☆2024年4月 月間MVP☆
🇧🇷ジョゼ・アルド🇧🇷(UFCバンタム級/元UFCフェザー級王者)
【UFC301 VSジョナサン・マルチネス戦 dif 3R判定勝利】
2022年8月のメラブ・ドヴァレシビリ戦を最後に、MMA引退を一度は表明し、その後はプロボクシングマッチを中心に活動を行っていた元UFCフェザー級王者ジョゼ・アルドが、地元ブラジルで開催されるUFC301での現役復帰を明言。
復帰戦となる相手は現在バンタム級ランキング12位で、サウスポー構えから繰り出される左のキックが強力なストライカー、ジョナサン・マルチネス。
ボクシングマッチを経たアルドとしては、カーフキックが得意なマルチネスは復帰戦としてはハードな相手となるが、果たしてどうなるか。
1R、アルドはオーソドックス、マルチネスはサウスポーに構える。
アップライトに構えるアルドに対し、前手を出しつつ左ミドル、左右ローキックを放ってゆくマルチネス。
アルドは左ミドルを腕でブロックしつつ、マルチネスの得意なローキックもしっかりとカットして対処する。
右ボディストレートを放つアルド。続くワンツーはバックステップでかわされる。
代名詞と呼べる鋭い右ローキックをヒットさせたアルド。互いにガードを上段に構え、距離が少し遠いので顔面にパンチが入りにくい展開が続くが、ラウンド終盤、アルドがサウスポーのマルチネスに対し、大きく外側に踏み込んで右ストレートをヒットさせると、そこからローキック、ワンツーからボディへと繋ぐコンビネーションをヒットさせる。
初回は終盤に纏めた有効打の差でアルドが取った。
2R、マルチネスが踏み込んできたタイミングで右ローキックをヒットさせたアルド。
続いて右ボディストレート、ワンツーをヒットさせ、アルドとしてはパンチの距離感が掴んできたか。
一方、ローキックをカットされ、左ストレートや左の蹴りでイニシアティブが取れず、打撃戦でやや手詰まりになってきたマルチネスはタックルからケージにアルドを押し付けて展開を変えようとするが、フェザー級王者時代から抜群の腰の重さを持っているアルドをTDするまでには至らず、レフェリーブレイクで再びスタンドへ。
前足に重心を掛けた左右のボディブローを叩き込むアルド。ワンツーを返してゆくマルチネス。
ここから互いのパンチが交錯し、顔面に当たるシーンが多くなる。
マルチネスも左ミドルをボディにヒットさせるが、このラウンドも若干アルド優勢で終わったか。
3Rも互いに打撃が交錯する中、アルドはカウンタータックルを仕掛けていくが、マルチネスはこれを切ってゆく。
ワンツーのタイミングから踏み込んで、ガードを固めるアルドに左のエルボーを放ってゆくマルチネス。これまでは出さなかった攻撃でアルドに揺さぶりを掛け、左ミドルもボディにヒットさせる。
しかしアルドも直後にワンツーからボディへの素早いコンビネーションで打ち返し、左ジャブのカウンターをヒットさせる。
マルチネスはバックハンドブローを放つが、これをかわしたアルド。
アルドは打ち合いから左フックを顎にヒットさせ、更に右のショートフックでマルチネスを遂にぐらつかせると、そこから左右ボディブロー、首相撲からの膝蹴り、右ストレートと畳み掛け、そこから相手を持ち上げてここぞとばかりにTDを決める。
トップポジションを取ったアルド。そこからパウンドをコツコツと打ちつつ、トップキープでしっかりと押さえ込んだところで試合終了。
判定は3者がアルドを支持、ボクシングマッチ帰りの選手にありがちな、ボクシング偏重のスタイルではなく、MMA仕様の老獪なスタイルでもってランカーのジョナサン・マルチネスを下したジョゼ・アルドが、地元ブラジルの大歓声に包まれて勝ち名乗りを上げた。
