UFC303感想と、MMAファイターとキックボクサーのボクシングマッチについて。 | 銀玉戦士のアトリエ

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普段国内格闘技はあまり観ないのですが、先週行われたKNOCK OUTのメインイベントとして行われた、鈴木千裕と五味隆典のボクシングマッチの試合をU-NEXTで視聴しました。

 

結果は両者ダウンが無く、3R判定によるドロー。見方によっては五味が勝っていたとも取れる内容で、7月のRIZINでマニー・パッキャオ戦を控えてい(た)鈴木千裕にとっては期待値を大きく下げる内容に終始してしまいました。

 

正直ボクシング的にも微妙で、お世辞にも見応えのある試合とは言えませんでした。45歳となった五味さんも動きは年相応のそれなりで、膝の故障もあってか左のパンチも大振りで打った後も身体がかなり居着いていたのですが、それでも喧嘩四つとなるサウスポー構えの利点を活かして上手く距離を取り、鈴木に対して深くクリーンヒットを打たせないよう、のらりくらりと立ち回ってはいました。

 

パッキャオ戦を控えてい(た)鈴木としても、体格差があったとはいえ45歳となった五味さんくらいは3Rのボクシングマッチとはいえ、KOでしっかり仕留めておきたい所でしたが、ファンに向けての景気付けとはならず。一応RIZIN王者と同時にキックボクシングの王者とはいえ、キックボクサーとしては武尊や天心レベルには及ばない、ローカルレベルの王者ではありますし、あくまでもキックやMMAの武器(ルール)があってこそのパンチの当て感の良さなのかな、とも思いました。

 

鈴木としては五味さんとのボクシングマッチを受けて、このような結果に終わった事が、MMAファイターとしての今後の勢いに水を差す流れになりかねない危険性を孕んでいます。これからどうなる事やら。

 

そして五味戦で怪我をした鈴木千裕は、既報の通りドクターストップにより7月のパッキャオ戦を欠場。代役として名乗りを上げたのは安保瑠輝也となり、パッキャオVS安保の試合が決定となりました。

 

当初からあまりRIZINファンには望まれてはいない試合ではありますが、いくらエキシビジョンとはいえ、あのマニー・パッキャオの相手がこういうやっつけ仕事的に決まってしまうのは、ボクシング側の人からすればどう思うんでしょうね❓

とはいえ、安保がパッキャオの相手に選ばれたのは、先週来日していた元UFCミドル級王者ショーン・ストリックランドとのガチボクシングスパー動画が日本のみならず、海外でもそれなりに話題になっていたというのも大きかったのでしょう。RIZINの話題を滅多にしないインスタの海外MMAアカウントでも、ストリックランドVS安保のガチスパーのショート動画をアップするや、200件以上のコメントが寄せられていました。

 

ストリックランドVS安保のボクシングスパー動画も観ましたが、体格差があったとはいえ、ストリックランドのL字ガード+脱力制空権ボクシングスタイルが、一応キックボクシングのトップファイターの一人である安保相手にも普通に通用していて、UFCファンとしては誇らしく思いました(笑)。

ジャブもタイミングよく打って出鼻を挫いていましたし、バックステップやショルダーブロック等でパンチの威力を殺すのもやっぱり巧いですね。鈴木VS五味よりもよっぽど見応えのあるボクシングマッチでした。

体格差のハンデとして、安保はヘッドギアが付けられていましたが、それでも5Rのスパー後の安保の顔はボコボコになっていました。

細川バレンタインがYoutubeで「ストリックランドはボディを打たなかったのが気になった」と言っていましたが、体重差があるのであえて打たなかったのかもしれません。

 

それにしても、体格差があったとはいえ、キックボクシング王者がMMAファイター相手に揃ってボクシングマッチで不覚を取られてしまうって、古の格闘技ブログ「K-1心中」が今も更新されていたら、キックボクサー共が揃いも揃って情けない💢‼️けしからん💢‼️と発狂していたのでしょうが、個体差があるとはいえ、ボクシングスキルに関してはMMAファイターもキックボクサーもそんなに大差はないのかもしれません。

2008年の大晦日ダイナマイトで行われたゲガール・ムサシVS森昭生(武蔵)さんのK-1ルールの試合でも、ゲガールがアマチュアボクシングの下地があったとはいえ、ボクシング技術でK-1ファイターの森さんをMMAファイターのゲガールが完全に上回った上で、KOで仕留めたという例もあります。

