コナー・マクレガー キャリア最終章の戦いの幕開け。 | 銀玉戦士のアトリエ

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🏟UFC264(7月10日開催)(日本時間11日11時より、WOWOW、UFCファイトパスで生中継)🏟

 

 

UFCにおいて、7月のPPV大会では恒例となっているインターナショナルファイトウィーク。

様々なファンイベント等が行われるお祭り的な大会のメインイベントを飾るのは、今年1月に行われたダスティン・ポイエーとコナー・マクレガーによるダイレクトリマッチです。

 

今大会はPPV大会ではありますが、メインイベントのポイエーVSマクレガーはタイトルマッチではありません。

更にポイエーは1月にマクレガーに勝利したので、通常であるならばポイエーはそのままライト級タイトルマッチの挑戦権が得られたわけですが、マクレガーとのリマッチのほうがファイトマネーを稼げるという理由で自らこっちを選択したそうです。

 

このイベントがPPV大会として成立しているのも、全てはコナー・マクレガーという、 MMAを代表するスーパースターの存在があってこそなのです。

コナー・マクレガーは、何故世界中のファンを魅了し続けているのか。

彼のUFCデビュー当時からの歩みを振り返りながらそれを探っていきましょう。

ちなみにこの記事はマクレガー贔屓全開で行きますので、ポイエーファンの方はご容赦を。

 

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ヨーロッパを拠点に活動するMMA団体、Cage Warriorsでライト級とフェザー級の2階級制覇を果たしたコナー・マクレガーは、UFC代表のデイナ・ホワイトに見初められて2013年にUFCデビュー。

デビュー戦でマーカス・ブリメージを1R、67秒で沈め、鮮烈なUFCデビューを飾ります。

 

自分はUFCデビュー時からコナー・マクレガーを追い掛けていたわけではありません。

しかしながら、デビュー翌年の2014年辺りにUFCのプロモーション番組で彼が語っていた「俺は全てを見通せる」と語っていた彼の姿が、エネルギッシュな眼差しに溢れていた事は良く覚えています。

並の人間がそんな事を言っていたらマルチ商法のように聞こえてくるような発言ではありますが、この映像を観た時に自分は直感的に彼の言葉がある種の確信を持っているかのように聞こえてきたのです。

自分にとってこんな経験は、格闘技を20年近く見続けてきた中では、K-1MAXデビュー当時にTBSの煽りVでビッグマウスぶりを発揮していた魔裟斗と、コナー・マクレガーの2選手だけだったりします。

 

マクレガーはその宣言通り、UFCで連勝を積み重ね、スター街道を突き進みます。

2015年1月にボストンのTDガーデンで行われたデニス・シヴァー戦は、まさしく彼の伝説の始まりとも呼べる試合でした。

ボストンのスタジアムはアイルランド系アメリカ人のファンによって満席で埋め尽くされ、アイルランドカラーの緑一色の電飾で照らされた大歓声のスタジアムの花道から入場してきたコナー・マクレガーは、凄まじいオーラを身に纏い会場の空気を完全に自分のものに支配していました。

試合は完全にマクレガーのワンサイドゲーム、2Rに得意の左ストレートでダウンを奪ったマクレガーは、そのままパウンド連打でシヴァーを仕留め、試合後に会場に居た当時のフェザー級王者ジョゼ・アルドに挑戦状を叩き付けます。

 

https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-11981408698.html

 

同年7月のUFC189で行われたチャド・メンデスとのUFCフェザー級暫定王者決定戦も、 MMAの歴史に残る思い出深い大会でした。

セミで行われたロビー・ローラーVSローリー・マクドナルドによるUFCウェルター級タイトルマッチの壮絶な激闘もさる事ながら、メインイベントのマクレガーVSメンデスもこれまた激しい試合となり、メンデスのグラウンド&パウンドとギロチンチョークによってマクレガーは大ピンチに陥るも、窮地でグラウンドエスケープに成功したマクレガーは攻め疲れたメンデスにスタンド打撃で畳み掛け、左ストレートでダウンを奪い逆転のTKO勝利を納めるという劇的な結末で、UFCフェザー級暫定王者のベルトを巻きました。

