コナー・マクレガー 栄光と没落のキャリアの軌跡を振り返る。 | 銀玉戦士のアトリエ

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MMA界を代表する世紀のスーパースター、元UFC2階級制覇王者🇮🇪コナー・マクレガーがMMAの試合から遠ざかって、実に3年4ヶ月もの月日が経過してしまいました(2024年11月現在)。

 

2021年7月にダスティン・ポイエーとの3度目の対戦に挑み、1R終盤に左ストレートを放った際に左足を大きく捻ってしまい、脛骨を骨折してドクターストップにより長期の離脱を余儀なくされてしまったマクレガー。

 

その後はリハビリに励みながらも何とか成功し、復帰戦に向けて2023年にはUFC登竜門番組であるTUFのコーチ役に就任、同じくコーチ役としてライバル関係を争ったマイケル・チャンドラーとの対戦が、今年6月下旬に開催のUFC303で予定されていました。

 

ところがこの対戦は試合1ヶ月前になってマクレガーの怪我により中止。当初はチャンドラーとの対戦は年末になるのでは、と報道されていましたが、マクレガーとUFC首脳陣との間で色々とゴタゴタがあったようで試合が決まらず。

結局待たされて手持ち無沙汰になってしまったチャンドラーは、今月開催のUFC309にて、元ライト級王者チャールズ・オリベイラとの対戦が決定しています。

 

 

怪我によるアクシデントもあったとはいえ、ここまで試合を空ける期間が長くなってしまうと、いくら熱狂的なマクレガーファンと言えども「マクレガーなんてもういいや・・・」と熱が冷めてしまうのも無理はないかもしれません。自分もその一人です。

というのも、コナー・マクレガーも今年になって年齢が既に36歳。仮に復帰したとしても、加齢によって全盛期のコンディショニングとメンタルを保てているかどうか、非常に不安な部分があります。

 

 

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コナー・マクレガーは2013年4月にUFCデビュー。

デビュー戦の相手マーカス・ブリメージを、1R早々左アッパーからのコンビネーションでダウンを奪い、僅か67秒で葬る鮮烈的なUFCデビューを果たします。

 

https://youtu.be/HelivOF6vI8?feature=shared

 

その後も、マックス・ホロウェイ、ダスティン・ポイエーといった、後のUFCの中心選手となる若手を相手に勝ち星を積み重ねていき、UFC5連勝で、2015年7月に行われたUFC189にて、チャド・メンデスとのUFCフェザー級暫定王座決定戦に挑みます。

レスリングベースのメンデスを相手に、ストライカーのマクレガーは初回からTDを奪われ、終始グラウンドでトップキープを許す劣勢の展開を強いられるも、2R終盤にリカバリーに成功しスタンドに戻ると、そこから反撃に転じ、マクレガーは必殺の左ストレートでダウンを奪い、逆転の2RTKO勝利でUFCフェザー級暫定王者となりました。

https://youtu.be/J-dcm5sA4T0?feature=shared

 

この試合がメインイベントとして行われたUFC189は、セミで行われたロビー・ローラーVSローリー・マクドナルドによるUFCウェルター級タイトルマッチが年間最高試合級の激闘だった事もあり、UFC史上最も素晴らしい大会として上げるMMAファンは、今でも数多く居ます。そんな歴史的な大会のメインイベントを劇的な逆転勝利で飾り、UFCフェザー級暫定王者に戴冠したコナー・マクレガーのスター性は、更に光輝くものになっていきます。

 

 

2015年12月に開催されたUFC194にて、当時のUFCフェザー級正規王者だったジョゼ・アルドとの王座統一戦が行われ、当時UFCフェザー級絶対王者として通算7度の王座防衛記録を樹立していたアルドを、マクレガーは下がりながらのカウンターの左フックでダウンを奪い、1R・13秒でアルドをマットに沈めるという離れ業をやってのけました。

https://youtu.be/S53-2v3hjfQ?feature=shared

 

マクレガーは、4年に渡ってUFCフェザー級絶王者として君臨していたジョゼ・アルドを、たったの13秒で王座から陥落させると同時に、UFCフェザー級王座統一を果たしたのです。

 

 

