通学路から見える朝日に目を細めた。あの日から丸一日、私達は魔女の結界に閉じ込められていたようだった。
涙を拭い、落ち着きを取り戻し始めたまどかは私に向き直った。腫れたまぶたから覗く、目の光は初めて出会った時と同じ色をしていた。
「ほむらちゃん、私、決めたよ。私、魔法少女になる。こんな悲しいことをほむらちゃんだけに任せておくわけにはいかないよ。私はほむらちゃんの力になりたい、傍で支えてあげたい。そして、例えどんなことがあろうと一緒にいたいから」
まどかの決意に私は頬を弛ます。
ほむらちゃん、とまどかの顔に笑みが広がるのを見届けると――
私はまどかの頬を思い切り叩いた。
きゃっ、っとまどかは通学路に倒れ込んだ。
盾から拳銃を取り出し、まどかの額に狙いを定める。
「……ほむらちゃん、どうして? だって、ほむらちゃんは、私のことを分かってくれてるんだよね? だったら、私がどんな気持ちでいるか分かるでしょ」
「――甘ったれないで。三度、同じことを言わせるつもり? いい加減ウンザリ。あなたは戦わなくて良いの」
まどかの目尻にどんどん涙が溜り、直ぐにあふれ出した。
「なんで、どうして、ほむらちゃん、私は、ほむらちゃんと一緒にいたいだけなのに」
「四度目はない、鹿目まどか」
私の脅しにも涙目のまどかは、目の奥の光を消さない。わかってる。それがまどかだもん。私の憧れ、大好きな魔法少女鹿目まどか。
私はふっと表情を崩し、銃口を自分のこめかみに当てた。
「だめぇぇぇぇぇ!!!」
パーンと渇いた音が住宅街に鳴った。
銃弾は、まどかの抵抗によって電柱へと逸れていた。
「どうして、どうしてよ、どうして!!」
まどかは私の胸の中で嗚咽を漏らし泣いている。私の胸を力なくまどかは叩く。どうして、どうしてと、まどかは叩き続ける。
まどかは止めてくれる。分かっていた。ごめんね、まどか、騙して。でも、そうしないとあなたは私を選んでしまう。あなたは優し過ぎるから。
だから私は、如月クリスになる。あなたの、幸せの為に。
……いつの間にか、まどかは、私の胸の中で寝息を立て始めていた。
無理もない、今日は色んなことがありすぎた。
私は眠るまどかを背負うと、通学路を歩き始める。
「なかなか変わった力を持っているようだね。キミがどこから来たか少し分かってきたかもしれないよ」
巴と書かれた表札の壁の上で何かが喋った。
「まゆりはなかなか手強かっただろう? けど、鹿目まどかの助けもなく倒せたのはちょっと計算外だったかな。まぁ、その計算外のおかげで、キミの正体が少し分かってきただけでも、彼女を魔法少女にして良かったと思えr」
それ以上は、その何かは喋れなかった。
何故なら、私の手に握られた拳銃の全弾を顔にぶち込んでやったから。
誰も、未来を信じない。誰も、未来を受け止められない。
もう誰にも頼らない、誰にも分かってもらう必要はない。
繰り返す……私は何度でも繰り返す。同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探す………貴女を絶望の運命から救い出す道を。
貴女の、貴女の為なら私は永遠の迷路に閉じ込められても構わない。
――まどか、たった一人の私の友達。