 

自分はこの当時メンタル的に落ち込んでいた時期でしたが、この大会のメインとセミの試合の、文字通りに自分の命を削り合い、最後の最後まで勝利を諦めないファイター達の姿に、人間の生命力の強さというものを感じさせられて、心が救われたのを思い出します。

 

この試合でフェザー級暫定王者になったマクレガーは、2015年12月に当時のフェザー級王者だったジョゼ・アルドとの王座統一戦に挑みます。

当時のアルドはUFCフェザー級王者として通算7度の防衛記録を誇り、まさに絶対王者という存在でしたが、初回からいきなりマクレガーのカウンター左ストレートがアルドの顎を打ち抜いて、僅か1R13秒という短い時間でアルド絶対政権の終焉のトリガーを引き、マクレガーは悲願のUFCフェザー級正規王者となったのです。

 

https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12107279103.html

 

勢いに乗るマクレガーは、UFC史上初となる2階級同時制覇を目論むと、当時のライト級王者ハファエル・ドスアンジョスとのチャンプ・チャンプ対決に挑みますが、ドスアンジョスの欠場によりライト級タイトルマッチが消滅、急遽代役として名乗り出たネイト・ディアスと、2016年3月にフェザー級よりも2階級上のウェルター級契約でのワンマッチに挑みます。

ネイトが本来のライト級に体重を落とし切れなかったとはいえ、通常の契約体重よりも11kg重いウェルター級で試合をするというのは、階級制が敷かれた現在のMMAにおいては無謀な挑戦と言えます。

しかしながら、いつ、誰とでも戦ってやるというスタンスのマクレガーは、この試合を引き受けるのです。

 

試合は序盤からマクレガーがハイペースに飛ばしていきますが、時間が経過するにつれて体格差の不利が如実に現れてきたのか、ネイトのパンチを効かされてしまい、最後は不用意にタックルへ行ったところへギロチンチョークの餌食となり、マクレガーは無念の一本負けを喫してしまいました。

 

UFCでは初めてとなる敗戦を喫し、リベンジに燃えるマクレガーは同年8月にネイト・ディアスと再戦。

ライト級ではなく、マクレガーにとって不利なウェルター級契約でサインしたのも、フェザー級現役王者として「前回の自分を超えて、そして勝つ」という強い思いがあったのでしょう。

試合はUFC史上最高の激闘とも言える内容で両者は死力を尽くして5Rを戦い抜き、マクレガーが判定で勝利し見事に前回のリベンジを果たしました。

 

そして、2016年11月にニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンで開催されたUFC205でマクレガーはライト級タイトルマッチに挑戦、当時の王者エディ・アルバレスを2RTKOで下し、UFC史上初となるライト級とフェザー級の2つのベルトを所持する2階級同時制覇を達成したのです。

 

https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12219186421.html

 

型破りな言動でライバルを煙に巻き、時に無謀とも言える挑戦でファンをハラハラさせながらも、世界最高峰の舞台であるUFCのメインイベントで毎回毎回「記憶」に残る試合をやってのけて観客を熱狂させる。

2015年と2016年の2年間におけるマクレガーの活躍は、彼をMMA史上最高のスーパースターの地位へと大きく押し上げ、UFCやMMAという枠を超えて世界のスポーツシーンにおけるアイコンへと、影響力を強めていったのです。

 

2017年8月にはフロイド・メイウェザーとのボクシングマッチが実現。

ボクシング史上最高のPFPとの呼び声も高いメイウェザーに対し、ボクシングルールで挑むという無謀な挑戦ではありましたが、チャンスは限り無く少ないながらもそれでもマクレガーならやってくれるかもしれない、という期待をファンに抱かせるだけの何かが、その当時のマクレガーにはありました。