UFCフェザー級王者となったマクレガーは、2階級同時制覇を目論みライト級への王座挑戦を表明。

2016年3月に当時のライト級王者ハファエル・ドスアンジョスとのタイトルマッチが決定しましたが、ドスアンジョスの怪我により試合は消滅。

その代役として名乗りを上げたのはディアス兄弟の弟、ネイト・ディアスで、ネイトの準備期間が短い事から試合はウェルター級(77kg)契約で行われ、本来フェザー級(66kg)王者であるマクレガーもそれを承諾。

体格差の不安が懸念される中、2Rの序盤までマクレガーが左ストレートをヒットさせて押していたものの、ウェルター級の体格でタフネスに定評のあるネイト相手に、序盤から強打を打って飛ばし過ぎたせいで途中からスタミナが切れてしまい、最後はリアネイキドチョークで一本負けを喫するという結末に終わってしまいました。

 

 

リベンジに燃えるマクレガーは、2016年8月に行われたUFC202で、ネイトとのリマッチに挑みます。

ネイトは本来はライト級の選手で、マクレガーはフェザー級王者ですが、負けた条件と同じ状態でリベンジを果たしたいというマクレガーの希望から、体格的に不利とされるウェルター級での試合契約となりました。

試合はUFC史に残る激闘を両者が繰り広げ、5Rを戦い抜いて判定でマクレガーが勝利しました。

 

この大会のPPV売り上げは、当時のUFCの歴代記録を更新する165万件を記録。

因縁の相手に、体格的に不利な条件をあえて選択した中で、見事「UFCフェザー級王者として」リベンジを果たしたコナー・マクレガーの人気は、MMA界を飛び越えて、世界のスポーツ界にまで影響を与える存在となっていきました。

 

 

それから3ヶ月後となる2016年11月に開催されたUFC205にて、マクレガーはフェザー級王者として、当時のライト級王者だったエディ・アルバレスに挑戦。

1Rから左ストレートで3度ダウンを奪うなど、得意のスタンドでアルバレスを圧倒したマクレガーは、2Rにカウンターの左ストレートからの4連打でダウンを奪い、パウンドでTKO勝ちを納め、UFCライト級王者になると共に、UFC史上初となる2階級同時制覇を成し遂げました。

 

まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いのマクレガーは、2017年にはかねてから切望していたボクシング界無敗のスーパースター、フロイド・メイウェザーとのボクシングマッチでの対決が実現。

 

この試合がボクシングデビュー戦となるマクレガーの圧倒的不利の声は大きかったものの、それでも「マクレガーだったら例えメイウェザーが相手だろうと何かやってくれるかもしれない」というファンの期待が入り混じった中で行われた世紀の一戦は、メイウェザーがマクレガーを10RTKOで下し勝利しました。

 

しかしながら、あのメイウェザーを相手に10Rを戦い抜き、手打ちのパンチながらも合計で111発をヒットさせたマクレガーにも、健闘を讃える声が多く聞こえ、この試合のPPV売り上げはメイウェザーVSパッキャオに次ぐ430万件を記録しました。

 

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UFC2階級制覇王者となり、地位も名声もお金も全て手に入れて、まさに我が世の春を謳歌するようになったコナー・マクレガー。

人はこのように有頂天になってしまうと、「慢心」「驕り」というものが芽生え始めていきます。

その状況下でも、井上尚弥や大谷翔平のように自分を律する事ができる性格ならば、大きく道を踏み外す事も無いでしょうが、元々は謙虚な性格だったのがパフォーマンス用でエゴイストなキャラクターを演じていたマクレガーの場合、偽りで演じていたキャラクターに囚われてしまい、彼の進むべき道は悪い方向へと掻き立てられるようになっていきます。

 

 

そのトリガーを引いてしまったのが、2018年4月に起きたマクレガーと、そのチームメイトの一派による、UFCファイターが乗車する選手バス襲撃事件でした。

きっかけとなったのは、マクレガーのチームメイトであるアーテム・ロボフに、かねてからマクレガーと因縁のあったハビブ・ヌルマゴメドフが侮辱的な言葉を浴びせたのが発端でした。

