最近映画館いくのが億劫でねえ。だってさあ、上映時間に合わせるために頑張って仕事終わらせる訳ですよ。で、どうにかこうにか間に合ったー!よし楽しむぞー!とワクワクしながら席に着き、上映が始まってマナーの悪いお客さんがいた時の絶望感たるやorz ここに来るまでに費やした時間返しておくれと泣きながら劇場を去ることもしばしばで、映画館に行くのが億劫になるばかり。平日夜の上映はお安くするでなく料金増し増しでもいいので飲食禁止でじっくり鑑賞できる空間を提供して欲しいと思っているマダオです。ブログではご無沙汰です。開幕から愚痴ってしまって申し訳ありません。
そんなこんなで娘連れて公開初日の朝イチに映画観に行く以外はあまり劇場に足を運ばなくなってしまっていましたが、今回珍しく、公開初日にに、頑張って仕事終わらせて、いつもは乗らないバスに乗って映画を観に行ってきました。お目当ての作品は「フリーソロ」。アレックス・オノルドというクライマーがアメリカはカリフォルニア州のヨセミテ国立公園内にある高さ約975mの断崖絶壁エル・キャピタンに、ひとりで、ロープなしで登り切ることを試みるドキュメンタリー映画です。頑張って観に行った理由はどうしても劇場で観たいけどあんまり長く上映してくれそうにないかも心配からと、ちょっと外れたとこにある映画館へ金曜の夜観に行くのは、登る人かドキュメンタリー好きかアカデミー賞ウォッチャーぐらいで存分にスクリーンに集中できそうと思ったもので、ちょっと頑張ってみました。お陰様でこの時間ご一緒させて頂いた皆様はマナーよく、存分にスクリーンに集中できました。ありがたや。
僕がこの映画に興味を持ったのは、アカデミー賞ウォッチャー、ではなく、ドキュメンタリー好き、ではありますね。ドキュメンタリー面白いよね。でもそこよりも、登る人、と名乗るのは自信ないなあ。だって47歳で子供にせがまれクライミングジムを訪れ子供よりお父さんがハマってしまうというパターンから約1年しか経っていない、最近どうにかこうにか5級登れてやっと4級のスタートホールドに貼り付けるようになった若輩者ですので。まあ、僕大体のこと自信ないけど。ビデオゲーム歴は40年越えてるけどゲーマーと名乗るの未だに戸惑いますしね。ただただ長いことゲームの事が好きでいるおじさんで、最近クライミングの面白さに魅せられたおじさんが、クライマーの聖地と呼ばれるヨセミテ渓谷で達成された偉業を、大きなスクリーンで見てみたいと思い足を運んだのでした。
映像は凄かった。高所恐怖症の人は泣いてしまうような映像の連続。特にラスト20分の、スカイツリーより高い壁を命綱なしで登っていく様は圧巻であると同時に目を覆いたくなるような場面の連続。ここは多分、一般の人よりクライマーの方が怖いと感じる人多いんじゃないかと思ってみたり。だって落ちる恐怖身をもって知ってますから。僕も相当怖かった。ほんの些細な判断ミスで、ホールド掴み損ねたり足が抜けたりする怖さ、その恐怖で身体がどれだけ萎縮してしまうかを体験しているもので本当に怖かった。僕なんかまだマット敷き詰められたジムでせいぜい3.5m程度の高さしか知りませんがそれでも落ちるのはめちゃくちゃ怖い。それがここでは落ちたら確実に死んでしまうという状況。怖くないわけがない。結果は知っていても落ちてしまったらという想像が頭をよぎる映像を見せられます。目を背けたくなる場面の連続だけど、目を背けることはできなかった。だって凄いんだもの。アレックスに全く迷いなし。ジムにきた上級者がアップ済ませて体ほぐしにと登ってくような軽やかさで登り始め、難所をガンガン突き進んでく。もう頭おかしいんじゃないかというブレのなさで、恐怖心を完全にコントロールし登りきり、満面の笑みを浮かべるアレックスを見届けた僕の手のひらは汗でびっしょりで、そして瞳も若干汗をかいてしまったようでした。
