それが、
私の記憶に強く残る人物の一人である。
ヤツの両親と話していると、ブルーのスーツを着た女性が現れた。
ヤツの兄嫁だった。
幼い娘を二人連れていた。
二人とも幼稚園の制服姿だった。
孫たちを見るなり、義母が言った。
「まぁ!カバンが汚れているわ!ママが拭いてくれないのね!」
その一言で、義母と兄嫁の普段の関係が、少し見えた気がした。
私は兄嫁と子供たちに挨拶をした。
「初めまして。〇〇と申します。よろしくお願いします」
子供たちは口を開かなかった。
こちらへ向けられる視線も冷たい。
歓迎されている雰囲気ではなかった。
すると兄嫁が近づいてきた。
義母にも聞こえるように、こう言った。
「何でもお母様にお聞きになると宜しいかと思いますよ。私にお教え出来ることなんてありませんもの」
間近でその顔を見たとき、私はぎょっとした。
眼が、恐ろしかった。
憎悪にも似た、何かが押し込められているような眼。
三日月型に微笑んでいるのに、笑っていない。
当時の私は、職場の先輩にいじめられていても、それがいじめだと気づかないほどのお花畑だった。
後にその先輩本人から「あなたをいじめても面白くないのよね」と言われた程である。
そんな私が、初対面の兄嫁を見た瞬間、思った。
この人、何かが違う。
それほど、彼女の眼が恐ろしくも印象的だった。
その眼の意味を、私は後に体験することになる。
