①これは24~27歳くらいの頃だっただろうか、ソーシャルゲームが出たての頃だ。俺は、とあるブログにはまっていた。当時は性別、年齢、職業、出身地まで、全て明かして日記を書いていた。今ほど危険はなかったからだ。今はとてもそんな気にはなれない。当時は迷惑メールやらサイト誘導なんてものもなかったんだ。

②そこでは友達登録というシステムがあった。俺は男性の楽しいブログを書く1人と、その他女性3人と友達登録をしていた。基本、女性との会話が大好きなのだ。しかもその女性と星座血液型で相性が良い事を確認した上で申請するという念の入れようだ。自分から申請したのはこの4名だけだった。

③実際、この4人とはブログサービス終了まで仲が良かった。星座の相性というのは案外信用できる物なのかもしれない。しかし、日記を書いていると相手側から友達申請される事もある。俺は、来る者拒まずの姿勢をとっていた。そして、俺は毎日更新するほどハマっていた。更新が多いと友人も増える物だ。

④始めは日記を書いていた。だが、だんだんネタが無くなる。そんな時は、コメ男というブログキャラクターのお題でブログを書いていた。そのお題ネタの評判が良かったんだ。そして俺のブログはお題だらけになっていったんだ。そして俺は、友達登録した相手のブログの更新時には必ずコメントを残していた。

⑤自分の性格は当時は、狭く深い関係を望んでいた。理由は自分が把握できない場所でのトラブルを避けたかったからだ。長年続けていくうちに星座の相性の悪い人間と大喧嘩した事もあり、星座占いの信憑性をより感じたりもした。彼女と知り合ったのはそんな時だった。

⑥彼女は俺のブログにコメントを残して友達申請をしてきたんだ。俺は来る者拒まずの姿勢なので登録した。そして彼女のブログにコメントをしようと見に行ったんだ。当時の彼女のブログは暗かったんだ。一応、相性もチェックしてみたら過去最低の相性で凄く不安になった。俺は彼女のブログにはできる限り明るいコメントを書いた。

⑦彼女のブログは男性に乱暴された話やら、付き合ってた彼氏からのストーキングされた話、そういった類の不幸な身の上話がメインだった。その他には、彼女は読書が好きでファンタジー小説をよく読んでいた。グインサーガという長編小説だ。俺は話を合わせる為に100冊以上あるその小説を古本屋で全巻集めた。

⑧彼女のブログの話を全て理解した上で、全ての投稿に明るく前向きなコメントを残す事により、俺は彼女に信頼されるようになっていった。そして、携帯のメールアドレスも交換する仲になった。俺は、彼女の事を妹のように思うとメールで書いたことがあり、それ以降、お兄ちゃんと言われるようになった。

⑨寂しいよお兄ちゃん。お兄ちゃん大好き等、毎日メールが来た一日に10件以上だ。過去の携帯に未だに残っていたりする。1000件貯めれるメールの全てが彼女のメールで埋まっている。バレンタインデーには住所を明かした自分にチョコレートまで贈ってくれる仲になっていた。俺は彼女とのメール交換が嬉しかったんだ。

⑩そして、それは他のブログの友人との関係を希薄にしていた。彼女の相手ばかりしていたのだから当然だろう。彼女とのメールをしながらブログの毎日更新など、とても出来なかった。そしてそれでもかろうじて残っていたのは始めの4人だけだったんだ。だが俺は後悔はしていない。俺の返信で、暗かった彼女が明るく変わっていく姿が嬉しかったんだ。


第一部完 
①翌朝、俺は見たことの無い部屋の見たことの無いベッドで目が覚めた。あれ?ここどこだ?凄く頭が痛い。そうだ、昨日いつものメンバーで飲み会行って8人で飲んで、理沙ちゃんとデュエット歌って、あれ?それからどうしたんだ?とりあえず頭が痛い。この状況で、飲みすぎて記憶が飛んでることだけは理解できた。

②「あっ、目が覚めた?おはよ~ダダ君」理沙ちゃんだ。彼女は白地に英字プリントのされた襟元もゆるい感じの、膝くらいまであるロングTシャツを着ていた。スカートもズボンもはいてないように見えるんだけど、この状況って…俺は昨日の事を思い出そうとしてまた頭痛に悩まされ頭を抑えた。