2004年、17歳で総合格闘技デビュー。
柔術黒帯の寝技の実力を誇りながら、同時にスタンドでは天才的な打撃センスを持ち合わせており、キレのある蹴り技と破壊力のある拳で数々のKO勝利を納め、UFC軽量級の前身であるWECという団体ではフェザー級王者に君臨、タイトルマッチではユライア・フェイバーやカブ・スワンソンといった、後にUFCで活躍するトップファイター達の挑戦を退けている。
2011年にWECがUFCに買収され、UFCにフェザー級が設立。
初代UFCフェザー級王者を決めるタイトルマッチで、カナダのマーク・ホーミニックを判定で下し、UFCフェザー級王者となり、以降は絶対王者として長期政権を樹立してゆく。
2015年12月、自身8度目となる王座防衛戦となったコナー・マクレガーとのフェザー級王座防衛戦において、マクレガーの誘いの左フックのカウンターでダウンを奪われたアルドは、1R、13秒でKO負けを喫し、7度に渡って防衛してきたフェザー級王座から陥落する。
勝者となったマクレガーはこの試合を皮切りに世界的スーパースターへの階段を駆け上がってゆく一方で、敗者となり4年に渡って防衛し続けたUFCフェザー級王座から陥落したアルドは地獄を彷徨う事となる。
彼のTwitterのリプ欄には心ないファンからの「13 second」という書き込みが連なり、マクレガーのフェザー級王座返上により再び暫定王者から正規王者へと返り咲くも、タイトルマッチの舞台でマックス・ホロウェイを相手に2度に渡って敗北を喫してしまう。
背水の陣で挑んだ2018年7月に行われたジェレミー・スティーブンス戦、1R終盤に渾身の左ボディブローを効かせたアルドは、そのままパウンドで追撃。
実に2年ぶりとなる勝利を勝ち取った瞬間、大観衆のスタジアムはアルドの復活劇に大いに沸いた。
この試合で復活を遂げたアルドは、2019年にバンタム級に階級を落とし、新天地で更なる羽ばたきを見せる。
フェザー級時代においても減量で苦しんでいたというアルドが、バンタム級で体重を落としてパフォーマンスを発揮できるのかという懸念も当初はあったが、彼は見事に階級にアジャストさせ、バンタム級でもトップファイター相手に戦い、ランキングに名を連ねた。
柔術黒帯でありながらも、キレのあるリードジャブとローキックで堅実に試合を組み立て、卓越した技術と腰の重さで相手にテイクダウンを絶対に許さず、相手が一瞬の隙を見せたらそこを見逃さず、膝蹴りや強烈なミドルキックといった武器でもって一気に仕留めに掛かる。
UFCフェザー級王者時代は、この圧倒的な強さを持って通算7度に渡って防衛し、10年間に渡る無敗記録を継続させた。
バンタム級に階級を落としてからは年齢の部分もあり、瞬発力や反応といった部分においては若い頃よりも若干の衰えが見られているが、ボクシングテクニックが向上しており、ウェイトの乗った強烈なボディブローと、伸びのある右ストレートを主体に、素早いコンビネーションで畳み掛けてゆく。
スタンド打撃のみならず、要所ではレベルチェンジからのTDを決め、そこからグラウンドコントロールして強烈なパウンドを打ち込み、一本も狙ってゆく。
UFC王座から陥落して9年を経過してもなおひたむきに自己研鑽し、トップファイターとして活躍し続けているアルドの姿は、全てのMMAファイターにとっての励みとなり、目指すべきシンボルとなっている。
フェザー級絶対王者時代の、クールで武骨なヒットマンという近寄りがたいイメージから一転、オクタゴンの内外で喜怒哀楽の表情を見せ、人間味溢れる姿を見せるようになったジョゼ・アルドは、これからもファンを魅了する生きるレジェンドとして、限界を迎えるその日まで走り続けていくだろう。