UFC267 ヤンVSサンドハーゲン「バンタム級進化の系譜」 | 銀玉戦士のアトリエ

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🏟UFCバンタム級暫定王座決定戦(2021年10月 UFC267)🏟

⚪👑️🇷🇺ピョートル・ヤンVSコーリー・サンドハーゲン🇺🇸⚫️(5R判定)

 

 

10月30日に開催されたUFC267、翌週11月6日開催のUFC268、更に翌週の11月13日開催のUFCファイトナイトと、3週連続に渡って開催されたUFC興行はまさに歴史に残る試合の連続で、改めて世界最高峰のMMA団体UFCの底力を感じさせられた3週間だった。

 

アブダビで開催されロシア勢が多数出場したUFC267はカムザット・チマエフ、イスラム・マカチェフの圧倒的な強さに震え、メインイベントのライトヘビー級タイトルマッチでは42歳のグローバー・テイシェイラが涙の王座戴冠劇を果たした。

ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで開催されたUFC268では、ジャスティン・ゲイジーとマイケル・チャンドラーがファンの期待に応えるような激闘を見せ、ウスマンVSコヴィントンとナマユナスVSウェイリーのリマッチとなった二大タイトルマッチでは、前回破れた挑戦者側が進化した部分を披露して王者に肉薄し、王者も更なる引き出しを披露して挑戦者を退ける熱戦となった。

その翌週にUFC APEXで行われたファイトナイト大会のメインイベントでは、マックス・ホロウェイとヤイール・ロドリゲスが激突。デイナ・ホワイトが「これまでで最高の試合の一つだった」と絶賛した激闘を、ホロウェイが判定で制した。

 

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3週連続開催のUFC興行、今回はUFC267から、バンタム級暫定タイトルマッチ、ピョートル・ヤンVSコーリー・サンドハーゲンをピックアップしたい。

 

 

1R立ち上がり、左回り主体にサークリングしていくサンドハーゲン。

ヤンはアップライトの構えから前手を伸ばし、後手のグローブは顎の下に置いた構えでプレッシャーを掛けながらサンドハーゲンの動きをじっくりと観察し、相手のサークリングの逆方向にロー、ミドルをヒットさせる。

素早い動きに加え、スイッチ+コンビネーションでヤンを撹乱しようとするサンドハーゲン。コンビネーションを打つと上段に高くクローズド気味にガードを固めるヤンに対し、左ボディや右ストレート、飛び膝蹴りをヒットさせる。

 

2R、ヤンの強烈な右ミドルやローでサンドハーゲンのボディや脚が早くも赤く腫れ上がる。互いにコンビネーションをスウェーバックでかわす高度な打撃戦が見られる中、サンドハーゲンがこの流れでタックルを仕掛ける。

ヤンはこれをスプロールでディフェンスし、パウンドを当てていく。

 

3R、ここからヤンが徐々に巧みなディフェンスでサンドハーゲンの攻撃を見切り始めてゆく。

そしてサウスポーに構えたヤンが左ボディからバックハンドブロー、左フックへと繋げるコンビネーションでダウンを奪う。

ヤンはそのままグラウンドでパウンドを打ち込むも、実は柔術も得意なサンドハーゲンが潜って足関節を狙いに行く。ヤンがギロチンからバックを狙いに行けば、サンドハーゲンもスイープで上を取るなど、両者はスタンドの攻防に引けを取らずグラウンドのスクランブルも高度な攻防をやってのける。

 

4R、ヤンが更にプレッシャーを強める。サンドハーゲンも下がりながら攻撃を当ててゆくが、一発一発の攻撃の重さはやはりヤンのほうが上か。

サンドハーゲンはこの劣勢を打破しようと再度タックルを仕掛け成功するも、ヤンは足関節を取る動きを見せて、その隙に立ち上がりスタンドの状態へと戻る。

ヤンはスイッチを交えた左右のパンチ、上下の打ち分けも巧みだ。

両者共に最後まで運動量が落ちずに打っては返すの攻防をやってのけていたのは流石だったが、5Rにヤンが左ハイキック、バックスピンキックと強力な打撃をヒットさせて印象を残し、判定勝利でUFCバンタム級暫定王者となった。

 

⭐️ピョートル・ヤンVSコーリー・サンドハーゲン ハイライト動画🔜https://youtu.be/8pHuww5m3PE ⭐️

 

ヤンのこの試合の勝因は二つある。

一つは、ヤンの巧みなハンドリングディフェンスだ。

ヤンはプレッシャーを掛けていきながら、ブロッキング、ヘッドスリップ、バックステップと多用な手段を組み合わせて巧みにディフェンスし、サンドハーゲンが前手を出すタイミングでヤンも前手(後手)を伸ばしてプッシングや相手の腕を掴んで押し返し、その隙間にロングアッパーやフック、スイッチコンビネーションを的確にヒットさせていった。

どっしりとアップライトに構えてハンドリングディフェンスするヤンに対し、オープンガード気味のサンドハーゲンは左右に動きスイッチしながら攻撃を繰り出さなければならないため、ハンドリングで押し合う攻防と言えども足が揃ってしまって支持基底面が保ちずらいサンドハーゲンは自然と押し合いに負けて下がらざるを得ない場面が多くなり、リーチで勝っていても攻撃が届かない、当てても打ち抜けないシーンが目立ってくる。

この辺りは中盤~後半ラウンドに掛けての両者の一発一発の攻撃の重さにも如実に現れている。

 

二つ目は、サンドハーゲンのスピードやレベルチェンジに対応しきったヤンの集中力の高さだ。

サンドハーゲンほどスイッチ、フットワークを巧みに使い、左右に蹴り分けてパンチもノーモーションで飛んでくるような選手だと並のファイターならば逆に翻弄されてしまうのだが、ヤンはサンドハーゲンの速い動きも睨み付けながらじっくりと追って観察し、相手の動きを尻上がりにインプットして攻勢を強めていった。

打撃だけでは手詰まりになると踏んだサンドハーゲンがレベルチェンジでタックルを仕掛けたのは見事だったが、その後に足関節を仕掛けてエスケープでスタンドに戻ったりと、対処も的確だった。

 

 

まさしくこの試合は2016年1月に行われたUFCバンタム級タイトルマッチ、ドミニク・クルーズVSTJ・ディラショーの進化版とも言うべき試合だった。

 

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今年3月に行われたUFCバンタム級タイトルマッチでアルジャメイン・スターリングに反則の四点膝を喰らわせて王座を明け渡してしまったピョートル・ヤン。

本来ならばこのUFC267で現王者スターリングとのリマッチが予定されていたのだが、スターリングの負傷欠場により、サンドハーゲンとの暫定タイトルマッチに変更された。

 

結果的に反則負けとなってしまったスターリング戦も、中盤以降はスターリングの攻撃とタックルを完全に見切った上で試合を支配しており、あの反則膝は倒し切れないイライラが募ってカッとなってやってしまったものだと思われる。

 

ただ、スターリングも1Rに手数を出し過ぎたが故に失速してしまった部分もあるので、リマッチに向けて戦術とペース配分をいかに修整していくかが「リベンジ」の鍵となる。

 

両者の因縁渦巻く王座統一戦が待ちきれない。