1日外出録ハンチョウ 第25話『流浪』感想 ~孤高のリフレッシュ~ | ツェーイーメン ~福本漫画感想日記~

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今日も地下強制労働施設では、大槻が監督作業を行っていました。
 
しかし何年もここにいるとは言え、鳴りやまぬ騒音には溜息が漏れます・・・。

 

ようやく終業時刻を迎えますが、

部屋は現場と変わらぬ熱気に溢れていました。
いつもは軽く流すはずのくだらない石和のギャグが癪に障ります・・・。

さらに夜になっても激務を終えた男たちのいびきがこだまし、全く気が休まりません。
とはいえ1日個室券を使っても、すぐに手持ち無沙汰に陥ることは「ヌマカワ」で証明済み。
 
大槻は、地下にいる限り四六時中どこにいても静まることのない喧騒に辟易していました。
取り立てて何かあった訳ではありませんが、日々のストレスが蓄積していたようですね。
 
 
翌日・・・大槻は都心から離れたローカル線に揺られていました。
そして辿り着いたのは、どことはない閑散とした住宅地。
通行人もいない、そして特にプランもない、地下とは正反対の日常が佇んでいました。
 
そこにはまったく受動的な情報はなく、感性が澄んでいく感覚があります・・・。
何の変哲もない、人気のない道に並ぶ老舗の専門店たち。
半ば寂れた街並みではありますが、それでも待ちのニーズに合わせて努力して生き残っているのですね。
 
大槻は目的もなく散策を続けていましたが、次第に心のわだかまりが消えていくようでした。
 
 
そして夕刻、
情緒に浸りながらうろ覚えのカントリーロードを口ずさんでいると・・・街角に小さな喫茶店を発見。
 
そこは熟年の店主が暇つぶしがてらに経営しているらしい、昔ながらのお店でした。
これまでは脳内で会議を開くほどに徹底的なリサーチした上でお店を選んでいましたが・・・だからこそ、今は気取らない小店に惹かれますね。
 
シンプルイズベスト!
洒落た店では逆に食べられないメニューですね。
 
手作り感満載。
決して上質ではありませんが、この空間でピザトーストが食べられるというだけで満足感はありそう。
心の安らぐ美味しさが保証されていました。
 
大槻は和やかな雰囲気を気に入り、長居することに。
 
さっそく古本屋で買っておいた小説を読み始めますが・・・
田舎の喫茶店に特有の悪魔的な加湿が眠気を誘います・・・
 
こんなのどかな天然行為も地下ではできませんね。

 

結局6,7回寝落ちを繰り返すと、ほとんど読み進めることなく店を後にしました。
 
 
すっかり日も暮れ、大槻は夕食を探していると・・・
地元のチェーン店らしいうどん屋を発見!
ピザトーストにカレーうどん、大当たりも大外れもないメニューですが、だからこそ敢えて注文してみる。
インスタ映えや店のオリジナルなど・・・そんな心遣いは今の大槻には不要です。

 

多くを求めず、求められず、まっさらな1日が過ぎて行きました。
 
そして・・・翌朝。
喧騒にいると静寂が恋しくなり、静寂にいると喧騒が恋しくなる、
 
人間の心とはままならないものですね・・・
 
かくして、今回の1日外出は終了。
大槻の切羽詰まっていたメンタルは浄化され、またしっかり充電されたようです。
いつもとは趣向が違い、何から何まで質素を貫いたエピソードでしたね。
本当の豊かさは贅沢によって得られるものとは限らないのかもしれません。
 
同時に、現代の情報化社会において静寂の時間を享受することの大切さも伝わってきました。
 
展開が転がっていくネタの詰まったエピソードが基本ではありますが、今回のように叙情的な展開によって小さな幸福を得るエピソードも面白いね。
二つは表裏一体、そのバランスが素晴らしいです(^∇^)
 

 

・週刊ヤングマガジン№10(2018/02/19号)より。