ONE championship グレゴリアンVSサワー「K-1MAXの卒業式」 | 銀玉戦士のアトリエ

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🏟ONE championshipフェザー級キックボクシンググランプリ(2021年10月 ONE first strike)🏟

⚪️🇧🇪マラット・グレゴリアンVSアンディ・サワー🇳🇱⚫️(2RTKO勝利)

 

 

ONE championshipとしては初の立ち技オンリー興行となった「ONE first strike」。

全6試合中5試合が、K-1MAXのリミット階級である70kg級の試合が組まれており、フェザー級(70kg級)キックボクシンググランプリ準々決勝4試合と、メインイベントはK-1MAX2009、2010世界王者ジョルジオ・ペトロシアンと、同じくK-1MAXで2度世界王者となったブアカーオの弟子、スーパーボン・バンチャメックによるフェザー級キックボクシングタイトルマッチが行われた。

 

グランプリにはマラット・グレゴリアン、チンギス・アラゾフと二人の新生K-1王者が出場し、シッティチャイ、ダビット・キリアとGLORY王者も出場。70kg級の世界トップクラスのキックボクサー達を招聘した豪華な布陣は、さながら2021年に蘇ったK-1 WORLD MAX 世界一決定トーナメントと呼ぶに相応しい華やかさがあった。

 

メインイベントのスーパーボンVSペトロシアンは、スーパーボンのハイキックの一撃でペトロシアンがKO負けを喫するという衝撃的な結末に終わった。

 

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K-1MAX消滅以降も、キックボクシング70kg級において世界トップファイターとして君臨し、敗北も2013年のアンディ・リスティ戦でKO負けを喫したこの1試合のみという驚異的な戦績を誇っていたペトロシアンの8年振りの敗北は、時代の移り変わりを象徴するシーンだったと言えよう。

 

そして、K-1MAXで2度世界王者に戴冠し、魔裟斗の現役引退試合の相手を務めたアンディ・サワーも、この大会を最後に現役生活に幕を閉じた。

 

個人的にK-1MAXファイターの中でアンディ・サワーはペトロシアンの次に思い入れのあった選手だ。自分が格闘技興行を初めて生観戦したのが2007年に行われたK-1MAX世界一決定トーナメントで、決勝戦の舞台でサワーは魔裟斗を破り優勝を果たした。

流れるような対角線コンビネーションの美しさはまさしくK-1MAXにおけるアーネスト・ホーストであり、2006年のヴァージル・カラコダ戦は名勝負として語り継がれる一戦だ。

アンチ魔裟斗ブログ(笑)を運営していた時、魔裟斗は引退試合でブザマに負けて貰いたいとサワーに一方的に肩入れして応援してたのも良い思い出だ(笑)。

 

そんなアンディ・サワーもK-1MAX以降、年齢的な衰えもありキャリアも下り坂に差し掛かっていた。

一時はMMA転向を表明しRIZINに出場するも、結果が出せずONEに移籍、近年は黒星が多くなっていた。

だが、ネームバリューと過去の圧倒的な実績を買われONEフェザー級キックボクシンググランプリにエントリー。「トーナメントで負けたら現役を引退する」と不退転の決意で臨むサワーの緒戦の相手は、新生K-1の70kg級初代王者マラット・グレゴリアンだ。

 

グレゴリアンは30歳で今がピークの時。一方のサワーは衰えが見られる38歳。

やはり戦前の試合予想でもグレゴリアン圧倒的優位は揺るぎなく、この試合に負けたら引退すると決意するサワーの試合前のプロモーション映像からは既に悲壮感が漂っていた。もう、表情から疲れ切っているしグッと老けた印象だ。

 

⭐️ マラット・グレゴリアンVSアンディ・サワー 試合動画🔜 https://youtu.be/VYBCZDf3QAc ⭐️

 

ブロックを固めて対角線コンビネーションを得意とするダッチムエタイスタイルの両者。

しかし、体幹の強さと攻撃の質量ではグレゴリアンのほうが上だ。

1R早々、サワーの攻撃をブロックしながら難無く押し返して下がらせ、返しの左フックでダウンを奪ったグレゴリアン。

圧力を掛けてケージ際へと追い詰めるグレゴリアンの容赦無い対角線コンビネーションが火を吹くも、サワーも攻撃の隙間を見計らい、かつて魔裟斗や小比類巻らを苦しめた黄金の左ボディ、ローキックと打ち返す。サワーも全盛期とまでは行かないまでも今回の試合は攻撃にキレとスピードがあったように見える。

 

しかしガードを固めるサワーに、グレゴリアンのコンビネーションアッパーが顎を跳ね上げる。

グレゴリアンは、コンビネーションを打っている最中でも冷静に相手の動きを観察し、それに合わせて臨機応変にKOへと繋がる攻撃をチョイスする、頭脳的なファイトスタイルを持ち合わせている選手だ。

打ち合いの流れの中でも的確にカウンターを当てる事も出来る。

 

⭐️関連記事「マラット・グレゴリアン   対角線コンビネーションの極み」🔜https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12260695390.html ⭐️

 

そして2R、グレゴリアンのカウンタージャブによりサワーがダウン。ダウンの瞬間足を負傷したように見えたサワーは立ち上がる事が出来ず、TKO負けが宣告される。

サワーの足腰が長年の激闘の代償でボロボロになっていたのを象徴するような敗北のシーンだった。この瞬間、アンディ・サワーは20年以上の永きに渡る現役生活に幕を閉じた。

 

本来ならば、アンディ・サワーという選手はK-1のリングで引退すべき選手のはずだっただろう。

しかしながら旧K-1は消滅、旧K-1と異なり日本人キックボクサーの育成をメインコンセプトとする新生K-1の舞台で、サワーが呼ばれる事は無かった。

 

新旧における運営コンセプトの違いから、K-1界隈で歴史の分断が進む中、旧K-1MAX王者であるアンディ・サワーの引退、ペトロシアンの敗退という世代交代を見届けたONE first strikeという興行は、さながらK-1 WORLD MAXの卒業式のような興行だった。