「ほむらちゃん……その傷」
「そうよ、鹿目まどか。私は――人間じゃない」
次の言葉をぐっと口の中で噛みしめた。にがい。鉄の味だ。
巨大なフォークがいくつも私めがけ飛来してくる。
歪んだ空間、魔女の結界の中で私は跳ぶ。
フォークは歪んだ学校の木の床に突き刺さる。突き刺さったフォークは揺れ動き、柄の部分がいつの間にかスプーンに変わり、私を追尾しつづける。
でたらめだ。魔女の結界内では全ての事象がでたらめなのだ。魔女の思考のように歪み、狂い、壊れている。絶望に染まった世界は目の前にいる魔女のように何もかもが醜い。
私もいつか、同じようになってしまうのかもしれない。
けど――まどかだけは、絶対に、絶対……
「ほむらちゃん!」
まどかの叫声に意識を戻し、視界の端から迫り来るスプーンの動きを止める為、時計の針を止め――ダメ、間に合わない。瞬断に身体が反応し、左腕の盾で防ぐ。メキリといやな音が私の身体を駆け巡り、そのまま木の床に背中を激しく打ち付けた。反動で、私の口から血が吹きこぼれた。
霞む視界にまどかの泣き顔が見える。
心配しないで、痛くないから。私は人間じゃないから痛くないよ、まどか。
でもね、その顔を見ると痛いんだ。だって私は、その涙を拭ってあげることができないんだもん。
私はゆっくりと立ち上がる。痛覚が消えた身体に唯一残ったまどかへの想いが、私の身体に痛みを伝える。
二度と繰り返してはならない。二度と、二度と!
四度目のまどかは、顔をくしゃくしゃにして私に何か言ってくれてる。
大丈夫だよ。まどか、私は、人間じゃない、私は――
「魔法少女だから」