「農業技術を創った人たち」西尾 敏彦 著


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家の光協会
平成10年8月1日初版
ISBN4-259-51747-3
301ページ
定価1,800円

作物栽培は1年に1度しか出来ないものが多いので、なかなか経験を蓄積する事が出来ません。
にも拘らず、実地の作業では「勘」が頼りの部分が少なくなく、豊かな経験がモノを言います。
工業的に各要素のデータを数値化して、コンピュータシステムで解析、判断と言う手法も発達するでしょうが、まだまだ現場では、いちいち端末を開いていては間に合わない、と言うのが現状でもあります。
製造業で「勘に頼らない生産」を推し進めるのには、生産性の問題より人事や雇用を柔軟にする為、と言う経営上の要求の方が大きいようにも思えます。

「勘」で分かる人にとっては、「勘」が一番早くて安上がり、と言う事ではないでしょうか?

その「勘」を身に付ける為には、「経験」が重要なわけですが、これが一回/年と言う足の長さで、短気で性急な現代人の感覚にはなかなかマッチしにくい部分があります。

そこで短気で性急な私としては「パクッたらエエじゃン」と安易な解決策に飛び付く訳ですが、そんな私(貴方)にうってつけの一冊です。

農業のいろんな分野で功績のあった人の事例40話がオムニバスになっています。
しかも、一つ一つは簡潔にまとめられていて、短時間で楽に読めます。

筆者は東京大学農学部卒で農業試験場の技師から農林水産技術会議事務局長になった人で、そっちの方面でのエリート官僚なのでしょうが、技術者らしい中立公平な見方を持っておられるように感じました。

前書きに、全国の至るところで「草の根の技術づくり」が燃え上がることが、農業が元気を回復する最善の道、とあります。

勿論、お上の側の人ですから、産業構造や行政機構にはびこる悪習について改革論をぶたれる様な事はありませんが、「技術」と言う点に的を絞って取り上げられている事により、うまく役人臭さを感じさせずに済んでいると思います。

第1話から第12話までは、水稲に関してです。
コシヒカリ開発の石黒慶一郎氏の話や、V字理論稲作の松島省三氏の話は、品種や栽培法を理解する為に、開発に従事した人の人となりを知る事がたいへんにプラスになる事を教えてくれます。

第13話から第17話までは畑作物、茶。

第18話から第30話までは果樹、野菜、花卉。

第31話から第36話までは農業機械、施設。

第37話から第40話までが畜産、養蚕という構成になっています。

もとネタは、筆者が平成6年から10年まで、農業共済新聞に連載した「日本の「農」を拓いた先人達」で、大幅に加筆して一冊にまとめたものだそうです。

明治の頃のかなり古い話も出ていて、通して読むと近代農業史の大まかな流れもイメージ出来て為になる読み物だと思います。


分かりやすさ ☆☆☆☆☆


内容     ☆☆☆☆★


価格     ☆☆☆☆☆


必要度    ☆☆☆★★

内容については、簡潔にまとめてあるお陰でサッと手軽に読めるのが魅力なのですが、内容が面白いだけに、もうチョット詳しく・・・と感じる部分もありました。