試合は10RTKOでメイウェザーが勝利し、マクレガーはメイウェザーのプロボクシングキャリアに土を付ける事は出来ませんでしたが、あのメイウェザーに対し序盤ラウンドでは持ち前のカウンターセンスの良さを発揮できていた事、初めてのボクシングルールながらも10Rまで戦えた事が評価され、結果としてマクレガーはこの試合で多額のPPV収入を得る事が出来たのです。

 

 

MMAという世界で、地位も、名誉も、お金も、欲しいものは全て自分の意のままに手中に収めてきたコナー・マクレガー。

しかしながら富に溺れてしまうと、人は傲慢になり足元を掬われるというのは過去の歴史の中で何度も証明されています。

ここまで、飛ぶ鳥を落とす勢いでスター街道を駆け上がってきたマクレガーでしたが、彼の招いた傲慢さが最悪の形で現れた事件が起こってしまいます。

そう、2018年4月に起こった、マクレガー一派による選手バス襲撃事件です。

 

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きっかけは、マクレガーのチームメイトであるアーテム・ロボフが、ハビブ・ヌルマゴメドフと口論になり、ハビブがロボフに手を出した事で、マクレガーとチームメイトがその報復措置として、試合をする選手が搭乗している移動バスに台車を投げ付け、窓ガラスを破壊したのです。

その移動バスにはハビブは搭乗していませんでしたが、複数の選手が軽傷を負って試合が出来なくなり、試合3日前の最も減量が苦しい時期であるにも関わらずこのような事件が起こってしまい、被害に遭った選手達の心情は想像を絶するものがあったでしょう。

 

マクレガーとしてはWWEのバス襲撃事件の真似事をしたかったのでしょうが、パフォーマンスにしては完全に一線を越えた犯罪をやらかしてしまいました。

メディアではビッグマウスキャラで通っているマクレガーですが、素は真面目な性格でジムでは謙虚に練習していたと聞きます。

しかしながら、スーパースターとしての階段を駆け上がって周囲に煽てられていくうちに、現実の自分と作られたキャラクターの見境が付かなくなり、このような凶行に到ってしまったのかもしれません。

本来彼を止めるべきだったチームメイト達もマクレガーと一緒になって犯行に及んでいたというのだから、所属するジムであるSBGアイルランドにおいてマクレガーは裸の王様になってしまい、誰も彼に意見する者は居なかったのでしょう。

 

この因縁物語を大胆にもプロモーションにして2018年10月に開催されたUFC229で、当時ライト級王者だったハビブ・ヌルマゴメドフにマクレガーは挑戦者として挑む事になりますが、試合前にもハビブを口汚く罵っていたマクレガーの精神状態から察するに、とても試合に挑むようなメンタルなど作れず、結果はハビブが4R一本勝ちを納め、マクレガーの愚かな報復のリベンジは失敗に終わりました。

 

 

UFCのトップの座から引き摺り降ろされたマクレガーは、その後も私生活でのトラブル、度重なる引退宣言(数日で撤回)と、迷走を続けます。

まるで往年のロックスターの如く、自ら招いた種とはいえ栄光と破滅の落差の激しい格闘家人生です。

アンチは勿論の事、これまでマクレガーを応援してきたファンですらも、トラブルメーカーの口だけ番長と化してしまったマクレガーに痺れを切らす人も出てきます。

ただその一方で、彼は悩み苦しみながらも、ファイターとして再び這い上がって栄光を掴み取ってやるという意志の狭間の中で、オクタゴンの舞台に足を踏み入れようとしています。

もう彼はMMAの世界において充分な地位と名声と金銭を手にしましたし、オリジナルのウイスキーブランドをはじめ副業でも食いっぱぐれはありません。

にも関わらず、彼がオクタゴンで戦う事を決意させたのは、彼の事を未だに根強く応援してくれるファンの応援があるからなのです。

 

UFCデビューから、2016年にUFC2階級同時制覇を達成するまでの3年間、「ミスティック・マック」と呼ばれたあの数々の奇跡と、ビッグマウスから発せられる夢物語を現実のものに変えていく彼の勇姿が、ファンの脳裏に鮮明に記憶に刻まれているからなのです。