③「あっ、まだ寝てたほうがいいよ。頭痛いでしょ。味噌汁作ったから飲んで。豆腐とワカメの味噌汁だから、さっぱりして二日酔いにはいいかなと思って、それともパンにコーヒーの方が良かったかな?」そう言って彼女はガラステーブルの上に味噌汁を置いた。「あっ、ありがとう」俺は動揺しながらそう言って味噌汁を一口飲んだ

④頭がスッキリしてくる。味噌汁は本当に二日酔いに効くのかもしれない。しかし、いくら考えてもデュエット以降の記憶は思い出せなかった。考えていると理沙ちゃんと目が合った。俺が考え込んでいる間も理沙ちゃんは、こちらを見つめていたらしい。「あっ、あの、凄く美味しいよ」と、俺はかつて無いほど動揺しまくってそれだけ言うと、理沙ちゃんは「良かった」と微笑んだ。

⑤俺の心臓は高鳴っていた。昨日のデュエットを歌っていた際の理沙ちゃんにも魅力を感じたのだが、今の優しい理沙ちゃんは、俺には魅力的過ぎた。心音がドクドクいってるのが解る。俺は左手で額を押さえながら、その感情を必死で押し殺して、「あの、俺、昨日、君に、その」と片言な口調で聞いた。

⑥すると彼女は「やっぱり覚えてないんだ」と言った。俺は慌てて「本当にゴメン、あの、俺、理沙ちゃんの事、魅力的だなって思ってたから、それでデュエットの後の記憶が全く無くて、その、何かしちゃったんなら」とそこまで俺が言った後「責任とってくれるの?」と理沙ちゃんがこちらを見つめながら、少し笑いを含めて言った。

⑦そして、「あ~あ、それなら手を出しちゃえば良かったな」と囁くような小声で言って、「何も無かったよ」と続けて言った。デュエットで私がキスしようとしても無反応で、倒れそうになったから私が支えて、そのまま少し横になってたんだけど起きないから、そのままタクシーで私の家に連れて来たの。あそこに居ても、聡史の家に送っても、洋子って子が怖かったし」

⑧「えっ、洋子が怖い?」俺は話を聞いて少し安心しながらも最後の言葉が気になり、聞き返していた。「あの後はね、テル君が、怜奈と抜け出して、スズが仁さんと抜け出して、4人になったの。でも彼女は、君も聡史も独り占めしたいの。初めから最後まで、ずっと睨まれてたからね私。彼女はお酒強いよ、顔は赤くても全然酔ってなかったもん」

⑨俺はその言葉に驚いていた。そしてその話と前の状況を考えたら鳥肌が立った。洋子は開始前、俺の袖を掴んで不安そうに見つめていた。あれを俺は、酔った自分が襲われたりするのが怖いんじゃないかと思っていたのだが、そうじゃなかったんだ。俺をとられるのが不安だったんだ。

⑩そんな考えをめぐらせていたら、理沙ちゃんは続けて言った「聡史が居なかったら、私何されてたか解らないよ洋子に。聡史は洋子の事、好きって言ってたけど、ダダ君の事も気にしてる事は解ってたみたいだよ。ダダ君は自分の事には鈍感そうだから、知らなかったんだね。解りやすく悪く言っちゃうけど、洋子のキープなんだよダダ君は」

⑪それを聞いて、俺は納得してしまった。恋愛抜きの男女の友情だと思っていたのは自分だけだったんだ。そしてもう痛みは治まっていたのだが、俺は右手で額を押さえ、彫刻の考える人のようなポーズを取っていた。そこに理沙ちゃんが「ゴメンね。ダダ君のことが心配だったから私・・・」と、不安そうな表情でこちらを見つめながら言った。

⑫理沙ちゃんは、初めからずっと俺の事を見つめてくれていた。俺は先ほど押し殺した感情を呼び戻し、自分に正直になる事にした。「理沙ちゃん、デュエットで記憶がなくなる前の続きがしたいんだけどいいかな?」それを聞いた彼女は、こちらを向いて瞳を閉じた。
①とりあえず飲み会という事だから、全員スクーターは聡史の家に置いて、駅まで歩いて行った。駅からは歩いて数分らしい。俺は「ところでテルは一人で飲んでるの?」と聡史に聞いた。「いや、そんな訳ね~だろ。男1人と女2人連れてくるらしい。俺たちが混ざると男4女4の8人になる」と説明した。

