某老舗ホテルのロビー。
初めてヤツの両親と顔を合わせた。
義父は、ほとんど口を開かなかった。
話すのは義母ばかりだった。
「初めまして」
そう挨拶すると、義母は私の服装を見て言った。
「まぁ!ちゃんとスーツを着ていらして!」
ヤツからは、ちゃんとした服装で来るように言われていた。
何をもって「ちゃんとした服装」というのか分からなかったが、手持ちの白いスーツを選んだ。
スカートは膝より少し上だった。
挨拶を終えると、義母は話し始めた。
「〇〇は△△大学を出ていますでしょ?」
「我が家は看護師だけはやめてね、と言ってあったのよ」
家族全員で結婚に反対したこと。
それでも息子が聞かなかったこと。
芸能人とのお見合いもできたはずだということ。
そして、もうすぐ海外留学があること。
「一人で行ったらジャンクフードばかり食べて身体を壊すでしょう?だから、看護師でも仕方ないわねってなったのよ」
私は黙って聞いていた。
初めて会った息子の結婚相手に、義母は結婚を反対した理由を一つひとつ説明してくれた。
どうやら私は、息子の海外生活に必要な存在として認められたらしい。
そういえば、義父の前妻も看護師だったそうだ。
義母がその女性について何と話していたかは、其の五で触れた。
どうやら義母の中では、看護師という職業そのものに、何か特別な意味があるらしい。
そんな話を、私は延々と聞かされていた。
そこへ、一人の女性が現れた。
ブルーのスーツに身を包み、幼い二人の子供を連れていた。
ヤツの兄嫁だった。
初めて会った義母も、なかなか強烈な人だった。
しかし、この兄嫁は、それ以上に印象に残る人だった。
それは、話した内容だけではない。
彼女の目だった。
しかし、この日の驚きは、まだ終わっていなかった。
