完全放任で雑草と仲良く生い茂っている「黄色マイクロトマト」です。
最初は時々草を刈り込んでいましたが、トマトの枝が細かく別れて刈り込みにくくなったので放置しました。

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高温を嫌うのか夏の間は花は咲いてもあまり実がならず、今頃になってたくさんなり始めました。

こんな感じの野草の様なワイルドなトマトです。
実はパチンコ球より二回りくらい小さいものです。

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ところが、その中に混じってこんな赤いプチトマトの房が現れました。

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実の付き方は「マイクロトマト」とそっくりですが、大きさはビー玉くらいです。

比べてみるとこんなに違います。

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播いたタネは某種苗店より購入したものです。
枝葉や花は全く見分けが付かないそっくりのものですので、異品種が混入したのではなく、「黄色マイクロトマト」に変異が生じたのだろうと思います。
変異と言っても通常はこんな極端な突然変異は起らないので、最も可能性が高いのは採種業者の圃場で他のプチトマトなどと雑交したと言う事です。


野菜や花の品種には「固定品種」と「交雑品種」があります。
私も普段普通に使っていますが、「固定品種」或いは「固定種」と言う言い方は誤解を招くのであまり良くないと思います。
これは正式な呼び方ではなく、いわゆる業界用語のようなもので、育種学では使いません。
正式には「純系品種」といいます。

「交雑品種」は「F1品種」の事で、最近悪者にされていて気の毒です。
「交雑」とか「雑種」と言うイメージから、犬や猫の雑種のように色々混じった品種と言う感じがしますが、そうではありません。
色々混じったものは「雑種」なのですが、それでは「品種」にはならないので「交雑品種」とは言えません。
「交雑品種」または「F1品種」と言う場合は、2種類の「純系品種」同士を掛け合わせて種子を得たものと言う意味です。

では、ここに言う「純」とか「雑」とかは何を意味しているのでしょう?

それは遺伝子の組み合わせが「純」か「雑」かと言う事で、遺伝子は一つの形質に対して父方からのものと母方からのものの2つが対になっているのですが、この対が同じものの組み合わせなら「純」(混ざりものがない事)と呼ばれ、異なるものの組み合わせなら「雑」(混ざっている事)と呼ばれます。
例えば、花の色の遺伝子で、父方から「白」母方から「赤」の遺伝子を受け継いでいる場合は「雑」です。
両方から「白」「白」とか「赤」「赤」をもらっていれば「純」です。

「純」の場合は、それしか無いので次世代も「白」とか「赤」の花が咲くに決まっています。つまりこれが「固定種」です。
それしか無いので、そこから採ったタネを播けば、次の世代も同じものが出ます。

「雑」の場合は、どちらか強い方の遺伝子が表に現れます。「白」「赤」と持っていても実際に咲く花は「赤」だけとなったりします。この場合潜在的には「白」も持っているので、そこから採ったタネを播くと、次の世代では「白」が咲いたり「赤」が咲いたりごちゃ混ぜになったりします。「F1品種」からタネを採ったら形質が揃わないと言われるのはこの為です。


それでは「純」であれば「固定」かと言うと、そんな事はなくて、「純系品種」からも異なる形質のものが生まれる場合があります。それが「突然変異」です。
ですから「固定種」と言う言い方はチョット不適切でもあります。
「純系品種」から元々持っていなかった遺伝子の個体が現れるのは、生殖や発生の過程で遺伝子の組み換えやミスコピーが起こるためと言われています。


「交雑」にしても「突然変異」にしても、今までに無かった組み合わせが生まれて新しい特徴を持った個体が出現すると言う事で、とても興味深い現象です。

営業的には野菜の品種としては綺麗に全部が金太郎飴の様にどこを切っても同じものである事が望ましいのですが、工業製品のように丸っきり同じものばかりがズラ~ッとできているのも、可愛げがありません。


こちらは「飛騨カボチャ」です。
今年は長雨のせいで出来がよくありませんでした。
右が普通の「飛騨カボチャ」で、左が皮の白い変異種です。3年ほど前に「飛騨カボチャ」の中から出たものです。

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「飛騨カボチャ」はみんなヘチマのような細長い形です。

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変異種には時々ラグビーボール型のものが混じります。

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これもおそらく「飛騨カボチャ」と白皮の西洋南瓜が交雑したのではないかと思います。
味も変異種は「飛騨カボチャ」ほど美味しくありません。

同じ味で同じ形で色だけ白いものができれば面白いので、毎年選抜と「飛騨カボチャ」への戻し交配を行っていますが、まだまだ数年掛かりそうです。



「交雑」にしても「突然変異」にしても、新しいキャラクターが現れるのはとても楽しい事です。

タネを売る側としては「変異」が多いのは品質が低いということになるので、本来はその品種の特徴がきちんと出ているものでなければならないのですが、営利栽培向けでない家庭菜園用のタネでは、むしろあんまり厳密でない方が楽しいのではないかと思います。

「コシヒカリ」や「ササニシキ」の元になった現代イネ品種の重要な祖先である「亀ノ尾」も、変異株の中から見出されました。
有名な酒米の「雄町」もそうです。
最近、栽培する方が増えた「イセヒカリ」も、伊勢神宮の御神田で発見された変異種が元になっています。

変わった顔をした野菜が現れたら、タネを採って増やして見られてはいかがでしょう?
面白いオリジナル品種ができるかもしれません。