②するとスズが「8人は多すぎじゃない?私達4人で別に飲んだ方が良くない?」と洋子の方を伺いながら言った。すると洋子は「そのほうが気軽に飲めるね。人数多いと怖いよ。ダダが傍にいてくれれば安心だけど」と俺を不安そうな目で見つめながら言った。

③すると聡史が「洋子の隣には俺が居てやるよ」と言った。すると洋子は「むしろそれも怖いんだけど」と言って、洋子は両手で俺の袖を握って目で語りかけてきた。そこに聡史が「ダダはカラオケの盛り上げ役だからな。歌いまくって盛り上げてくれよ」と言ってきた。俺はカラオケと聞いてテンションが上がって洋子の無言の語りかけが頭から離れてしまっていた。

④そして、一風変わった居酒屋についた。テルの先輩が働いてると言う個人経営の居酒屋で、俺たち以外の客はなく、宴会貸しきり状態だった。「おぉ、やっと来たか遅かったな」テルは俺達を見てそう言ったが、俺はもう一人の男が気になっていた。テルの先輩らしいが、かなり体格が良くて怒ったら怖そうだ。コレが俺の第一印象だった。テルは仁先輩と紹介した。

⑤そして2人の女の子は理沙と怜奈と名乗った。初対面の印象で、理沙ちゃんはかなり美人だな。と俺は思っていた。とりあえず、駆けつけ一杯という事で全員で生ビールを乾杯した。そして席に座ろうとした時、俺は洋子とスズの隣に座ろうとしたのだが、「ダダ君は私達の隣ね~」と理沙ちゃんと怜奈ちゃんに引っ張られ間に座らされていた。

⑥そして、とりあえず盛り上げ役って言われたからには盛り上げないとな。と思い、カラオケを歌った。曲はリンドバーグの「恋をしようよ Yeah! Yeah! 」だ。その場の誰もがサビを知っていてハイテンションな盛り上がれる曲だ。この女性の歌を俺が全力で熱唱したら、大いに盛り上がった。そして女の子達も、次々にリンドバーグの曲を入れ続けていた。

⑦「ダダ君、飲みが足りないよ~。はい飲んで飲んで~」と怜奈ちゃんに、グラスに瓶ビールを注がれる。俺はお酒は余り強くない。と言うか、かなり弱い。はじめの生ジョッキの時点で顔は赤くなっていた事だろう。だが、どんなに酔っていてもカラオケは歌える男だ。俺は意識がもうろうとしながらも小沢健二のラブリーを熱唱していた。

⑧「やばい~ダダ君、歌上手すぎだね~。あれ、ダダ君顔真っ赤だね~。酔っちゃったかな?私が介抱してあげるからね」と理沙ちゃんが言っているが理沙ちゃんも少し顔が赤らんでいるのが解った。かなり意識は朦朧としてたのだが、ふと洋子の事が気になってそちらを見ると、聡史と仁先輩に挟まれて、かなり酔っているのが解った。

⑨俺は洋子に言われた事をボーっとする頭で考えていた。「ダダが傍にいれば安心ってどういう意味だろう?いつも自分で下ネタふってくる洋子があんな不安な目をして訴えかけてきたんだよな。聡史が隣だと怖いって、今、俺と離れて聡史の隣に居るんだよな」もやもやと考えていると理沙ちゃんが、「ダダ君デュエット歌おう~。はい、愛が生まれた日」と言った。

⑩そして俺は、理沙ちゃんとデュエットを歌った。理沙ちゃんは酔った顔でこちらを見つめながら藤谷美和子のパートを歌っている。初対面で美人だなと思った彼女が俺を上目使いに見つめながらこの曲を歌っているんだ。そりゃあドキッとするだろう。俺は彼女を見つめ返しながら歌っていた。最後に二人でハモって曲は終わったのに、俺は理沙ちゃんから目を離せず、理沙ちゃんもこちらをじっと見つめていた。

第二部完