そんなスーパースターのコナー・マクレガーだからこそ、あの悪名高きバスアタックの事件でさえも落とし前を付ける程の復活劇を、ファンは待ち望んでいるのです。

結局のところあの事件も勝手に都合よく解釈してしまえば「ファンに向けたショービジネス的なパフォーマンスが悪い方向に行き過ぎてしまった」わけですが、彼はファンが望む「コナー・マクレガー」である事を証明し続けるために、自らの人生の物語をオクタゴンの中に全て持ち込んで戦いに挑むのです。

 

プライベートのマクレガーは非常に家族想いで、チャリティー活動などの社会支援も積極的に行っていると聞きます。

 

バスアタックをやらかした彼の真意は未だに不明ではありますが、恐らく彼が本当に現役を引退した後に「ケーフェイ」が明かされるのでしょう。

 

因縁のハビブは無敗のレコードで現役を引退してしまいましたが、確率は低いにせよもしハビブが1試合だけ現役復帰を決意するのであれば、それはマクレガー絡みの試合になるだろうと断言できます。

 

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さて、その前にマクレガーはダスティン・ポイエーとのトリロジー3部作の最終戦に挑むわけですが、ポイエーのカーフキックの前に沈んだ前回の試合の敗因はズバリ「マニー・パッキャオとのボクシングマッチに目が行き過ぎていて、ボクシングにスタイルが傾倒し過ぎていたから」です。要するに目の前のダスティン・ポイエーという相手を、 MMAを舐めて掛かっていたわけです。

 

https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12652690773.html

 

1月のポイエー戦のKO負けによって、ある意味自身の「等身大の評価」を喉元に突き付けられたコナー・マクレガー。

2020年の世界のスポーツアスリート長者番付では1位を獲得しましたが、それとは裏腹に、今の彼は「MMA史上最強」と呼べる存在では無いし、トップファイターとしては、再びタイトル戦線に絡んでいけるか否かの崖っぷちの位置に居ます。

2016年にUFCライト級王者に戴冠し、一度も防衛戦を行わないまま2018年に王座を剥奪されてから既に3年。

その3年の間に行った試合は僅か3試合で、戦績は1勝2敗。

現在彼はライト級のランキングでは5位という位置で、パウンド・フォー・パウンドランキングではランク外となっています。

過去の圧倒的な実績や、ファイターとしての溢れ出る魅力、セルフプロデュース術の巧さが、辛うじて彼をMMA界のスーパースターとして踏みとどまらせているような状態です。

 

窮地に追い込まれたマクレガーは、前回の試合が終わった後、あまり日を置かずに直ぐに練習に取り掛かり、ずっと肉体をキープしている写真がインスタグラムでアップロードされていました。

 

この肉体美です。リベンジに燃える彼の本気度の高さは一目瞭然です。

あとは「MMAファイターとして」いかに自分のスタイルを修正して「混ぜる」攻防を試合の中で披露する事が出来るのか。

マクレガーがUFC2階級同時制覇を達成してから早や5年。この間に世界のMMAシーンは凄まじく進化しており、マクレガーですら時代に取り残されてしまっているのではないか、という懸念もあるようですが、一方で、マクレガー独自の空手スタイルや世間から過小評価されている柔術テクニック、そしてメイウェザー戦にまで漕ぎ着けたトップクラスのボクシングテクニック等「コナー・マクレガー」にしか出来ないような技術、そして成し得なかった人生経験は数多くあるはずなのです。

 

永遠の破天荒なヤングボーイのように見られていたコナー・マクレガーも、今月で既にもう33歳を迎えます。

ここからは「年齢」との戦いです。

格闘家としてトップクラスのパフォーマンスを披露出来るのも、あと2、3年という所でしょう。

 

時間はあまり残されていない。

再びあの頂点まで駆け上がり、新たなノートリアス伝説を築き上げるために。

コナー・マクレガー、人生を賭けたキャリア最終章の始まりの戦いが幕を開けようとしています。