米国債務上限問題

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谷本　憲彦
商品アナリスト・東京商品取引所認定（貴金属、石油、ゴム、農産物、オプション)、証券一種外務員

米連邦政府の国債発行上限額は、議会による歳出関連法によって定められています。
現在の上限額は31兆4,000億ドルですが、発行額ベースでは1月中旬に達しています。
1月19日にイエレン財務長官は米上下院両党リーダー4名に対し債務が上限に達したことを伝え、デフォルト回避のための特別措置の適用を開始したことを明らかにしました。
特別措置の適用とは、公務員退職・障害基金(CSRDF)への追加投資の停止や償還、ならびに郵政公社退職者医療給付基金(PSRHBF)への追加投資の停止などです。
これにより数カ月は「食い繋ぐ」ことが出来ますが、ひとつ間違えれば「デフォルト」となることから、早期の債務上限引き上げを求める声が上がっています。

米デフォルト回避のための債務上限引き上げに7割近くが賛成、世論調査
米国のCBSニュースは2月5日、債務上限引き上げなどに関する世論調査結果を発表した。それによると、デフォルトを回避するための債務上限引き上げに68％が「賛成」と回答した。「反対」は32％だった。また、バイデン大統領が債務上限引き上げのために妥協すべきという回答が69％、共和党が妥協すべきという回答は63％と、大多数が両者の妥協が必要とみている。一方で、バイデン大統領、共和党が各自の立場を堅持すべきという回答は、それぞれ31％、37％だった。(JETRO)

議会予算局(CBO)は今月15日、7月にも特別措置が尽き、米国はデフォルトに陥る可能性があるとの分析を公表。
共和党が奪還した下院とホワイトハウスとの交渉に、事実上の期限を設定しました。
今年の夏は、債務上限を巡る問題に直面することとなります。

先月27日に「【2011】債務上限問題」を掲載、長く苦しい「上限引き上げ」までの道のりをご紹介いたしました。
当時はオバマ政権、そして当時の副大統領はバイデン氏でした。
12年前の教訓から、バイデン氏は無条件での引き上げを望むとの立場を強調しています。
一方共和党は12年前の教訓から、民主党に対しさらなる歳出削減を要求すると見られます。
12年前の経緯が、今回の債務上限交渉を一層ややこしくしていることはいうまでもなく、ある政権関係者によると、バイデン氏は現在の状況の方が2011年よりも危険だとみているようです。
おそらく共和党は4月半ばに独自の予算案を公表する予定で、事実上引き上げ交渉の火ぶたが切って落とされます。
この期間の市場動向については、あらためて2011年当時の動きを掲載いたしますので、ご参考にしてください。