 

UFCを観ていても、イスラエル・アデサンヤやアレックス・ペレイラのような、キックボクサーとして世界トップクラスの実績を残してからMMAに転向した選手よりも、むしろ前述のショーン・ストリックランドやマックス・ホロウェイのような、プロキックボクシング経験の無い、あるいは齧った程度のMMAストライカーのほうが、ボクシング単体で切り取った場合にMMAの試合の中でボクシングテクニックの巧さを披露する試合が多いように感じます。

アデサンヤやペレイラもパンチのカウンターの技術で言ったらかなり高いレベルにあるとは思いますけどね。

やっぱりこれは北米MMAを形成する技術の中でボクシングが占める割合が多いという下地もありますし、それだけアメリカという国でボクシングというスポーツが根付いているというのも要因としてあるのかもしれません。

 

もちろん、蹴りやタックル込みの攻防の中で、ピュアなボクシング勝負では不利な相手でもパンチが当たりやすくなるというのもありますし、キックのディフェンスや耐性に関しては流石に本職キックボクサーのほうが上ではあります。

そういうのも加味しながらMMAのスタンドの攻防を観てみると、より面白さが増してくるかもしれません。

 

 

というわけで、コナー・マクレガーの欠場により当初のメインイベントが👑🇧🇷アレックス・ペレイラVS🇨🇿イリー・プロハースカによるライトヘビー級タイトルマッチとなったUFC303の感想です。

 

 




 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

 

⚪️🇯🇵鶴屋怜VSカルロス・ヘルナンデス🇺🇸⚫️(3R判定)※フライ級

 

 

昨年のROAD TO  UFC ASIA フライ級トーナメントで優勝し、UFCとの正式契約を結んだ鶴屋怜のデビュー戦。

1Rは鶴屋がポイントを取り、2Rは序盤からTDを奪った鶴屋がグラウンドコントロールとパウンドで試合を支配し、確実にポイントを取りましたが、3RはTDに行ったところを逆にヘルナンデスにトップポジションを取られ、鶴屋としては攻め疲れもあってか1、2Rの時のようにスイープで上を取り返せない展開を強いられ、立たれてもケージレスリングの押し付けで体力を奪われ、3Rはヘルナンデスがポイントを取ったところで判定へ。

 

判定は、1、2Rを取った鶴屋が逃げ切って勝利し、UFCデビュー戦を勝利で飾りました。

トリッキーな柔術ムーブとサブミッションに定評のある鶴屋ですが、ヘルナンデスはこれまで鶴屋が戦ってきた相手とは違い、スクランブルの攻防にもよく対処出来ていた選手でした。

鶴屋のヒールホールドやツイスターもディフェンス出来ていました。

勝利した鶴屋はグラウンドコントロールと一本狙いだけでは厳しいという事が分かった試合ではありましたので、今後は打撃スキルの向上も含め、フィニッシュに至るまでの削るシークエンスと試合運びの確立というものが求められてくるでしょう。

 

 

 

⚪️🇺🇸ペイトン・タルボットVSヤニス・ゲムーリー🇫🇷⚫️(1RKO)※バンタム級

 

 

 

1R開幕、ゲムーリーのバックスピンキックをサイドステップで避けたタルボット、左ジャブをヒットさせると、そこから右ストレートを打ち抜いてダウンを奪い、パウンド連打でレフェリーストップ‼️

 

ペイトン・タルボットが、1R僅か19秒での衝撃的なKO勝利を納めました‼️

 





ペイトン・タルボットはアフロヘアーにヒッピーのような出でたちもあり、長身でトリッキーな打撃を得意としている事から、ポストショーン・オマリーとの呼び声も高い25歳のスター候補生の一人です。

以前は何だか打撃フォームが覚束無いブレた打ち方をしていましたが、前回のカメルン・サイマン戦では落ち着いて相手を懐へと引き寄せた上でフォームを固めた左フックのカウンターを打ち抜いてダウンを奪い、KO勝利でストライキングの覚醒を感じさせる試合をやってのけていましたが、今回も堂々とした倒しっぷりで秒殺KO勝利をやってのけていました。

 

実はバックボーンはレスリングというタルボット。王座戴冠に向けては年齢的にまだ焦る必要はないので、今後は対グラップラーとの試合経験も積んでいって、着実にスターへの階段を登り詰めていって欲しいです。

