スペイン・バルセロナ サッカー監督日記


記事を寄稿させて頂いているサッカークリニックですが、10月4日発売の11月号ではチーム作りの際の守備戦術について書かせて頂きました。


この号のテーマであるスペースについては来月発売号で触れる予定です。




スペイン・バルセロナ サッカー監督日記-サッカークリニック2013年10月号


9月6日発売のサッカークリニック10月号では、連載スペインサッカーの流儀で

「プレシーズンの設定方法」

というテーマで寄稿しています。

スペインでは9月がシーズンが始まる月なので、それに合わせたテーマとしました。


ファーストタッチについて編集部からのインタビューも受けています。



スペイン・バルセロナ サッカー監督日記



「スペインサッカーの流儀」というタイトルで連載をさせて頂いているサッカークリニックですが、8月6日発売の9月号では「ボールポゼッションを安定させるもの」というテーマで寄稿しています。

ピッチ上にある2つのエリア、敵のプレッシャーをかいくぐるパスルートの定石などについて触れています。

3月に発売されたサッカークリニック4月号ではスペイン人監督ミゲル・アルバレスさんのインタビューを担当しましたが、そのアルバレス監督(Miguel Alvarez)が2013-14シーズンはリーガ・アデランテ(スペイン2部)のアルコルコンの監督に就任することが決まりました。


アルバレス監督は2012-13シーズンはオスピタレットを率いセグンダB・グループ3(スペイン3部)を戦いましたが、見事優勝を果たしています。その後、各グループの優勝チーム同士の昇格プレーオフでは敗れ、2~4位チームのプレーオフに途中参戦も最終節で敗れ昇格ならず。


しかし今季の采配が評価され、1部昇格を争うアルコルコン(2012-13シーズンは5位)の監督に就任することに決まりました。


アルコルコンはペレグリーニ体制のレアル・マドリードに国王杯で勝利したことがあるので、日本のスペインサッカーファンの間でも知っている方が多いのではないでしょうか。





スペイン・バルセロナ サッカー監督日記


7月5日に発売されたサッカークリニックでは、連載しているスペインサッカーの流儀の中で「インテンシティについて考える」という記事を寄稿しています。


1試合通して高いパフォーマンスを見せるために、スタミナとは違う重要な視点について取り上げています。

6月6日発売のサッカークリニック7月号では、


スペイン・サッカーの流儀(4)
「1対1の考え方と練習方法」


という記事を書かせて頂きました。

日本のサッカーと欧州のサッカーを見比べた時に漠然と感じる「差」がどこから生まれているのか、私なりの考えを紹介しています。


スペイン・バルセロナ サッカー監督日記



告知が大分遅れてしまいましたが、連載をさせて頂いているサッカークリニックでは、5月6日発売の6月号で、

スペイン・サッカーの流儀(3)
「スペインの指導現場においてコーチが持つべき心構えと規律の管理方法」

という記事を書かせて頂きました。


戦術や練習法の話に進む前に、スペインの指導現場の実情を紹介する回となっています。



スペイン・バルセロナ サッカー監督日記

今日、5月1日に行われるチャンピオンズリーグ準決勝・第2戦のバルセロナvsバイエルン・ミュンヘン戦について、要点を整理してみたいと思います。


今回の試合は第1戦のバイエルンの4-0の勝利を受けて、バイエルン絶対有利の中で試合が行われます。バルセロナにとって必要なのは、4-0で同点に追いつき延長戦にもつれこませるか、5-0、6-1といった第1戦の4-0を上回る結果を得ること。

第1戦を大差で落としたでバルセロナですが、第2戦に向けた好材料を見てみましょう。

・ピッチコンディション

ミュンヘンではバルセロナのパスサッカーを封じるためにピッチに多くの水が撒かれましたが、ホームのカンプノウではピッチコンディションはベストの状態で戦えます。加えて、雨模様だったここ1週間のバルセロナ市ですが、30日から天候が回復し、5月1日も快晴です。


・ジャッジ

第1戦ではバルセロナ側にも見逃されたPK相当のハンドがありましたが、バイエルンも4ゴール中3ゴールがオフサイドや反則が見逃された中で決まっています。第2戦で笛を吹く審判は、バルセロナ戦の経験がなく、バイエルン戦は1試合のみ経験があるスロベニア人審判ですが、バルセロナにとって第1戦以上にジャッジで苦しむことはないのではないでしょうか。


・メッシの回復

4月2日のパリ・サンジェルマン戦(アウェー)で負傷後、ホームでの第2戦、バイエルンとの第1戦でスピードに乗ったプレーができなかったメッシですが、先日のアスレティック・ビルバオ戦では鋭いドリブルでゴールを決め復調をアピール。今日の試合でメッシがどこまでベストコンディションに近いパフォーマンスを見せられるかが注目されています。


・バイエルンの累積警告者数

バイエルンは主力6選手があと一枚の警告(イエローカード)で決勝戦が出場停止となる状態。チームとしては余裕があるリードを持っているバイエルンですが、警告累積にリーチがかかっている選手が、普段通りのプレーを見せられるかが試合展開に大きく影響するでしょう。



ではバルセロナの弱点はどんな点でしょうか。

(1)空中戦の弱さ

まず、セットプレーの守備の弱さは今回の試合でもバルセロナを苦しめるでしょう。平均身長が強豪一低いバルセロナは、失点が許されない今回の試合でセットプレーでどう守るかよりも、そもそもセットプレーを相手に与えないことが重要なタスクとなります。

また、ボールポゼッションで常に相手を上回るバルセロナですが、サイドを制してもセンタリングからヘディングでゴールを狙える選手が少なく、これが相手チームの守備を助けています。

