君はトラマールを服用しても痛みが取れなくなってきていて、痛む箇所も右肋骨の背中側と右腰の背中側、そして右の臀部と、少しずつ広がっていたんだよね。
さらに右肩にも痛みが出てきたと言っていたけど、そこはPET CTでいちばん大きな骨転移があったところで。
病院へ行くのもやっとで、バスと電車に乗るのもしんどいと、移動はすべてタクシーだった。
本当はあの時、もうちょっと君の体調が良かったら、二人で川崎大師に行けたら良いなと思ってたんだ。
今から20年以上前のゴールデンウィークに、君とぼくが初めてデートした場所で、一緒につつじを見られたら、なんて思ってたんだ。
でもとてもそんな余裕はなくて。
緩和ケアの病院では、かかりつけの病院で処方されたトラマールの量が多くて強すぎると言われ、オキノーム、ロキソニン、マグミット(下剤)と胃腸薬を処方してもらった。
体調不良の原因が薬のせいと分かって、君は少しほっとしていたよね。
続けて行った腫瘍内科では、抗がん剤と放射線治療と緩和ケアの話を聞いて。
ここでもやっぱり、1回目の抗がん剤治療から間を置かずに再発していることと、すでに全身に癌が広がっていることから、あまり良い話は聞けなかった。もちろん他の可能性について色々と聞いたけど、正直どれも難しいと言われて。
このころは本当に、藁にもすがる思いだったよね。
あの時ぼくは、ぼくたちは、どうすれば良かったんだろう。
もっとできることがあったんじゃないかとか、君の病気にちゃんと向き合えてたのかなとか、反省や後悔の気持ちが後から後から出てきちゃうんだ。