多状態になりました。
こうなると野菜は良く育ちますが、無農薬栽培で害虫防除をしないので、メチャクチャ虫に食われます。
ナスの葉は、あっという間に葉脈だけを残してレース状態になってしまいました。
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どうやらヨトウムシが伸ばしっぱなしの雑草の根元に潜んでいるらしく、虫の姿は見えないのですが、日に日に葉っぱの穴は拡大して行きます。
これだけ雑草が生えているのですから、少しはソッチの方も食えば良いじゃないか!!と思うのですが、ナスの葉の方が美味しいのか夜な夜な出てきては葉っぱを穴だらけにしていきます。
しかし、良く見るとナス自身の草勢は落ちておらず、色艶のよい肉厚の新葉を覗かせています。

私は、化学農薬であろうが自然農薬であろうが、害虫防除と言う作業自体が嫌いです。
第一に「面倒くさい」第二に「面白くない」第三に「不経済、非効率」と言う事で、やらずに済むのが一番と考えています。
よく環境活動家の人などがツイッターなどに日本の農産物は世界で一番農薬がかかっている、とか各国の農薬使用量をグラフにして断罪しておられますが、「このバカ素人!!」と思います。
日本は諸外国に比較して雨が多いので、同程度の効果を得るためには、より多くの農薬を使用しなければならなくなります。
降雨により流亡する薬剤の量を計算に入れずに議論しても意味がありません。

また、農家はできる事なら農薬施用はしたくないと考えています。防除作業は辛く、楽しくなく、危険な作業なのでやらずに済むならやりたくないでしょう。
また、作業労賃や薬剤代は農家の経営を圧迫します。それだけ儲けが減ると言う事です。
農薬撒かずに栽培できれば、環境的にも経営的にもそれに越した事はありません。

6月22日には、葉脈だけを残してボロカスにされていました。
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新芽に力があると感じたので、薬散もせず、虫取りもせず、自然農薬も使わず放おって置きました。
ヨトウムシや青虫の様な、蛾や蝶の幼虫は、いつまでも野菜の葉っぱを食べているワケには行かず、いずれは蛹になり成虫にならなければなりません。
モンシロチョウを見れば分かりますが、成虫は野菜を食べません。
ナス自身にヤル気がみなぎっているので、いずれ時が来れば害虫は成虫となり食害は止まり、作物が復活してくるに違いないと読みました。
ホラね!!6月28日には、綺麗に治っています。
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ツイッターやフェイスブックで、「自然栽培」の農家さんが、「肥料をやると虫に食われる」と無肥料栽培の利点をアピールされているのを目にします。
実際の圃場で起こっている事は、そんなに単純ではありません。
窒素過多では確かに虫が付き易く、食害は多発します。
しかし、作物自身も十分な養分が得られるので、力を得て再生してきます。
結局はバランスなのです。
無理に無肥料栽培を行って、草勢の弱い野菜を作ってしまうと、害虫はあまり付かないけれど、生育も良くないと言う事になってしまいます。
草生が落ちないだけの十分な養分供給が必要です。
自然農法で上手く生態間での養分の受け渡しが実現すれば、無肥料でも草勢の強い作物が育つ可能性はあります。
それは圃場内での生き物の連環が上手く構築されていればの話しです。
その様な「生態の環」が形成されていない圃場で、肥料をやらずに栽培する事を目標として、なんとしても「無肥料野菜」を育て上げようと、作物を飢餓状態にして不健全な生育を強いているとすれば、全くナンセンスな話です。
養分が過剰となれば、作物は富栄養状態となり、他の生き物のエサとしての価値が高くなり、食害を受けて生育停滞します。
養分が不足すれば、作物は貧栄養となり、他の生き物から狙われにくなりますが、栄養不足で生育が停滞します。
外敵に狙われない健全な栄養状態で、草勢を強く保つ事が大切です。

6月22日にレースだった葉っぱは・・・・
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十分な肥料の働きによる草勢の強さにより、6月28日には綺麗に治ってしまいました。
たぶん幼虫たちが一人前になったのだろうと思います。
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「肥料をやれ!!」と言っているのではありません。
「無肥料栽培は結果であって目標ではない、圃場内の生態の連環が上手く構成されれば結果的に肥料は必要なくなる」と言うことなんです。
また、営利農家さんの場合は、市場価格の良い時期に出荷出来るよう、生育調整を行わなければならないので、悠長に「虫がいなくなるのを待って・・・」とはやりにく事と思います。
極端な自然崇拝主義に陥らず、農薬や化学肥料も絶妙な使い方を目指して、最低限の量で最高の効果を得られる様な技術開発が望まれます。
同時に圃場内の生物多様性を促進できれば、向こうの方に「無農薬、無肥料栽培」が見えてくるのではないかと思います。