①彼は俺に問い詰められて、想定外な事を言った「お前、何カッコつけてんの?女の子にホレてんのか?何でお前にそんな事答えなきゃいけないんだ?忙しいのは全部俺のせいか?勝手に仕事増やしてるのはお前だろ。色男さんはあちこち忙しい事だね」こう言ったのだ。これに怒ったのが後ろに居た女の子だ。俺は女の子の怒りのおかげで冷静で居られた。

②そこに騒ぎを聞きつけた店長がやってきた。あと少し遅ければ、俺は止めただろうが女の子は彼に平手打ちくらいしていたかも知れない。俺は店長に事情を説明した。忙しい時間だったが、彼と女の子の仕事ぶりはほとんど把握していたので、自分の仕事内容も含めて詳しく説明すると「あの忙しい中で、そこまで見てたの?」と驚いていた。

③彼は、「俺は自分の仕事をしてたのに何でコイツに文句言われなきゃいけないんだ」と言った。店長は「とりあえず落ち着け」としか言わない。そこに女の子が、彼女が居ない時はいつも手を抜いてるくせに、俺の事を悪く言うのは絶対に許せないと言うと「何?お前コイツに惚れてんの?」と言い出して、そこに女の子が「好きだったら悪いの?」と言ったのだ。

④俺は思わぬ話の展開に言葉を失ってしまった。女の子もハッとした表情で一瞬こちらを見て慌てて目をそらした。女の子がおとなしくなったところで、店長が彼と2人で話をすると更衣室へ行った。女の子と2人になり、俺はどう言っていいものか考え込んでいたら、「あ、気にしないでね。仕事仲間として、いい人だと思ってるだけだから」と目を合わせずに小声で言った。声がうわずっていた。

⑤目をそらしてそんな声でで言われても、嘘だと言うのは簡単に解ってしまった。女の子は俺の事が好きなのだ。咄嗟に口に出してしまった本音だったのだろう。俺はこの子には彼女の事を伝えようと思った。そして、昨日、彼女に告白され付き合うことになった事を告げた。女の子は「そうなんだ、彼女と付き合うんだ。彼女可愛いからね、羨ましいなぁ。私もカッコいい彼氏欲しいなぁ」と俺と目を合わせずに悲しげな表情で言った。

⑥「ゴメン」俺は思わずそう口に出していた。「何で謝るの?私ちょっとお手洗いに行ってくるね」そう言って女の子は逃げるようにトイレに向かった。彼女の涙声に気がついてしまう自分が嫌だった。仕事仲間としていい人と言った彼女の言葉を信じられない自分が嫌だった。女の子の気持ちが解って、どうにも出来ない自分が嫌だった。

⑦そして、彼は仕事を辞める事になった。詳しい事情は聞いていないが俺としては内心ホッとしていた。彼女との仲は伝える必要は無くなったのだ。そして翌日、俺と女の子がシフトに入っていたのだが、女の子は仕事に来なかった。店長には辞める事を伝えていたらしい。原因は俺のせいだろう。彼が辞めたのも俺のせいだ。俺のせいで2人も辞めたんだ。

⑧その日の仕事は忙しかったが、そのおかげで気を紛らわす事ができた。俺には仕事の辛さよりも、辞めた女の子の思いの方が辛かった。慌しく動く事で余計な事を考えずに済むのがありがたかった。店長は俺が頑張ってくれて助かると言っていた。「全部俺のせいですから頑張りますよ」と俺が言うと店長は「無理はしないでね。皆で頑張ろう」と言った。厨房の人達の自分に注がれる同情の視線も痛かった。

⑨そして無事に閉店時間になった。明日は彼女と初デートだと言うのに、なんでこんなに心苦しいんだ。こんな状態で楽しめるのか?そして自分が楽しめる自信がないのに彼女を楽しませられるのか?俺は、閉店後の店で後片付けをしながら悩んでいた。そこに厨房のチーフが話しかけてきた。

⑩ビールを注いで俺に持ってきてくれた。チーフは、彼女とも女の子ともよく話すので、事情は大体知っていた。「未成年だけど今日は特別だ。1杯だけ俺のおごりだ。明日デートでしょ。君が元気出さなきゃ彼女悲しむよ。辞めちゃった女の子の事は仕方が無いよ。辞めちゃった女の子の分まで楽しまなきゃ女の子にも申し訳ないでしょ。はっきり一人を選んだ君は偉いと思うよ」

