中学受験のみならず、高校入試、大学受験入試、各種資格試験等、試験の名のつくものには「暗記」が必須と言っても過言ではありませんよね。
暗記術系の書籍も沢山出回っていますが、暗記のための学習を効率化するための方法で、勉強しなくてもスラスラと暗記ができてしまうような魔法はありませんよね。
ただ、暗記をするための方法論や暗記学習を効率化するためのやり方をきっちり教わっていないまま、受験勉強をしている学生は非常に多いと感じます。
だから、へんてこりんな暗記学習を何時間もかけてやっている子が沢山いるわけです。
あ、学習塾でこういうことを指導してもらえると考えているなら、間違っていますよ。私が知る限り「塾として暗記学習のやり方を研究して、生徒に指導している塾」はありません。特に中学受験大手塾では聞いたことがありません。あったとすれば非常に熱心な一部の講師が個人的に指導している程度です。
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脳の性質を踏まえた方法で行う
日本人は戦前から「忍耐 根性 努力 」が好きな民族です。ですから「百回書いて覚える」みたいな力技の手法が好きですよね。保護者の皆さんも、こういう'指導を受けたことが一度はあるのではないでしょうか。これ、脳の性質的にはあまり効果がありません。5回程度までは脳が刺激として認識しますが、それ以上は繰り返し動作として認識してしまうため、オートモードに移行します。それ故、インプットとしての効果もほとんどありません。単なる罰ゲームです。
脳に「この情報はしっかり記憶しておくべき重要な情報だ」と認識させないと暗記は成立しません。いわゆる脳が短期記憶から長期記憶に置き換えるにはこの点が最も重要になります。
脳が重要だと判断する情報とは「頻繁に思い出す必要のある情報」です。

現代人は記憶力が低下していると言われていますが、googleなどのインターネット検索エンジンの普及で「思い出そうすること」が減ったからだという記事を読んだことがあります。
私も学生時代に比べると格段に物覚えが悪くなっていました。加齢のせいだと思いこんでいましたが、意識的に思い出す時間をとるようにして、その後で検索するようにしたところ、記憶力が学生時代に近いところまで回復しました。
さて、思い出すためには一旦インプットを行い記憶しなければなりません。ここでインプットした情報がどのように記憶されていくのかを踏まえないと効率が下がってしまいますよね。
インプットした情報は基本的に一旦、短期記憶に分類されて前頭葉にインプットされます。短期記憶という言葉自体は有名なので聞いたことがある方も多いと思います。短期記憶にしまっておける情報は多くて10個程度だそうです。そして記憶として情報を保持できる時間は30分前後。もちろん個人差はあるでしょう。
つまり一度に10個以上の情報を暗記するということは非常に難度が高く効率が悪いということができます。
ここで30分以内に新しくインプットした情報を思い出そうとすると「おや、この情報は記憶しておいた方がいい情報なのか?」と脳が判断し始めます。
そうして、その情報は短期記憶から中期記憶へ移行した方がいい情報のリストに加わります。リストに載ったあとにさらにその情報を何度も思い出そうとすると「あー、これ結構使う情報だから中期記憶に移しとくか」と脳が判断し、情報が中期記憶に移ります。短期記憶から中期記憶に移るまでに5〜6回、思い出す作業が必要になります。中期記憶に情報が移れば、10日間程度は記憶が保持されます。ここで10日経過する前にさらに何度もその情報を思い出したり、使ったりしようとすると、脳は「この情報、めっちゃ参照してくるじゃん。ひょっとして超重要?」と判断して、長期記憶に移す情報リストに加えます。この点が非常に重要なのですが、リストに加えただけでまだ長期記憶には情報を移していないという点です。
長期記憶に移すリストに載った情報はやはり10日前後記憶として保持されます。ここでリストに載った情報をさらに思い出そうと何度もしたり、情報そのものを使ったりする事を繰り返すと、脳がようやく「この情報は長期記憶に保存して忘れないようにしよう」と考え長期記憶に情報を保存します。
長期記憶に情報が保存される前に参照すること、つまり思い出す作業を怠るようになってしまうとその情報は忘却され暗記は成立しないということになります。
定期テストの2週間前からテスト範囲の勉強を始め必死の思いで様々な事項を頭に叩き込んでテストを乗り切った後しばらくすると頭に叩き込んだことをすっかり忘れてしまっていたという経験が誰にでもあるのではないでしょうか。
これこそまさに長期記憶に移るリストに情報が載っただけで参照をやめてしまった結果に他なりません。
おすすめの暗記法
受験となると科目によってこの方法をカスタマイズしていく必要はもちろんありますが、基本的にどのようなスタンスで暗記学習を進めればいいかを以下に述べたいと思います。
覚える情報を5個ピックアップする。
5個を覚える。
覚えるときは3回程度まで書いたり素早く10回音読したりすると良いが、制限時間は5分程度。
5個を思いだす。
覚えたことをすぐさま思い出します。1分粘っても思い出せない場合は飛ばす。漢字や英単語などであれば覚えた情報を何も見ずに書けるかどうかを確認してください。思いだす時間も長くて5分。
再インプット。
さっきインプットした情報のうち、思い出せなかったものだけ覚え直す。制限時間は長くて5分。5個の情報がすべて正解できるまで覚える→思いだすを繰り返す
全部を思い出せていたら次の5個を覚える。
5個を思いだす。
これの繰り返しです。覚えたい問題集を3周する頃にはすべてが長期記憶に置き換わっているはずです。
この方法だと100個の情報を覚えるのに長くても2時間、順調なら1時間程度で終わるはずです。さすがに連続1時間の暗記は小学生にはキツイと思いますので50個30分を目安に毎日取り組む。慣れれくると10分の空き時間とかも活用できるようになるはずです。

