スペインに限らず欧州には、審判が自国(地元)チームを贔屓する傾向が当然あるという大前提があります。そのため、可能な限り該当チームと同じ出身地の審判がその試合を担当しないようになっています。

試合の数日前に「~戦の審判が~に決定。所属は~州協会」という情報が報じられるのは恒例のこと。例えば、バルセロナはカタルーニャ州、アスレティック・ビルバオはパイス・バスク州。よってその試合の審判は他州から招聘されることが普通なのです。

チャンピオンズリーグではクラブチームと同じ国の審判がその試合を担当することはありませんが、18歳以下のユースの試合となると同じようには行きません。ユースリーグでは審判の長距離移動費まで出せないので、通常は地元の審判が担当します。

ただ、そのための弊害もあります。カタルーニャ州には、バルセロナ、ジローナ、タラゴーナ、リェイダと大きく4つの管轄区がありますが、バルセロナ市のチームがリェイダで開催される試合でプレーすると審判の洗礼を受けることが良くあります。私が経験した中では、こちらのキーパーがハードタックルを受けたプレーがファウルとされず相手の同点ゴールが認められ、キーパーは流血し病院送り、というものがありました。

先日もユース1部リーグで異例の出来事がありました。ユース1部はカタルーニャ州とバレアレス諸島が管轄エリアですが、最終節で2位を確定するチャンスを得たマジョルカU-18(バレアレスのマジョルカ島が本拠地)が、スペインサッカー協会に対して「バルセロナ市内で行われる最終節の審判はカタルーニャ州以外の審判にして欲しい」と要望を出したのです。

これを認めたスペイン協会は、パイス・バスク州から審判団を派遣し、マジョルカは最終戦に勝利。上位2位チームに与えられる国王杯(全国決勝大会)への出場を決めています。審判が公平にジャッジをしてくれるという概念が元からないスペインならではの出来事でした。