UFC254 ヌルマゴメドフVSゲイジー 展望 | 銀玉戦士のアトリエ

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🏟UFC254(10月24日開催)(日本時間25日早朝3時より、WOWOWオンデマンド、UFCファイトパスで生中継)🏟

 

 

👑UFCライト級(71kg)王座統一戦(5分5R)⭐️

👑🇷🇺ハビブ・ヌルマゴメドフ(王者)VS👑🇺🇸ジャスティン・ゲイジー(暫定王者)

 

 

👑🇷🇺ハビブ・ヌルマゴメドフ🇷🇺

🔆現UFCライト級王者(MMA28勝0敗)🔆

🔆身長178cm・リーチ178cm・オーソドックス(右構え)🔅

🔆ファイトスタイル・・・コンバットサンボ+レスリング🔆

 

 

 

👑🇺🇸ジャスティン・ゲイジー🇺🇸

🔆UFCライト級暫定王者(MMA22勝2敗)🔆

🔆身長180cm・リーチ178cm・オーソドックス(右構え)

🔆ファイトスタイル・・・レスリング+キックボクシング🔆

 

 

本来ならば今年4月にトニー・ファーガソンを挑戦者に迎えての防衛戦を行うはずだったが、新型コロナウイルスの影響で欠場を余儀なくされてしまったUFCライト級正規王者ハビブ・ヌルマゴメドフと、5月にトニー・ファーガソンとライト級暫定王座決定戦を行い、5RTKOで勝利した暫定王者ジャスティン・ゲイジーとの王座統一戦。

なお、この試合が開催されるUFC254は会場が設置されたアブダビ・UFCファイトアイランドの現地時間プライムタイムに合わせて行われるため、日本時間ではメインカードのスタートは早朝3時という時間帯となる。

放送時間帯の変更により、WOWOWでの生中継はWOWOWオンデマンドのみでの中継となるため、注意が必要である。

 

 

ロシア、ダゲスタン共和国出身の現UFCライト級正規王者ハビブ・ヌルマゴメドフは、武道家である父アブドゥルマナプの指導の元、幼少期から厳しい鍛錬を積み、レスリングとコンバットサンボをベースにMMAでも破竹の快進撃を続け、世界最高峰のUFCの頂点に立った。

他の追随を許さない桁外れのテイクダウン能力と、一度相手をグラウンドの展開に引きずり込んだら最後、鉄壁のポジショニングキープと無慈悲な鋼鉄のパウンドの嵐で試合を一方的に支配し、相手の心までも折ってギブアップさせる圧倒的なファイトスタイルは、対戦相手のみならず観る者すらも畏怖を与える、MMA史上最恐のグラップラーである。

 

🇷🇺🐻ハビブ・ヌルマゴメドフ紹介記事🔜https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12523017732.html 

 

対する暫定王者ジャスティン・ゲイジーは、元々はアメリカンレスリングの大学選手権でデビジョン1に選出される程のレスリングエリートであったが、MMAに転向するとレスリングで培われたフィジカルをベースとした強烈な打撃を武器に、倒し屋として名を馳せて数々の名勝負を繰り広げ知名度を上げていく。

ファイターとしても戦う毎に技術が洗練されていって実力と結果が付いていき、世界最高峰のUFCでも暫定王者のベルトを手に入れた。

打たれても打ち返す気持ちのこもったタフファイトで、観る者を魅了する派手な試合を繰り広げてきたが、近年ではステップバックとディフェンス、カウンターの技術を磨き上げ、最小限の被弾と攻撃で相手をノックアウトするインテリジェンスなファイトスタイルへとシフトチェンジしつつある。

 

🇺🇸✨ジャスティン・ゲイジー紹介記事🔜https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12596785222.html 

 

 

UFCのパウンド・フォー・パウンドランキングでも現在2位に付けている、無敗の王者ハビブ・ヌルマゴメドフ。

グラウンドの展開で絶対的な強さを誇るヌルマゴメドフに早い時間帯でテイクダウンを奪われたら最後、ほとんどの選手がその蟻地獄から抜け出せずに敗れるというパターンが多い。

ヌルマゴメドフの対戦相手としてはいかにテイクダウンされず、グラウンドに居る時間を短くしていけるかに心血を注いでいくしかないのだが、それをさせようとしないヌルマゴメドフのもう一つの隠れたスキルがある。

 

それが、ヌルマゴメドフのディフェンス能力だ。

ヌルマゴメドフはUFCにおけるストライキング・ディフェンスのデータが70%という高い数字が示す通り、何気に中間距離で相手の打撃をハイガードやバックステップといったディフェンスで防ぐのが得意な選手でもある。

この辺りが「打撃が不得意なグラップラー」とは一線を画す部分であり、相手選手からしてみればヌルマゴメドフのスクランブルに警戒するあまり、近い距離で打撃が打てなくなるというのも作用して、スタンドの展開であまりダメージを受ける事もなくテイクダウンからグラウンドの展開へと移行する事ができる。

 

テイクダウンへと移行するバリエーションも、タックル一つ取っても相手選手の打撃を研究した上でのカウンタータックルとして機能しているので、非常に成功率が高い。

2018年に行われたコナー・マクレガー戦でも、初回にマクレガーがヌルマゴメドフのタックルへのカウンターの膝蹴り(テンカオ)を試みたところ、ヌルマゴメドフがタックルの進行の軌道を微妙に変えて膝を避けつつの低空タックルを仕掛けたり、マクレガー必殺の左ストレートをヘッドスリップで避けつつのテイクダウンに成功している。

 

 

そんな絶対王者ヌルマゴメドフと対峙する暫定王者ジャスティン・ゲイジーは、ヌルマゴメドフのMMAスタイルを攻略できる可能性を秘めた数少ないトップファイターの一人であると自分は見ている。