さてさて、この作品はアレックス・オノルドという偉業を果たしたクライマーの挑戦の記録であり、最悪の結果もあり得る状況を捉えるかもしれないという恐怖と撮影することでアレックスに余計なプレッシャーを与えるのではという思いに葛藤する撮影隊の苦悩にも迫る鬼気迫る記録映画なんですけど僕の思うこの作品最大の魅力は、とても謙虚で誠実な青年の日々を記録しているところでした。何を考え、どう行動したか。無謀でも無鉄砲でもない、むしろとても怖がりではないかという部分も感じられ、アレックス・オノルドという人物を好きにならずにはいられない、そんなところが丁寧に描かれてます。そのせいで最後のシーンは撮影隊と同じような気持ちで見守る羽目になるんだけれども。小さな頃はレゴとコンピュータゲームを友としてて、クライミングに出会ってからもしばらくは一人で登ってたという幼少期のエピソードなどはかつてビデオゲームに心救われた身として親近感を覚えます。なんだろうね、こういう作品の主人公はストイックで別次元の人物と感じることも少なくないけれど、アレックスのエピソードは「分かるなあ」と思える部分が多かったです。真には分かり得ないけれども、そう思いました。アレックスのお母さんのコメントだったか「子供の頃の(心の)傷は簡単には消えない」といった(ちょっと違うかもだけどそんな感じの)発言してて、アレックスの誠実さの後ろにあるものが自分にもある気がして「分かる気がする」という気分に。ちょっと僕の話をすると、僕はとても成長の遅い子で、中学に入学する時の身長が130cmありませんでした。ちびっこすぎますね。まあ、そんなもんですから色々とね、学校生活は楽しいことよりも辛いことの方が多い訳です。アレックスのお母さんの言う通り、子供の頃に負った傷はいくつになっても言える事はなく燻り続けます。大人になりそれなりに楽しく過ごせても、それはふとしたキッカケに蘇るもので。一生その感情との闘いですね。アレックスの謙虚さと誠実さの奥にあるのは小さな怒りと哀しみかもしれんなあ。と、我が身を振り返りながら思ったりもしました。違うかもしれんけど。いやあ、大変ですよ、こういう人を好きになると。こういうタイプは自分のために全てのリソース割きますから。頑張れサンニ。サンニというのはアレックスの恋人で、劇中彼女とアレックスの関係も丁寧に描かれてます。サンニは大変キュートなお嬢さんでほんとに幸せになってほしいと願わずにはいられないんだけど、相手は断崖絶壁に命綱なしで挑んでしまう男な訳で。サンニがアレックスの髪を切ってあげてるシーンなんかは切なくてそのシーン思い返しながら「アレックス!サンニ不幸にしたら許さんぞ!」とお説教したくなる。昔の歌に「娘さんよく聞けよ。山男にゃ惚れるなよ。」と歌ってる歌あるんですけど本当にねえ。真理ですね。
2時間越えの大作が並ぶ昨今上映時間100分というコンパクトな作品ですが、その中に数年間に及ぶ挑戦の軌跡と携わった人々の思いが詰まった大変濃密な作品です。クライマーの人は言われなくても観に行くと思いますが、クライマーだけでなくデートムービーとしてもけっこうありなのではと思いますし、今苦しい思いをしている人の背中を押してくれる作品かもしれません。プロフェッショナルとは何かを見ることもできるので映像を志す人は必見かも。とにかく大変素晴らしい作品ですので是非たくさんの人に劇場で観てもらえるといいなあと思ったマダオでした。
最後に。
これを観てクライミングに興味を持った方がいたら是非クライミングジムを訪ねて欲しい。ちょっと勇気を出して訪ねてほしい。前半で怖い怖い書きましたが、怖さを乗り越えた先に得られる達成感を味わうとですね。怖いんだけど、とても楽しいものです。体育の授業で運動に苦手意識を持った人に特にお勧めしたい。僕も運動辛いと思って47年過ごしてきましたがボルダリングで身体を動かすのがこんなに楽しいなんてということに気付きました。楽しいよ。そして登れなくて悔しくてムキになる。外岩登るともっとたのしいんだろうなあ。幸運なことにここまでジムで出会った方いい人が多い印象で人が苦手でぼっち属性の僕にも程よい距離感で居させてくれます。たまにガンバって応援されるのは恥ずかしいけど。今は慣れたかな。いや、まだちょっと恥ずかしい。まあそれはさておき、実際にやってみるとこの映画の素晴らしさをより深く知ることできますので是非。