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2004年2月
毎日、サバールのリハーサルを見に行くことによって少しずつ彼の存在が記憶の中から遠くなって行った。
あの盗難の一件以来、誰も彼の姿を見てなかった。
そして、誰も私の前では彼の話はしなかった。
ある日、ベンジーは私に「一番最初にセネガルに来たきっかけは何?」と突然かしこまった質問をしてきた。
そういえば、そういう初歩的な身の上話しをまだしていなかった。
私が最初にセネガルに来たのは4年前、在日セネガル人アーティストが企画したセネガルツアーだった。
私はそれがどんなものだったか説明した。
そしてそれがキッカケでサバールに火が付き、セネガルにひとりで来るようになったこと、そして去年の帰り際に彼と交際が始まったことも話した。
ベンジーはとても興味深そうに聞いていた。
そしていろいろ話した後、やっとベンジーが質問してきた。
「その在日セネガル人が企画するツアーの参加費はいくらなの?」
私は、当時自分が参加費として払った金額を、セネガル通貨に換算して答えた。
「はっ?」

と、ベンジーは一桁間違ってるでしょ、というニュアンスでもう一度私に聞き直した。
「ツアーの参加費だよ?」
その金額はベンジーの想像をはるかに超える程の巨額だった。
2000年、おそらく日本で始めてのセネガル人によるセネガルツアーだったために、確かにものすごく高かった。
その金額がセネガルでは5倍になるわけだから、7人いた参加費をセネガル通貨に換算すると、現地で暮らしてるセネガル人にしてみたら宝くじが当たるぐらいの感覚かもしれない。
「それがツアー参加費でした。」と私は自信をもって答えた。
ベンジーはその金額の大きさに、目を真ん丸くむき出し、口を開いて固まった。
微動だにしなくなったベンジーに対して、呪文を解いてあげるように「ほんとですよ」と口を挟んだ。
そしてベンジーから思いもよらない発言が飛び出して来た。
「どうして、君はツアーをやらないの?」
そんなこと言われても、私に出来るわけがない。
ツアーをやるだけのコネがないし。ましてや、当の本人が思い通りの滞在を果たしてない。
そんな無責任なことできるわけがない。
するとベンジーは続けた。
「ゴール島のペンションだって自由に使っていいし、君にはセネガルにダンサーの友達がたくさんいる。」
確かに、そういう意味ではツテはできた。
今まではお勧めしたい先生がいなかったが、今ならビンタがいる。彼女ならいい指導をするかもしれない。
さらに、ベンジーは続けた。
「君は金持ちになれるよ。」
「別にお金はいらない。」
私は即答した。私の興味はそこじゃなかった。
逆にお金の話が出たことがすごく心外だった。
私がセネガルで見たサバールダンス、私がセネガルで知り合った素敵なダンサー、それらを日本のダンサーに見せるチャンスが自分で持てるならすごくやりたい。
そして、私を助けてくれたベンジーやビンタたちに日本人を連れてくることで少しでも恩返しできるなら、これ以上の機会はないかもしれない。
私はセネガルに来る目的が出来たことがすごく嬉しかった。
もう、来年からはセネガルに来ることはないと思っていたから。
ベンジーは私の気持ちを汲み取って付け加えた。
「ツアーはもっと安くできるよ。宿はタダだし。」
タダで借りようとは思ってないが、そうだとしてもかなり安くできる。
そうすれば、より多くの人をセネガルに連れてくることができる。
とにかく、サバールのかっこよさを多くの日本人のダンサーに知ってもらいたかった。
「私、やってみる。」
私がそうベンジーに断言すると、ベンジーはすごい嬉しそうだった。
「僕でよかったらいくらでも君に協力するよ。それに、また君がセネガルに来てくれると言ってくれて本当に良かった。」
ベンジーが私にそう言うと、近くでそれを聞いていたヤマが口を挟んだ。
「私も手伝うよ!!」
セネガルに来て、やっとセネガル人と絆が深まっていく感じを実感した。
第37話へつづく
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