これに激昂したマクレガーは、チームメイトと一緒に、試合をする予定だったハビブが乗車しているであろうUFCの選手バスに向かって台車を投げ付け、窓ガラスを破壊するという凶行に及びました。

結果的にその選手バスにハビブは乗車しておらず、それとは無関係の選手たちが割れたガラスの破片で切り傷を負う軽傷となり、マクレガーは警察に逮捕されてしまいました。

 

いくらハビブに因縁があるとはいえ、これは完全なるテロ行為、犯罪です。

激昂したマクレガーも、WWEのバス襲撃事件を真似て、半分パフォーマンス目的で行っていた節があったようですが、元々ブックのあるプロレスのストーリーとは違いますし、本気でそれをやろうものならばガチの因縁に発展してしまいます。

 

ディロン・ダニスら、SBGアイルランドに所属するマクレガーのチームメイトも一緒になって加担していたのも問題でした。

地位も名誉もお金も、全て手に入れて増長するようになったマクレガーに対して、あのような馬鹿な凶行に及ぶのは辞めるよう意見を言えるチームメイトやコーチが、誰一人として居なかったのでしょう。その事も、マクレガーにとっては悲劇でした。

 

 

 

2018年10月に開催されたUFC229にて、当時UFCライト級王者だったハビブ・ヌルマゴメドフとの因縁のタイトルマッチが行われ、事前のプレスカンファレンスでも、マクレガーはハビブに対して、バス襲撃事件に対する謝罪の気持ちなどおくびにも出さず、宗教的にも侮辱する言葉を浴びせ続けていました。

それはもはや、対戦相手へのディスりと同時に、ファンを楽しませるユーモアが求められるトラッシュトークの範疇を越えた、ファンにとっても不快にしか聞こえないただの汚い悪口そのものでした。

 

当然、憎しみに支配されたそんな精神状態でまともに試合に挑めるはずもなく、マクレガーはハビブのグラウンドコントロールとパウンドで蹂躙され続け、4Rにタップアウト負け。

https://youtu.be/81tXbOYJRJw?feature=shared

 

試合後に両者のセコンド陣による乱闘騒ぎが起こるというオマケも付いて、何とも後味の悪い結末に終わってしまいました。

 

 

 

2020年1月にオクタゴンに復帰したマクレガーは、ウェルター級契約でドナルド・セローニと対戦。

左ハイキックを効かせてからのコンビネーションでダウンを奪い、1R・40秒で TKO勝ちを納め、高らかに復活をアピールしました。

 

https://youtu.be/w5pT92NRWhI?feature=shared

 

「ここからUFC王者に返り咲いて、因縁のハビブにもリベンジして、ついでにボクシングでも世界王者になって、再びマクレガー伝説を築き上げるんだ‼️」という復活ロードを思い描くファンの応援に乗せて、マクレガーは2021年1月にダスティン・ポイエーと対戦しましたが、試合は序盤は押していたものの、ポイエーのカーフキックを効かされてしまい、2Rに右フックでダウンを奪われてキャリア初のTKO負けを喫してしまいました。

 

同年7月にポイエーとのリマッチが行われるも、前述の通り1R終盤にマクレガーが左ストレートを放った際に左足を大きく捻ってしまい、脛骨を骨折しての TKO負けで、2連敗となってしまいました。

この試合以降、足の怪我のリハビリもありマクレガーはオクタゴンでの試合から遠ざかっています(2024年11月現在)。

 

 

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ちなみにコナー・マクレガーの2013年から2016年までのMMA戦績は、9勝1敗。

2017年のメイウェザー戦を挟んで、2018年から2024年までのMMA戦績は、1勝3敗です。

 

こうしてコナー・マクレガーという選手のキャリアを振り返ってみると、MMA史上最高のスーパースターと名高い彼ではありますが、MMAファイターとしての実質の全盛期は、UFCフェザー級王者に戴冠した2015年と、UFCライト級王者となり、2階級制覇を達成した2016年の、僅か2年足らずのものでした。

 

ただ、この2年間の間に、マクレガーはUFCフェザー級暫定王者戴冠→アルドを13秒でKOしてフェザー級王座統一→フェザー級王者でありながら2階級上のウェルター級契約でネイトと対戦、一本負け→ネイトと再戦で激闘を演じリベンジ→ライト級王座に挑戦、2RTKOで UFC2階級制覇達成、と、数多くの偉業を達成し、試合の中でドラマを演出してきました。

