投影の魔女 パート6 | 鉢野在流はライトノベルがお好き!?

鉢野在流はライトノベルがお好き!?

ライトノベルを中心に創作、批評、文章研究などを書いていこうと思ってます。物書きからの目線で物事を見定めるようシンプルに分析できれば、と。

「魔法少女だから」
 魔法少女の宿敵、魔女を睨みつける。まどかの安全を確認した後、私は時間を止めた。
 決着をつける。
 
 跳躍し、盾から手榴弾を三個取り出し、魔女に投げつける。終わりよ。
 時間が動き出すと、魔女は爆炎に巻き込まれ、呻いた。
 終わった……との刹那、私の身体に衝撃が走った。まるで車にはねられたかのように、私は身体をくの字に曲げ、地面に激突した。痛みはないにしても、強烈な目眩と言い表せられない不快感に私は地面に膝をつく。何が起こったのか理解できない。
 だが目の前の光景を見て、愕然とする。
 
 魔女が増えていた。まるでクリス達のように、大勢の魔女がスクリーンの前で笑っている。
 幻影だ。と考えたが口から零れた血の味でそれが現実だと知る。
「うあぁぁ……」
 後ろから聞こえる絶望のうめき声に私は振り向く。
「大丈夫、まどか、私はあなたを守る」
 ほむらちゃん、と呟きながらまどかは口を真一文字に結び、強く頷いてくれた。
 
 私は盾から、銃を取り出す。ずしりと重く、私では取り扱えないだろうと思っていた物を取り出す。5.56㎜機関銃MINIMI。重さに震える身体にに魔法をかけ、肉体の限界点を超えさせる。
 その結果、後がどうなろうと構わない。今のまどかを救うのだ。
 ズドドドドドドっと濁流のように銃弾を撃ち放つ。毎分1000発の銃撃が魔女達を襲う。魔女達は動きを止め、ガクガクと銃弾の衝撃に身体を揺さぶられる。
 
 一分間の斉射の後、静寂が訪れる。魔女達が倒れる音とミニミを放る音が重なった。
 でも、まだだ。スクリーンから魔女だけではなく、クリスも出てくる。
 
 どうすれば……と考えている時、魔女の数が先程より減っていることに気付く。
 何故、とよく観察してみれば魔女の居ないスクリーンには銃撃の痕が残っていた。
 魔女達が襲いかかってくる。
 私はまどかを庇いながら、盾からアサルトライフルを取り出し――スクリーンに向かってバースト射撃を行う。
 パパパンと役者如月クリスの眉間に、パパパンと役者おさげの娘の眉間に。
 功を奏したのか、魔女やクリスの数がみるみると減っていく。
 まどかも、それに気付いたのか私が見落としていたスクリーンを指し示してくれる。
 
 そして、最後の一枚――私はアサルトライフルを捨て、笑顔で手を繋ぎ歩く幼い少女達のスクリーンに焼夷手榴弾を放った。
 破裂し、燃え上がろうとした瞬間、『投影』の魔女は自ら手榴弾を受け止めた。
 燃え上がる炎の中で魔女は苦しみもがく。スクリーンに映った二人に助けを乞うように、魔女は悲痛な叫びを結果内に響き渡せる。
 私は、最後の憐れみを与える為にバレットM82、アンチ・マテリアル・ライフルを取り出し、魔女の頭部へ狙いを定める。
 終わりのない、悲しみの上映会を打ち切るため、引き金を――

「待って、ほむらちゃん」
 私と魔女の間でまどかは大きく手を広げていた。
「危険よ、まどか、離れなさい!」
 まどかは、ふるふるとツインテールを横に振り、魔女へと向き直った。
「私、あなたと遊園地へ行けて良かったと思ってる。幻だったかもしれないけど、嬉しかったんだよ」
 魔女は叫び声を上げたまま、まどかの方へと向き始めた。魔女の頭部に定めた照準がブレる。今すぐに撃つべきなのに、撃たなければまどかは――でも、私は撃たない。今はまどかを信じられるから。

「あなたが魔女だと分かった時、とても怖かった。そして、ほむらちゃんにあんな事を言わせたあなたを憎んだよ。でもね、ほむらちゃんに言ってて分かったんだよ。あなたは友達が欲しかっただけなんだよね」
 魔女は燃えさかる巨大な手をまどかへと伸ばす。
 でも、私は何もしない。ただ見守る。
「だったら言ってくれたら良かったのに。言ってくれないから……ううん、違うね。怖かったんだよね、拒絶されるのが。私も怖かった、私みたいなおっちょこちょいをかっこいいほむらちゃんがどう思っているのか、いつも不安だった。けど、あなたは私に言わせた。あなたがクリスさんに言いたかったことを……それは私も一緒だよ」
 ごめんね、ほむらちゃん、私、嫌な娘だよね、とまどかは横を向きながら私に儚そうに笑いかけてくれた。
 私は静かに首を横に振る。
 ありがとう、とまどかは言った。

「だからね私も、あなたの言葉じゃなくて、私の言葉をあなたに伝えるよ」
 まどかを掴もうとする炎の巨手が動きを止めた。
「私と友達になろうよ? そして、あなたの名前を教えて」
 
 魔女は一際甲高く鳴いた。両手を天に掲げ、掴めなかったものを掴むように手を握りしめた。やがて、魔女はまどかに背を向けると、二人の少女が映ったスクリーンを抱きしめた。魔女の身体の炎がスクリーンに移る。
 紅い炎が魔女とスクリーンを包み込むと、結界が崩れ始めた。
 
 待って! と駆け寄ろうとするまどかの背を私は抱きしめる。
 魔女は二度と失わないように、スクリーンを強く抱きしめる、私も泣き声を上げるまどかを同じように後ろから抱きしめた。
 消えゆく『投影』の世界からグリーフシードがこぼれ落ちた。
「まゆり」
 とそれは、言った気がした。