 

 

 

 

⚪️🇺🇸ジョー・パイファーVSマーク・アンドレ・バリオー🇨🇦⚫️(1RKO)※ミドル級

 

 

 

両者オーソドックス構え。

1R、左ジャブ、カーフキックを放ってゆくパイファー。

ケージを背負ったバリオーが右に移動したところへ右ストレートをヒットさせてぐらつかせると、そこから左ボディのコンビネーションで畳み掛けてダウンを奪い、起き上がり様に追撃の右をヒットさせてバリオーは前のめりに失神‼️

 

ジョー・パイファーが圧巻のKO勝利を納めました‼️

パイファーは前回の🇸🇪ジャック・ハーマンソン戦ではランカーの壁に経験値の差で阻まれ、判定で敗れてしまいましたが、今回はそれを払拭するスカ勝ちです。

 

 

 

 

⚪️🇮🇪イアン・ギャリーVSマイケル・ペイジ🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿⚫️(3R判定)※ウェルター級

 

 

 

K-1系の正統派キックボクシングスタイルのギャリー、テコンドーをベースとした空手ステップ型スタイルのペイジによるウェルター級ストライカー対決となりましたが、試合はギャリーがこれまでのUFCではあまり見せていなかったTDからのグラウンドコントロールでポイントを取り、判定で勝利しました。

 

ギャリーは1RにTDを奪ってバックを取った時にRNCで一本決められれば良かったのですが、ペイジに粘られた事でスタミナが消耗してしまい、逆に2Rはペイジのパンチを被弾する場面が目立ちました。

ギャリーは前回のジェフ・ニール戦、前々回にカーフキックで圧倒していたニール・マグニー戦と、グラウンドの攻防に行かない/露骨に避ける試合運びをやっていて、これはギャリーがグラウンドの攻防が苦手というよりかは、スピードとフットワークで立ち回る現在のギャリーのスタイルが、グラウンドの攻防をやる事によってスタミナをロスして、スタンドの攻防に戻った時に打撃やフットワークのスピードが鈍ってしまうのを恐れているようにも思う、と、前回のニール戦の試合感想でも綴りましたが、やっぱりそうだったんだな、というのが2R以降のギャリーの様子を見て明らかになりました。

 

https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12841150196.html

 

それでもレベルチェンジから上手くTDを狙い、3R中盤からはスタンドでバックを取ってコントロールした事で、辛くも判定で勝利した形にはなりましたが、火力と決定力不足が故に苦戦を強いられたのは否めなかったところです。

 

ギャリーは今のスピード重視のスタイルよりも、もうちょい肉体改造してフィジカルで押し切れるスタイルにモデルチェンジしていったほうがいいのかも❓と思う一方で、今のスタイルを極めていった先に唯一無二のギャリーのMMAスタイルが確立されていくのかもしれないので、結論を出すのはまだ先なのかもしれません。

今回の試合で、これまでのUFCの試合では封印していたグラウンドの攻防を試した事はギャリーにとってはプラスになったかとは思いますが、どちらにせよ今のままでは王座戴冠に向けては黄色信号と言ったところでしょうか。

 

 

 

⚪️🇧🇷ディエゴ・ロペスVSダン・イゲ🇺🇸⚫️(3R判定)※165ポンド契約

 

 

 

ロペスの当初の対戦相手だったブライアン・オルテガが試合当日に発熱したため、代役でダン・イゲが出場となったセミイベント。

 

1R、両者オーソドックス構え。

連打を放つロペスに対し、ブロッキングでガードするイゲ。

イゲは必殺の左フックを狙っていきますが、ロペスもイゲのブロッキングの中段にボディを絡めたコンビネーションを放ち、カーフキックをヒットさせます。

終盤、イゲがタックルに行きますが、これを切ったロペスがカウンターギロチンでダースチョークを仕掛けていったところでラウンドが終わります。

 

2R、中間距離から鋭いカーフキックを蹴ってゆくロペス。打撃戦でアドバンテージを取り、TDからバックを取ってグラウンドコントロールし、ラストは腕十字を仕掛けていって2Rも取ります。

 

3R、後が無いイゲは前に出てプレッシャーを掛けていきます。攻め疲れもありケージを背負わされるロペスに対し、イゲは右ストレート、左フックをヒットさせ逆転を狙います。

