昨日、シンガポールのインドアスタジアムで行われたUFCファイトナイト大会の感想です。
現地時間で行われたため、UFCにしては珍しく日本時間では18:00から開催となった今大会。
メインイベントはマックス・ホロウェイVSコリアンゾンビのフェザー級マッチが行われ、日本人選手も3人出場しました。
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
⚪️🇺🇸ビリー・ゴフVS木下憂朔🇯🇵⚫️(1RTKO)※ウェルター級
まさかのビリー・ゴフの逆転勝利でした。
木下は立ち上がりから調子が良く、左右のカウンターやハイキックをヒットさせて相手の組みにも対応していましたし、インローをやや貰い過ぎていた感はありましたが、空手をバックボーンにしていたのである程度は耐性があるのかなと思っていました。チームメイトのヴィセンテ・ルケのインスタの投稿には木下と一緒に練習してる写真がアップされていて、「彼は将来有望な選手」と太鼓判を押していました。
これは木下は勝てるのでは❓という流れではありましたが、ゴフがインロー打った後の右ボディストレートがボディに効かされたそうで、喰らって悶絶した木下が倒れてパウンド打たれたところでレフェリーストップ。
木下はこれで2連敗。ここから2連勝しないとリリースされるので、いよいよ正念場です。
⚪️🇯🇵中村倫也VSファニー・ガルシア🇲🇽⚫️(3R判定)※バンタム級
昨年のROAD TO UFC ASIAトーナメントで優勝しUFCと正式契約を果たした中村倫也。レスリングU23世界選手権を制したレスリングエリートである事から、現地解説ではUFCミドル級プロスペクトのボウ・ニッケルの名前を上げて「ジャパニーズ・ボウ・ニッケル」と紹介されていました。UFCデビュー戦にしてメインカード第三試合での起用も、UFC側の期待の高さが窺えます。
試合は各ラウンドそれぞれでTDを奪った中村がグラウンドコントロールで完勝。1Rには豪快なリフトでTDを奪い、ノースサウスポジションでコントロール、2Rはタックルへのカウンターギロチンも対処し、3Rも腕十字で一本を狙うなど、それぞれ見せ場を作っていました。
グラウンドでは相手のサブミッションエスケープが上手かった事もあり、一本は決められませんでしたが、中村としては極めに固執し過ぎてその前段階で必要なパウンドで相手を削っていくというシークエンスに欠けていたように思います。この辺がこれからに向けての改善点でしょう。
⚪️🇬🇪ギガ・チカゼVSアレックス・カサレス🇺🇸⚫️(3R判定)※フェザー級
チカゼは基本オーソドックス、カサレスはサウスポー構え。
1R、スタンスを広く取ってサイドキック、左ミドルで突き放しつつ、フェイントを掛けながら時折飛び込み右フックや右ボディ、バックブローをヒットさせてゆくカサレス。
元キックボクサーのチカゼは、柔術黒帯のカサレスの寝技込みのプレッシャーもあってか、スタンドの攻防においてカサレスのトリッキーな攻撃を被弾する場面もありますが、左右インロー、右ミドルをヒットさせつつ、終盤には左ジャブのカウンターをヒットさせます。
2R、前足のサイドキックを放ち、チカゼをバックステップで下がらせるカサレス。
チカゼはカサレスの懐に入って強打を入れられない展開を強いられますが、右ミドルからスイッチして大きく踏み込む左ストレートをヒットさせると、右ミドル、ボディストレートと攻め立ててカサレスを追い込み、距離が近くなると右ストレートがヒットする場面が多くなっていきます。
3Rもお互い駆け引きを見せながら打撃戦を繰り広げる両者。カサレスも被弾しながらもストライカーのチカゼ相手に果敢に打ち返していきますが、チカゼもサイドキックを捌きつつ鋭いカーフキック、右ミドル、右ストレートを深くヒットさせ、相手の前足にローを効かせて蹴りを出させなくし、バックブローも避けてから左右フックを返すなど、カサレスの打撃にも尻上がりに対応。最後にチカゼが胴回し回転蹴りを見せたところで試合終了。
拮抗した内容ではありましたが、判定は3-0でギガ・チカゼが勝利‼️
元キックボクサー・空手家で、華麗な足技を得意とする打撃巧者のチカゼ相手に、35歳とベテランの年齢になって老獪さが増していったカサレスのブルース・リー的なカンフー打撃も肉薄したという、立ち技的にもハイレベルな面白い試合となりました‼️
⚪️🇺🇸アンソニー・スミスVSライアン・スパーン🇺🇸⚫️(3R判定)※ライトヘビー級
両者オーソドックス構え。
1R、カウンター巧者で一発が強いスパーンに対し、スミスは左ジャブ、前蹴りを放ちつつ、左、右とそれぞれカウンターをヒットさせ、更にカーフキックを効かせて相手をスリップさせ、タックルを決めてTDを奪い、ラウンドを取ります。
