- キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))/時雨沢 恵一
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――世界は美しくなんかない
。そしてそれ故に、美しい――
この作品の見所は、連作短編形式によって書かれた物語。一つ一つの都市国家の話が実にシュールで思想的皮肉が込められている。ライトノベルに珍しく、設定やらキャラクター性をほぼ排除しているので、物語に没頭しやすく、それ故に感慨がとても深い。星の王子様と村上春樹の世界をラノベ風にした印象があり、ラノベらしくない。だが、名作であることは疑いの余地無し!
お気に入りのシーンは『平和な国』ですね。どんな国のお話かというと、二つの国は長年戦争を続け、国民は疲れ果てていた、そこで両国は両国民を殺さずに戦争を継続する『平和的解決法』を作り出した。具体的にどんな方法か言ってしまうとネタバレになるので伏せますが、私達の世界に例えるなら、朝鮮戦争、中東戦争のことです。キノの旅の方が残酷に思えるように書いてますが、実際は、私達の世界の方が何千倍も狡猾で残忍です。実に皮肉なスパイスが効いていて、ラノベらしくない。だが、それがいい。
学べたところは、ラノベとしてでなく小説として沢山のことが学べた気がします。しかし、私個人はこういった作品を書く予定がないので、エッセンスだけをいただく形になるかもしれませんね。特に、短編の一つ『多数決の国』なんて民主主義とポピュリズム批判を中高生にも分かりやすく書いていますので、こういった思想めいたことを絵本のように噛み砕いて伝える技術、盗みたいですね。
人の業の深さ度 ☆☆☆☆☆
平和には犠牲が必要なのです。
そしてそれは、絶対に自分の子供であってはならないのです。