スクランブルの攻防の中で上を取ったイゲ、トップコントロールからパウンドを打っていき、3Rは取りましたが決め切れず判定へ。

 

試合前のゴタゴタで二転三転しましたが、その割には締まりのあった試合内容でディエゴ・ロペスが判定で逃げ切って勝利を納めました。

急遽代役出場のダン・イゲも3Rに盛り返すなど、健闘を見せました。

 

 

 

 

 

⚪️👑🇧🇷アレックス・ペレイラVSイリー・プロハースカ🇨🇿⚫️(2RTKO)※UFCライトヘビー級タイトルマッチ

 

 

ブラジルの先住民族のシャーマンVSチェコのサムライ、という構図で煽られていた今回のタイトルマッチ。

ケージインの際に両者が睨み合う姿は、古武術的な思想を取り入れているこの二人にしか醸し出せない独特の緊張感が漂っていました。

 




1R、オーソドックスに構え、中間距離から左右カーフキック、プロハースカがサウスポーにスイッチしたところへ右前蹴りをヒットさせるペレイラ。

プロハースカはフェイントを入れつつも攻撃の瞬間を探り、大振りにワンツーを伸ばしてヒットさせますが、ペレイラも距離が近くなると左フックをヒットさせ、中間距離では左ジャブ、鋭い右ミドル、左右カーフキックをヒットさせ、有効打で上回っていきます。

中盤、打撃の展開から組んでいってペレイラをケージに押し付けるプロハースカ。しかしペレイラは膝蹴りをボディにヒットさせつつ、クリンチを外してスタンドに戻り、カーフキックを効かせたところで終了間際に左フックのカウンターでダウンを奪い、ラウンドを終えます。

 

2R、ダウンのダメージが残るプロハースカに対し、ペレイラが開幕直後からいきなりダイレクトに左ハイキックを放ってダウンを奪い、パウンド連打でレフェリーストップ‼️

 



https://www.threads.net/@ufcanz/post/C80-UJ2RcV0/?xmt=AQGzc6XppDT8vEs5nUms6zhstPPlSz4a7MtWn-XOXjmpYA

一瞬の迷いが生じた侍の刀を二つに貫く、シャーマンの不意打ちの一矢が炸裂‼️‼️‼️

アレックス・ペレイラがリマッチの舞台でもイリー・プロハースカをKOで下し、2度目の王座防衛に成功しました‼️‼️‼️

 

 



 

プロハースカはかねてからローキックに弱いというのは明らかになっていたわけですが、ペレイラは序盤から定石通りにカーフを効かせ、攻撃の機会を探ろうとするプロハースカに対して中間距離の打撃戦を手数で上回り、アドバンテージを取っていきました。

プロハースカとしては前回同様にTDを奪い、グラウンドで削っていったところでフィニッシュと行きたいところでしたが、ケージに押し付けられたペレイラはTDを許さず、再びスタンドに戻りカーフキックをヒットさせて、流れを向こうに行かせませんでした。

1ラウンド終了間際の左フックでダウンを奪った場面は、あと5秒あったら試合が決まっていたと思います。

 

2R開始直後、プロハースカのダメージが抜け切れないところでペレイラが開幕直後からいきなり前足となる左ハイキックをダイレクトで放っていったのは、まさに奇襲技と言ってもいい意表を突いた攻撃でした。

プロハースカのガードが下がってたのもありますけど、あそこでいきなりハイキックを蹴っていく選手ってキックボクサーでも中々居ないですからね。

 

やはり自分の見立て通り、アレックス・ペレイラという選手は王者になって自信を付けて、試合を重ねる度にキックボクシング時代の破壊力溢れる打撃がMMAの試合でも徐々に発揮できるようになって、更に強さを増していくのでは、と思っていましたが、今回の試合を見るとまさにその通りの、UFC &GLORY2階級制覇王者に相応しいチャンピオンへと成長しつつあります。

 

グラップリングの苦手意識を更に払拭していければ、もしかしたらヘビー級を制覇してのUFC史上初となる3階級制覇王者も、夢物語ではないのかもしれません。

 

コナー・マクレガーの欠場によりカードが二転三転した今回のUFC303。

塩っぱい試合も少しありましたが、豪快なフィニッシュ決着も多く見られた、満足度の高い大会でした👏👏👏‼️‼️‼️グレーテスト😝👏‼️‼️‼️‼️‼️‼️