初めて飲んだビールはほろ苦い味がした。周りを気にして今までは一度も飲んだことは無かったが、今日くらいは皆、見逃してくれるだろう。

第4部完 一般的とは思えない恋愛話多すぎかな…。(><;)
①仕事が終わり、彼女に誘われるままバイト先のすぐ近くにある公園に行った。未成年なので2人で話をするには無難な場所だろう。辺りには俺達以外に人の気配はない。そこで彼女は顔を赤らめて、俺を見つめて「好きです。付き合ってください」と言った。表情から見ても、コレからどこかに付き合ってと言う意味ではない事が解る。

②俺は今まで女性と付き合った事はない。好きな女性さえ居たことが無いのだ。初めて俺を好意的に思ってくれている女性と遭遇した訳だ。彼女は外見的には魅力的で、バイトで知る限り、嫌な所もない。そんな女性に告白されて断る理由は何もなかった。気になるのは彼女を好きなあの男だが、元から俺の事をよく思ってないヤツだ。気にする事もないだろう。

③俺は出来るだけ優しい声で「いいよ」と一言だけ言うと、彼女は抱きついてきた。よほど真剣な思いだったのだろう。目には涙まで浮かべていた。俺は彼女を愛おしく感じてしまい、彼女の髪を撫でていた。そして、どちらからともなく流れのままキスをした。その後、一応、彼の事をどう思っているか聞いてみようと思った。すると、明らかな不快感がわかる表情で、「目つきがいやらしくて出来れば関わりたくない」と意外な答えが返ってきた。

④彼に見られていることには気がついていたらしい。だが、ここまで嫌っているとは予想外だった。俺なら、人に好かれていれば、その相手を嫌うなんてあまり想像できないな。などと、過去の自分を考えてみたが、好かれてると気づかずに微笑まれてれば嫌悪感は抱いたかもしれない。と思い当たった。俺の読みが意外な場所で外れた感じだ。

⑤「彼が君の事を好きなのは、俺が見てても解ったけど」と言うと、彼女は「私は貴方が好きなの」と言って抱きついてる手に少し力を込めた。俺としても嫌いな男だが、好きな女にこれほど嫌われる男と言うのは流石に同情して、少し救いの手を差し伸べようと思って言ったのだが、これではどうしようもなさそうだ。

⑥そして、日曜日に一緒に遊びに行く約束をして、もう一度、別れ際にキスをした。俺の性格なので当然、周囲の人の気配は確認済みだ。彼女に不快感を与えないよう配慮しつつ回りの人の気配を確かめていたのだ。万が一にも誰にも目撃されていない。この場を彼に見られてる可能性は0ではないからだ。見られてても問題は無いのだが、それが俺の性格なのだ。

⑦俺は日曜日まで2回バイトに入っているが、彼女は入っていない。そして彼とは今日だけ一緒に入っている。俺としてはかなり気まずい。一応彼女は、バイト先の人に俺達の関係を知られてもいいとは言っていたが、言いふらすつもりも必要もない。彼しだいだなと思っていた。彼は彼女が休みの日はあからさまにやる気がないのだ。

⑧ホールは俺ともう一人の女の子と彼の3人だが、俺はいつものペースで仕事をしてると、もう一人の女の子が擦れ違いざまに「彼、全然仕事しなくて最悪だね」と言ってきた。俺は「キツかったら俺に言ってフォローするから」と彼女に言うと「君が居なかったら辞めてるかも」と呟き忙しそうにオーダーを取りに行った。

⑨俺も、ビールケース運びや、バーカウンターでの作業、接客にレジ打ち、そして厨房が間に合わない際に簡単な料理を作ったりなど、その日は大忙しだった。彼はというと、お客さんに呼ばれたときだけオーダーを取りに行き、それ以外は立っているだけだ。女性のお客さんの方をじろじろ見ている。店長は厨房でなれない刺身を切っている。厨房の人が突発の休みで人が足りない状態なのだ。