2Rになると今度は一発強打のあるスパーンが左フックのカウンターを効かせ、右、飛び膝で追い打ちを掛けてグラウンドに移行し、パウンドを打ってスミスの左瞼をカットさせ、イーブンに持ち込みます。
3Rはお互いベタ足ながらも拮抗したスタンドの攻防に。スパーンも良い打撃を入れてスミスを下がらせる場面もありましたが、基本ブロッキングで相手のパンチを防ぎつつも、随所でカウンターをヒットさせたアンソニー・スミスが、スプリット判定で勝利を納め、連敗を脱出しました。
⚪️🇺🇸マックス・ホロウェイVSコリアンゾンビ🇰🇷⚫️(3RKO・右フック)※フェザー級
お互いオーソドックス構え。
1R、ミドルレンジからカーフキック、踏み込んでの左ジャブ、上下に打ち分けての右ストレートを放ってゆくホロウェイ。
コリアンゾンビもベタ足でプレッシャーを掛け、スイッチしながら踏み込んでの左右フックをヒットさせるなど、ホロウェイをバックステップで下がらせる場面を見せ、会場の韓国人のファンを沸かせますが、ホロウェイも左フックのカウンターをヒットさせるなど、ミドルレンジだけでなく距離が近くなっても相手に主導権を握らせない打撃をヒットさせ、ポイントを取ります。
2R、ホロウェイがワンツーでダウンを奪い、直後にグラウンドに移行しアナコンダチョークを仕掛けていきます。
首を締め上げてゆくホロウェイ。しかしコリアンゾンビはそれを耐え抜き、ホロウェイが極まらないと見るやチョークを緩めお互いスタンドに戻ります。
その後はフットワークを使いながらスティッフジャブ、ワンツー、ボディストレートでコリアンゾンビのレンジの外からしっかりと攻撃をヒットさせてゆくホロウェイ。カーフやスイッチしながらの左ミドルなど、顔面とボディ、脚への打ち分けにも余念がありません。
3R、後が無くなったコリアンゾンビが果敢に前に出てパンチを振り回していきます。
左右フックをヒットさせ会場は沸きますが、お互いのパンチの交錯の直後にホロウェイが右フックのカウンターをヒットさせ、コリアンゾンビが左腕を大きく振りながら前のめりに倒れたところでレフェリーストップ。
まさしく絵に描いたようなカウンターショットの一撃で、マックス・ホロウェイがコリアンゾンビに引導を渡すKO勝利を上げました‼️‼️‼️
一発強打の不思議カウンターを得意とするコリアンゾンビが相手だっただけに、距離が近くなるとホロウェイが被弾し、会場の韓国応援団の声援もあってヒヤリとさせられる場面もありました。
しかし要所要所を押さえる有効打とカウンターで打撃戦を優位に運び、最後は冷静に右フックのカウンターを合わせてダウンを奪い、KO勝利を納める事が出来ました。
負けたコリアンゾンビは試合後のインタビューでグローブを脱ぎ、現役引退を表明。
戦極〜WEC時代からジョン・チャンソンの本名で活躍し、UFCではアグレッシブなファイトスタイルと無類のタフネスを誇る事からいつしか「コリアンゾンビ」の愛称で親しまれ、いつしかそれがリングネームになっていきました。
キックボクシング時代ではイッツショータイムで当時佐藤嘉洋に勝利したパヨンソック・スーパープロサムイにバックブローでまさかのKO勝ちを納め、UFCではレオナルド・ガルシア戦でのツイスターでの一本勝ち、マーク・ホーミニック戦での秒殺KO勝利など、数々のインパクトのある試合をやってのけ、うるさ型の欧米のファンにも認められる人気選手となりました。
今日の試合でもあわや一本負けのピンチを乗り越え、まさかを期待させる立ち回りを見せるも、最後は果敢に打ち合った末にカウンターの一撃で前のめりに散るという、まさにコリアンゾンビらしさが全開に発揮された試合内容と幕引きでした。
インタビューで引退を表明した後の退場時には自身の入場曲「Zonbie」が流され、シンガポール開催でありながらも会場を訪れた韓国人ファンのみならず、多くの観客が入場曲に合わせて大合唱していました。
こんな幕引きで現役を終えられる選手はアメリカ人のUFCファイターでも中々いませんよ(笑)。
ちなみにこの曲は反戦を歌った曲としても知られています。コリアンゾンビの引退もそうですが、現在の世界情勢とオーバーラップして、まるで映画のエンディングのようだったと感動したという欧米のファンの声が多数ありました。
UFCで素晴らしい功績を上げ、熱いファイトで、「国籍など関係なく」、観客を熱狂の渦に巻き込んで世界中のファンを虜にした、数少ないアジア人UFCファイター、それがコリアンゾンビ、ジョン・チャンソンでした。
お疲れ様でした🎊🎉‼️‼️‼️‼️‼️‼️