スイスフランの上限再導入、否定できず
米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)は、スイス国立銀行(中央銀行)がフラン高を抑制するために
対ユーロで再び上限を設けることはないとみているものの、その可能性は排除できないとしている。
2011年の欧州危機以来、ユーロを売ってスイスフランを買う動きが強まりました。
フラン高に悩んだスイスは、2011年9月6日に1ユーロ=1.20フランを上限とすることを決定。
スイス国立銀行による為替介入のおかげで、ユーロ/フランが1.20を下回ることはありませんでした。
ところがECBはさらに量的緩和策を導入することとなったため、ついに介入を断念。
2015年1月15日、スイス国立銀行は2011年9月から、1ユーロ=1.2スイスフランに設定していた対ユーロ上限を撤廃し、為替介入を廃止することを突然発表しました。
これによりスイスフランは急騰、ユーロは急落。
市場は混乱し、のちに「スイスフランショック」と呼ばれるようになりました。
現在のユーロ/フランは1.05で、スイスフランショック直後の2015年7月以来の水準です。
今回「可能性は低いものの」上限復活報道を見て思ったのは、「マイナス金利」の弊害。
マイナス金利を導入したユーロに対抗すべく、スイスの政策金利は現在マイナス1.25%!
通貨安競争のあおりを受けた結果、長期国債を含めたすべての国債がマイナス金利となる異常事態で、年金基金などの運用収益は厳しい状態が続いています。
今回FRBも「マイナス金利」導入論争が再燃、今晩のパウエル議長発言に注目が集まります。
フランや円とは異なり、なんといってもドルは「基軸通貨」です。
その強み、メリットをみすみす自ら手放すとは考えづらい。
マイナス金利を導入することにより、市場や金融機関への影響も計り知れません。
リーマンショック後にFRBへ提出されたレポートによると、マイナス金利の限界は「-0.35%」とのこと。
実際にマイナス金利を導入した日本の例にも触れており、むしろ「インフレ期待」は後退したとされており、導入の効果は「大きくない」とされています。
また条文には"the Fed can pay banks interest on their reserves"と記されているだけで、FRBが銀行から金利を徴収する権利があるかどうかも疑わしいようです。
マイナス金利導入は現実的ではないと思われますが、一方でトランプ大統領からの圧もあります。
ゼロ金利導入前、連銀総裁は口々に否定的な言葉を並べていました。
ところが一転FOMCでは全会一致となり、今回も「手のひら返し」が警戒されます。
まさに「FRB議長はつらいよ」です。
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日本フィナンシャルセキュリティーズ㈱ 谷本 憲彦
商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物、オプション)、証券一種外務員