ロジェ・ヴァディム監督作品の映画『危険な関係』といえば、日本ではこの曲(邦題は『危険な関係のブルース』)がまずもって想起されるところでしょう。作者はデューク・ジョーダンで、彼は映画のこの曲の演奏シーンにも登場する(ケニー・ドーハム、バルネ・ウィラン、ケニー・クラークらと一緒に)のですが、なぜかサントラに収録されているのはアート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズの演奏。そのため(?)、ジョーダンはしばしばこの曲を自身のリーダー作で取り上げて、自分の作品であることをアピールしています(笑)。その中で日本でとりわけ人気が高いのが Steeple Chase レーベルに吹き込んだ、こちらのピアノトリオによるバージョン。

 

 

映画のトレーラーはこちら。

 

 

この映画は25年ほど前に観て、原作(ラクロ)も既に読んだと思っていたら、未読だったので(ラディゲの『肉体の悪魔』あたりと confuse したのかな?)、この機会に、文庫本で約600ページのボリュームのある「悪徳の書」(笑)を読了したところです。映画では、ジャンヌ・モローが、『死刑台のエレベーター』とは打って変わって、モラルのカケラもない徹底した悪女を演じていてシビレたのですが(同じ悪女でも、『死刑台のエレベーター』では感情移入の余地が大いにあったのに対し、こちらでは全くそれがないところが却って爽快ですらあった)、ありきたりな因果応報的結末には不満が残りました(ただし、この点は概ね原作に従っているのだが)。それにしても、ヴァルモン(ジェラール・フィリップ)の毒牙にかかり、最後は気が触れてしまう悲劇の貞淑な女性マリアンヌを演じるアネット・ヴァディムの美しさには溜息(彼女はこの映画の撮影中にロジェ・ヴァディムと恋に落ちて結婚した。なお、ロジェ・ヴァディムの最初の夫人はブリジット・バルドーで、アネットと離婚した後はカトリーヌ・ドヌーブとつきあって(結婚はしていない)一子を儲け、次いでジェーン・フォンダを三番目の妻とする・・・って、マジでぶん殴りたくなるんだけど(笑)。ちなみに、彼がジェーン・フォンダ主演で制作した映画が『バーバレラ』で、イギリスのバンド「デュラン・デュラン」の名前はその登場人物から取られたもの。また、アネットもロジェと離婚後は、アラン・ドロンやウォーレン・ベイティらと浮名を流している)。

 

それから、ともすると、『危険な関係のブルース』ばかりに注目が集まるのですが、むしろ、セロニアス・モンクの演奏が映画の全体にアンニュイなムードを醸し出していて、印象に残ります。