(2)カウンターのパワー不足

カウンターでは速いサイド展開から守備ラインとキーパーの間にアーリークロスを入れるのが常套手段ですが、ここ数年のバルセロナはこのチャンスにセンターフォワードの位置に誰もいない状態で、速攻のチャンスを棒に振ることが多くなっています。

(3)狙い過ぎるスルーパス

以前のバルセロナは2対1の状態を常に作りジワジワと相手ゴールに迫りましたが、2対1のパスを確実に繋げていくことでボールを失うのはシュートが外れた場合やラストパスがゴールラインを割った場合に限られました。

今季のバルセロナは各選手の単独突破や難易度の高い中央へのパスが多く試みられており、中盤、最終ラインが手薄な状態でのボール喪失が多く、それが相手チームのカウンターのし易さに繋がっています。


・まとめ

今回の試合がどのような展開になるかは、バイエルンの出方よりもバルセロナがどこまで自分たちのスタイルを高いレベルで披露できるかにかかってくるでしょう。特に攻撃で確実に数的有利を保ち不用意なボール喪失をしなければ、それがバイエルンの攻撃回数を減らすことになり、第1戦とは全く違った試合展開になる可能性があります。
スペインに限らず欧州には、審判が自国(地元)チームを贔屓する傾向が当然あるという大前提があります。そのため、可能な限り該当チームと同じ出身地の審判がその試合を担当しないようになっています。

試合の数日前に「~戦の審判が~に決定。所属は~州協会」という情報が報じられるのは恒例のこと。例えば、バルセロナはカタルーニャ州、アスレティック・ビルバオはパイス・バスク州。よってその試合の審判は他州から招聘されることが普通なのです。

チャンピオンズリーグではクラブチームと同じ国の審判がその試合を担当することはありませんが、18歳以下のユースの試合となると同じようには行きません。ユースリーグでは審判の長距離移動費まで出せないので、通常は地元の審判が担当します。

ただ、そのための弊害もあります。カタルーニャ州には、バルセロナ、ジローナ、タラゴーナ、リェイダと大きく4つの管轄区がありますが、バルセロナ市のチームがリェイダで開催される試合でプレーすると審判の洗礼を受けることが良くあります。私が経験した中では、こちらのキーパーがハードタックルを受けたプレーがファウルとされず相手の同点ゴールが認められ、キーパーは流血し病院送り、というものがありました。

先日もユース1部リーグで異例の出来事がありました。ユース1部はカタルーニャ州とバレアレス諸島が管轄エリアですが、最終節で2位を確定するチャンスを得たマジョルカU-18(バレアレスのマジョルカ島が本拠地)が、スペインサッカー協会に対して「バルセロナ市内で行われる最終節の審判はカタルーニャ州以外の審判にして欲しい」と要望を出したのです。

これを認めたスペイン協会は、パイス・バスク州から審判団を派遣し、マジョルカは最終戦に勝利。上位2位チームに与えられる国王杯(全国決勝大会)への出場を決めています。審判が公平にジャッジをしてくれるという概念が元からないスペインならではの出来事でした。
チャンピオンズリーグ準決勝の第1戦、バイエルン・ミュンヘン対バルセロナは4-0でバイエルンの勝利となりましたが、この4-0というスコアは両陣営にとって驚きのスコアだったのではないでしょうか。

試合前からバイエルン有利の声が多かったですが、前線での崩しに難がある今季のバルセロナは、負傷が完治していないメッシを先発させたものの効果的なプレーは生まれず大敗を喫してしまいました。

チャンスと得点シーンに関してみれば、前半にピケとアレクシスのPKに相当するハンドが見逃され、バイエルンの1点目ではダンテがアウベスを押さえこんでジャンプしているのでファウル、ゴメスの2点目はオフサイド、ロッベンの3点目の直前にはミュラーがアルバをブロックし倒しているのでファウルだったという分析があります。

バルセロナの地元紙はこの点に言及はしていますが、試合全般を通してバルセロナが劣勢に立たされていた現実を受け止めており、バイエルンの勝利に納得はしています。審判のジャッジにミスはつきものですが、注目すべきは上記のファウルは全てバルセロナのバイタルエリアで起きており、良くも悪くもバイエルンのチャンスの多さを反映したものとなったこと。

各国リーグで強豪クラブが審判に贔屓されているという声がありますが、実際にそういう部分があったとしても、多くのエピソードが生まれる背景にはそのチームが多くのチャンスを作っている(=審判の誤審の件数も増える)という事実があります。

バルセロナは特殊なチームで、守備に他の強豪チームにはない弱さをいくつか抱えていますが、常識以上のボールポゼッションと攻撃力で敵に攻撃のチャンスを与えないことでその弱点が晒されるのを防いできました。しかし今季のバルセロナはその強みが低下したがゆえに、元から抱えていた守備の脆さを露呈しています。

パリ・サンジェルマンとの第2戦では体調が万全ではないメッシが均衡を破り、メッシ、ビジャ、ペドロというラインでゴールを決めましたが、あのような形でのメッシの活躍を私は予想できませんでした。一方で今回のバイエルン戦ではその作戦が不発。5月1日までにメッシのコンディションが完全回復しミランとの第2戦のような逆転劇が繰り返される可能性も無きにしも非ずですが、今週いっぱいはバルセロナの街は元気を取り戻せないでしょう。

ところで今回の試合では好調なテージョがベンチ外だったのは意外でした。

また、バイエルンはこのまま優勝してしまったら、来季グアルディオラを招聘する決断を早期に下したことが批判されそうですね。