ゲイジーはこれまで、スタンド主体の攻防で打たれても打ち返していくアグレッシブかつ気の強さを感じさせるファイトスタイルで数々の名勝負を生み出してきたわけだが、元々は大学レスリングのデビジョン1に選出される程の実力を持っているエリートレスラーであり、打撃にも転用されているレスリングで培われたフィジカルやカーディオ、体幹の強さといった要素に加え、場面は少ないものの相手のタックルに対するディフェンスの対処も非常に速い。

しかもゲイジーは今回のヌルマゴメドフ戦に向けて、オリンピックに出場するようなレベルのレスリング選手と練習を積んでいる。

ヌルマゴメドフのレスリングフィジカルと対峙し、近い距離からのタックルにも素早く対処できる技量を持っている上に、カウンタースキル、接近戦で猛威を振るうクリンチ打撃、そして何よりもヌルマゴメドフの寝技にも臆する事が無いであろうゲイジーのメンタルの強さがあれば、立ち技主体のスタイルのMMAファイターでは成し得なかった近距離打撃を放って一発で相手をKOする可能性も、充分に秘めている。

 

中、遠距離のディフェンス能力が高いヌルマゴメドフとはいえ、一般的な傾向として接近戦になればなるほど相手の打撃に反応しずらくなってくる。

その距離で「倒す」打撃が打てる技量とパワー、そしてメンタルを持っている、それがジャスティン・ゲイジーという選手の持っている最大のポテンシャルだ。

 

ただしゲイジーが注意すべきなのは、初期の頃と比較するとファイトスタイルが洗練されてきているとはいえ、フォロースルーを入れてパンチやキックを打ち込むので、デメリットとして振りがやや大きいという点だ。

前回のトニー・ファーガソン戦では、的中率が70%を越える精度の高い多彩なカウンターでファーガソンを攻略したが、一方でパンチが大振りゆえに相手に避けられた時の打ち終わりに身体のバランスを崩す場面が幾つか見られていた。

 

ヌルマゴメドフのテイクダウン能力のもう一つの特色としては、相手に切られそうになってもそこからドライブして強引にケージ際まで押し込んでいって倒していく粘り強さとしつこさにある。

レスリングをバックボーンに持ち、腰も重いゲイジーとはいえ、身体の重心や体幹のバランスが崩れた状態でヌルマゴメドフに押し込まれてしまうと、そのままテイクダウンで倒される危険性が高い。

また、クリンチ際の膝蹴りで片足が上がる時も下半身の踏ん張りが弱くなって、払い腰といった投げ技によるテイクダウンを奪われる可能性もある。

ゲイジーとしては、タックルにも同時に対処できるどっしりとした構えから繰り出される隙の少ない強烈なショートの打撃、特にエルボーやショートアッパーといった攻撃に活路を見い出したいところだ。

 

それと、ゲイジーはパンチだけでなく、ローキックの威力にも定評があり、UFCデビュー以前で主戦場にしていたWSOFという団体では、MMAファイターでは多用する選手が少ない、オランダ式キックボクシングの打ち下ろしのローキックを脚に効かせてダウンを奪い、KOに繋げた試合も幾つか見せている。

ローキックは単純に脚に効かせて相手がパンチを打つ時の踏ん張りを弱体化するだけでなく、同時に相手をテイクダウンさせるための脚の踏ん張りも弱体化させる事が出来るため、まずはスタンドで相手をテイクダウンする事が生命線であるヌルマゴメドフにとって、非常に効果的な攻撃であると言えよう。

これも中距離で打つと相手にキャッチされたり、カウンターを打たれる危険性があるので、あえて接近戦でクリンチアッパーの要領で片手で相手の頭を押さえながら、往年のK-1ファイター、アーネスト・ホーストのような強烈なローキックを効かせて、ヌルマゴメドフをじわじわと追い込んでいきたい。

 

両者レスリングをベースに持っている選手だが、バックボーンを全面に活用するスタイルのヌルマゴメドフに対し、ゲイジーはそれとは真逆の打撃戦を好むスタイルだ。

ゆえに、ゲイジーがグラウンドの展開になった時にどうなるかは未知数の部分が多く、一般的に考えるとグラウンドの展開になったらヌルマゴメドフ有利の展開になる可能性は高い。

だが、ゲイジーもWSOF時代ではグラウンドの展開になった時にスタンド打撃と同様に強烈なパウンドを当てているシーンを見せており、ゲイジーがグラウンドで上を取って、体重を乗せて打ち下ろすパウンドでKOするという展開もありうるだろう。

 

となると、サブミッションからの仕掛けも認められているコンバットサンボで世界王者になっている王者ヌルマゴメドフとしては、レスリングベースのゲイジーの穴を突くかもしれないであろう、ラバーガードからの三角締めといった、グラウンドで下になった状態でも仕掛けられるサブミッションを狙ってみるのもいいだろう。

ゲイジーがグラウンドの状態から立ち上がったところへ相手の足を取って仕掛けるヒールフックや、上からパウンドを打ち込む腕を取っての腕十字といった技で、フィジカルで勝るかもしれないゲイジーに対して技ありの一本を決めたいところだ。

 

両選手共に、これまで戦ってきた相手とは違うスタイルを持った世界トップファイター同士が激突するだけに、互いにこれまでに無い試合展開に持ち込まれた時に意外なスキルを披露するのか、それとも脆さを見せてしまうのか。

両者のメリット=デメリットの領域に踏み込む為の勝負度胸、そしてこれまでの練習で培ってきたMMAの総合力が問われるUFCライト級王座統一戦に期待したい。