⑩そしてピークの時間を過ぎて落ち着いた時、怒った表情で彼に詰め掛けようとした女の子を止めて、俺が彼に言った。「お前、この忙しかった2時間、どんな仕事してたか言ってみろ」普段全く怒らない俺が声を荒げたので、彼女を含め、従業員全員が驚いていた。彼はしどろもどろに、「オーダー取ったりしてたよ」と言った。俺の後ろで女の子が何か言おうとしてたのを感じたので、その声を掻き消しながら俺は、「この仕事をやる気があるのか無いのかハッキリ答えろ!」と彼を睨みながら問いかけていた。

第3部完 今度は何部まで続くのか・・・(((゜Д゜:))ガクガク

①ある日、電車に乗っている際、人の目を見ないのは失礼だ。このままではまずい、他人の目を見る練習をしようと思い立った。ちょうど目線の先に、同年代の女性が居たので、相手が目をそらすまで、こちらからはそらさないと決めて、相手の瞳を見つめていた。すると相手の女性はこちらを見て微笑んだ。釣られて自分も微笑んでしまった。

②相手の女性は、自分が降りる駅まで目をそらすことは無かった。自分は降りながらも見つめていたのだが、その女性は俺が降りた時にやっと目をそらし、友達と思われる女性と何やら話をしていた。一体どんな話をしていたのだろう。まぁ、「さっき前に座ってた人に見つめられちゃった」と心の声は言っていたのだが。

③だが、いい勉強になった。おかげで目を見ると何を考えているのかが、より明確になることが解った。先ほどの女性の目に不信感を全く感じなかったのだ。苗字を知られてない赤の他人だからこそ価値があった。俺は自分の外見に自信を持つようになった。不細工に見つめられたら、あのような目で見つめ返すはずが無いからだ。

④その一件以来、過去に女性に意味もなく微笑みかけられた。という事を、好意的に見れるようになった。まぁ今更なのだが。俺はあの当時は直ぐに目をそらしていたが、もっと相手の目を見るべきだった。彼女たちは、嫌悪感に目をそらす自分をどう思ったことだろう。自分なら感じの悪い男と思う所だが。

⑤この電車の一件は明らかに自分を変えた。周りの女性から告白される事が増えたのだ。居酒屋のアルバイト。今までは目を見ないでお互い仕事をしていたのだが、目を見るようになってからは相手の考えがより解るのだ。それは仕事だと困ってる時にすぐ気がつくという事だ。過去の経験から自然とフォローする習慣がついている自分は、「優しい人」と言われるようになっていた。

⑥相手にどう思われるているかは、表情を見れば明確に解った。親しく思っている人間を見る際は自然と優しい目になるのだ。そしてそれは相手も同じらしい。「前は近寄りがたいクールな印象だったけど、最近は話しかけやすいと言うか、目を見て話をしてくれるのが凄く嬉しい」とバイトの女の子は言ってくれた。

⑦だが、自分の周りを気にする能力は健在だ。彼女が俺に好意を持っている事は明確だったが、密かに思いを寄せている男性バイトが居る事は把握してる。そして彼は今も仕事をしながら、こちらを気にしている。彼女はこっそりと、「仕事が終わった後に2人で話したい事がある」と俺に言ったのだが、彼に妬まれる不安を表情に出すと、彼女が不安に感じると思い、実際に一瞬、不安な表情を浮かべた彼女を見てしまい、俺は「解った後でね」と安心させる返事をした。

⑧俺は彼女を嫌いではないが、それほど知らない。そして彼女に好意を持っているバイトが居る事を知っているのだ。彼ともそれほど仲がいいわけではないが、彼女との話し次第では完璧に嫌われるようになる事だろう。俺は、彼女が彼をどう思っているか探る事から始めようと思っていた。

⑨そんな時、そのバイトの男と擦れ違った際、彼は言った。「何、仕事中にこそこそと女と話ししてんだよ。職場にナンパにきてんのか?」俺は、なんと答えるべきか一瞬悩んだが、その一言のおかげで、悩みが消え去って嬉しかった。この男と仲良くするすべは既に無いのだと。仕事面で言えば、彼の方がナンパしに来てるとしか思えないようないい加減さだったから尚更だ。

⑩真面目に仕事をしている俺が、彼が彼女に気があると明確に感じるほどの仕事内容なのだから解るだろう。お客さんよりも彼女を見てる時間の方が多いんだ。そんな男が仕事面で、俺に説教してくるのが可笑しくて堪らなくて、敵意が芽生え、そしてこの後のことを考え同情もした。


第二部完 最近短編予定が長くなるパターンが多い…。(-"-;A