9月のUFCは10日に「UFC279」が開催されますが、この大会はナンバリング大会ではつきもののタイトルマッチが行われません。
その代わり「カムザット・チマエフVSネイト・ディアス」という注目のカードが行われます。こういう自由度の高いマッチメイクってUFCクラスにもなるとタイトルマッチでは中々組みにくい傾向にありますが、ワンマッチならアリだと思ってます。
ベクトルは違えどヤバイ雰囲気を醸し出している両雄の激突、勝てばタイトルマッチ、ネイトはこの試合がUFC契約最終戦(負ければサヨナラだけど勝てばUFC側としても是が非でも引き留めるだろう)と、色々化学反応を起こしそうな試合になりそうですが、圧倒的不利と言われているネイト・ディアスにとってはキャリアの集大成を賭けた試合になりそうです。
兄のニック・ディアスも含め、ディアス兄弟というのはとにかく契約交渉にうるさくて、しかも美味しい試合ばかりをプロモーター側に要求したがるというイメージがあります。
ランキング制が確立されているUFCと言えども、来たオファーをそのまま受けるような選手ばかりではなく、自分と相性の良い選手を選り好みしていって連勝してランキングを上げるようなクレバーな選手も中には存在します。
ディアス兄弟の場合は自分が一番になりたいという意識が強いのか、ランキングを度外視してタイトルマッチ、またはそれに近い試合を(金銭面も含めて)要求し、プロモーター側が突っぱねるようなら団体離脱を仄めかしつつ自分の要求が通るまでは試合をしないというワガママなスタンスを貫いています。
並の選手がこういう態度を取ったらUFCをリリースされてしまうでしょうが、ディアス兄弟は人気者でファイターとしての自分の商品価値をよく理解しているからこそ強気に出れる部分はあると思います。
ネイトのインスタを見ていると「これぞネイト・ディアス!」とファンが思っているキャラクター像をそのまま映し出しているような写真が多いです。一応ネイトは2018年にガールフレンドとの間に子供を授かっているのですが、そういった平穏な日常の生活感を公衆の前では一切見せない、感じさせないのも一種のセルフプロデュースと言えます。
元UFCウェルター級王者カマル・ウスマンが、愛娘と戯れる姿をよく動画配信するのもセルフプロデュースとしてはアリですが、ネイトがそれをやるとなんか違うんだよね、という事です。
2016年3月にコナー・マクレガーの本来の対戦相手だったハファエル・ドスアンジョスが欠場、試合3週間前の代役としてネイト・ディアスが名乗り出て、ウェルター級契約で当時のフェザー級王者だったマクレガーに一本勝ちを決めてしまったという流れはまさしく「美味しい試合だったら迷わず受ける」ディアス流処世術の真骨頂が見られました。
その目論見通り、マクレガー戦で大金を手に入れたネイトは休養期間を経て2019年にウェルター級で復帰、アンソニー・ペティスを破り、同年11月のホルヘ・マスヴィタルとの一戦では「BMFベルト」を賭けての対戦が話題となりました。
そんなネイトも近年は2連敗中。年齢も37歳となり、ボクシングと引き込み柔術に特化したある種オールドスクールなMMAスタイルは、トップファイター相手には攻略法が確立されつつあります。
ファイターとしての商品価値はあれど、タイトル挑戦からは遠ざかっている位置に置かれてしまったネイト。
兄のニック・ディアスは39歳という事で、ロビー・ローラーとの「レジェンドマッチ」路線にシフトしていったようで、ネイトもタイトルマッチから外れたところでスタイルが噛み合う適当な相手を選んで、レジェンドマッチ路線で注目を浴びつつファイターとしての余生を過ごす、という道もアリだとは思うのですが、それでも自分が一番になりたいと渇望するのがネイト・ディアスという漢なのでしょう。
カムザット・チマエフ戦は、そんなネイトとUFCとの妥協点が一致したマッチメイクと言えます。ちなみにチマエフ戦はネイト自身が望んだ試合のようです。
勢いでは勿論チマエフ有利と言えるでしょう。チマエフのレスリングにネイトは何も出来ずに一方的にグラウンドで蹂躙される展開も充分ありえます。
しかしそこをネイトが何とか凌ぎ切れば、無尽蔵のスタミナを誇り、打ち合いには滅法強いネイトが後半ラウンドに仕留める展開というのも考えられます。
前回のギルバート・バーンズ戦ではタックルを切られ、打ち合いの展開となりバーンズにダウンを奪われる場面もあったチマエフ。
ネイトが自分のテリトリーにチマエフを引きずり込めれば勝機はあります。
オレ流の悪童は異端の怪物の勢いを止め、奇跡を起こす事が出来るのか?