彼を応援するファンやアンチ、UFCという団体そのものを得意のトラッシュトークとビッグマウスで振り回し続け、ジェットコースターのように乱高下しながらスーパースターとしての階段を駆け上がっていった、濃密な2年間でした。

数々のPPV売り上げを更新し、UFCという団体が大きくなっていったその象徴的な存在であった事も、彼の人気と勢いを後押ししていました。

この全盛期をリアルタイムで立ち合えた事は、格闘技ファンとしては幸せな事だったと今でも思っています。

 

フロイド・メイウェザーとのボクシングマッチも、マクレガー圧倒的不利と言われながらも、得意の左ストレートで幾多の伝説を築き上げてきた事から、それがメイウェザー相手にも通用して、ボクシングマッチでもワンチャンKO出来るかもしれない、そう思わせるだけの勢いが、あの頃の彼にはあった事は事実です。

 

 

 

それも全ては、2015年と2016年のMMAファイターとしての濃密な2年間の軌跡があっての事です。

 

ただ、結果的にこの試合がMMAファイターのコナー・マクレガーにとってのボクシングスタイルへの傾倒へと繋がってしまい、2018年に起こった選手バス襲撃事件も相まって、その後の輝かしいキャリアを自ら台無しにしてしまった感は否めません。

 

ハビブ・ヌルマゴメドフとの因縁のリベンジマッチも期待されていましたが、当のハビブは2020年10月のジャスティン・ゲイジー戦を最後に現役引退を表明。

その3ヶ月後となる2021年1月にマクレガーVSポイエーの試合が行われ、試合前にはハビブも引退撤回を匂わせるようなコメントを出していましたが、結果的にマクレガーはポイエーに敗北。

自分は何だかんだハビブがもう一度オクタゴンに復帰する決意を固めてくれるのであれば、それはマクレガーが這い上がって結果を残し、UFC王者に返り咲き、チームメイトであるイスラム・マカチェフを破る以外にありえないと思っていましたが、彼の引退から4年が経ってしまった以上、ハビブVSマクレガーの再戦という黄金カードも、流石に賞味期限切れとなってしまいました。

 

もっとも、マクレガーはUFC2階級制覇という偉業を達成し、全てを手に入れたスーパースターになった以上、無理にヒールキャラを貫く必要なんて無かったですし、バス襲撃事件のような馬鹿な真似はせずに、心身を整えてMMAファイターとして真摯に練習し、打撃も寝技もできるコンプリートファイターへと進化して試合をこなしていたら、彼は今でもUFCでトップファイターとして活躍出来ていたのかもしれません。

 

 

プロデビュー時からのチームメイトであり、マクレガーも空手スタイルにインスパイアされたというグンナー・ネルソンとお互いに練習し、スタイルを高め合っていけたら、空手と柔術スタイルを極めた究極の「コナー・マクレガー」の姿が見れていたと思っています。

 

 

 

 

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コナー・マクレガーの復帰戦は未だ白紙のまま、来年には彼も37歳という年齢を迎えます。

最近は映画に出演したり、ベアナックル・チャンピオンシップのオーナーを務めるなど、引退後の身の振り方を考えているような節があり、ファイターとしてのモチベーションが保てているか怪しいところがあります。

最も、一生贅沢できるだけの大金は手に入れたわけですし、このまま選手としてフェードアウトしていってもおかしくはありません。

36歳、ブランク3年以上のマクレガーに対し、ファンとして再び大きな夢を託すのは流石に無理があるでしょうし、仮に復帰したとして、全盛期とは程遠いパフォーマンスを見せて敗北を喫したとしても、もはやそれ程落胆の気持ちは起こらないだろうなとは思っています。

 

ただ、それでもやっぱりコナー・マクレガーには、「コナー・マクレガー」であるからこそ、もう少し我々ファンに夢を見させて欲しい。

MMA界稀代のスーパースターが、キャリアの最後にサヨナラ逆転満塁ホームランの大花火を打ち上げる姿を、我々は心待ちにしています。