オクタゴンの内外でワガママ放題に振舞ってきたネイト・ディアスのキャリア最大の戦いを皆さん素直に楽しみましょうという事で、9月のUFC興行を紹介していきます。
🏟UFC FIGHT NIGHT(9月3日開催)(日本時間4日より、UFCファイトパスで生中継)🏟
この大会は UFCとしては初となるフランス・パリで開催されます。
フランスでは長らくMMA興行の開催を禁止されていましたが、2020年に解禁されました。
現UFCヘビー級王者フランシス・ガヌーや元暫定王者シリル・ガーヌの活躍、そしてフランスを拠点に活動するMMA団体、ARES FCの盛況ぶりを見るに、フランスでもMMAが人気スポーツの仲間入りを果たしている様子が伺えます。
フランスは欧州で一番ムエタイが盛んな国と聞きますし、クリンチ際や首相撲の攻防が求められるMMAルールとの互換性も高く、今後フランスからムエタイ上がりの選手がMMAに続々と転向する可能性も充分に考えられます。
メインイベントは元ヘビー級暫定王者🇫🇷シリル・ガーヌと、マーク・ハントを思わせるサモアン体型の🇦🇺タイ・ツイバサが対戦。
噂では12月にジョン・ジョーンズVSスティぺ・ミオシッチのヘビー級暫定王者決定戦が行われるらしいですが、ジョーンズがまたやらかして欠場する可能性も大いにありえるので、恐らくガーヌVSツイバサの勝者がバックアップに回ると考えられます。
セミは🇦🇺ロバート・ウィテカーVS🇮🇹マーヴィン・ヴェットーリのミドル級トップランカー対決。ヴェットーリはノーモーションの左ストレートとグラウンドではレスリング力が強く漬ける能力に長けた選手となりましたが、トータルバランスが高い選手と化したウィテカーの混合MMAが何処まで通用するかが楽しみです。
他にはフェザー級の🇨🇦シャルル・ジョーダンVS🏴ナザニール・ウッド、ミドル級の🇫🇷ナショディーン・イマボフVS🇺🇸ホアキン・バックリーが注目です。
そういえば UFCと正式契約を果たした元GLORYウェルター級王者🇨🇲セドリック・ドゥンべは当初この大会に出場予定だったようですが、どうもフランスMMA連盟のルールから相手との試合数の差が大きい選手はフランスで開催されるMMAの大会には出場させられないという規定で出場が取り止めになったそうで、ドゥンべはそのまま UFCからリリースされたとかされないとかの話が飛び交っているそうです。
ドゥンべはまだMMA戦績2勝0敗だし、同じ戦績でもNCAAオールアメリカンのボウ・ニッケルとは訳が違いますし、前回の試合を見る限りでは相手が弱過ぎて実力が測れなかったですし、もうちょっとローカルで経験を積ませてからのほうが良かったかなと思います。
🏟UFC279(9月10日開催)(日本時間11日11時より、WOWOW、UFCファイトパスで生中継)🏟
冒頭の文章で見所を紹介しましたがメインイベントは🇸🇪カムザット・チマエフVS🇺🇸ネイト・ディアスの5Rマッチ。
セミでは4連敗中で崖っぷちに立たされてしまった🇺🇸トニー・ファーガソンがウェルター級に階級を上げて🇨🇳リー・ジンリャンと対戦します。
ファーガソンとしてはウェルター級でいきなりレスリング系の選手を当てられなかったのは幸いですが、ジンリャンは左右の拳の当て感が良く打ち合ったら危険な相手です。
ファーガソンは5連敗は避けたいところなのでこの試合は落とせません。
ウェルター級に転向してから2連勝中の🇺🇸ケヴィン・ホランドVS UFCでは6勝1敗と安定した戦績を誇っている🇺🇸ダニエル・ロドリゲス、元ムエタイ選手でムエタイルールではK-1のゴンナパー・ウィラサクレックをKOしている🇨🇦ハキーム・ダオドゥVS UFCを2度もリリースされて3度目の今回は4勝1敗と好調の🇺🇸ジュリアン・エローサが好カードですが、ボクシングテクニックに定評のある女子バンタム級の🇲🇽アイリーン・アルダナ、一時の好調が嘘のように直近1勝4敗と絶不調の🇧🇷イオン・クデラバの試合もメインカードに控えています。
🏟UFC FIGHT NIGHT(9月17日開催)(日本時間18日より、UFCファイトパスで生中継)🏟
メインイベントは🇺🇸コーリー・サンドハーゲンと🇨🇳ソン・ヤドンのバンタム級トップランカー対決。
共にストライカーでサンドハーゲンは中長距離打撃を得意とするキックボクシングスタイルですが、ヤドンは前回の試合でマルロン・モラエスをKOしており近い距離で相手をKOできる散打ベースのストライカーです。
サンドハーゲンにとって近い距離は割と危険のように思いますが、同時にサンドハーゲンには飛び膝蹴りがあるのでヤドンとしてもリスクが無いわけではありません。
面白い試合になりそうです。
セミは元GLORYのキックボクサーで UFCでも成功を納めランカー入りを果たした🇬🇪ギガ・チカゼと、ナイジェリア出身でストライキングはダッチキックボクシングスタイル系の🇳🇬ソディック・ユサフの対戦。
ユサフはグラウンド勝負に打って出なければいけないとは思いますがチカゼ相手にTDを決められるかと言えば厳しそうです。
他には未知なる身体能力を秘めた🇳🇬チディ・ニョクアンジー、ウクライナ出身の🇺🇦マリーナ・モロゾ、12勝無敗の23歳🇲🇽ダニエル・ゼルヒューバー、バンタム級のヨエル・ロメロみたいな風貌の🇺🇸トニー・グラベリー、柔術世界王者ホドリゴ・ヴィエイラにMMAの総合力で切り崩し最後は一本勝ちを決めた🇺🇸アンソニー・ヘルナンデスが注目選手です。