ウンスの診療事件簿 20【失せ物編③】 | 壺中之天地 ~ シンイの世界にて

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韓国ドラマ【信義】の二次小説を書いています

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注意 本日二話目の更新です鳥

 

 

 

それから幾日か経ったある朝のことだ。

ウンスが出勤すると、典医寺の中から外まで聞こえるような怒鳴り声が聞こえてきた。

何事かと思いながら扉を開けたウンスは、その目を疑った。

 

オム医員がアニの胸ぐらを掴み、怒鳴りつけていたのだ。

彼の顔は怒りで真っ赤になり、アニは怯えて震えている。

周りには人だかりが出来ていたが、遠巻きに見ているだけだ。

 

「ちょっと…!」

 

慌ててウンスは二人の間に割って入った。

 

「何してるの!」

 

「医仙様…!邪魔しないで下さい!」

 

こんな小さな娘が一体何をしたというのだろう。

ウンスは庇うようにアニを背中に押しやる。

 

「何があったか知らないけど、ここは典医寺でしょう!

暴力禁止よ!

しかもあなたは医員で、この子はまだ子供なのよ?!」

 

「しかし医仙様!その下働きは私のものを盗んだのです!

この小娘…早く出せ!!!」

 

オム医員がウンスにまで手を出そうとしてようやく、他の医員が彼を後ろから羽交締めにした。

それだけでは足りず、二、三人かかってようやくとり押さえる。

異常なまでの怒り様だ。

 

「アニ、こっちに来なさい」

 

その隙にウンスはアニを外へ連れ出した。

ここにいてもいい事はないだろう。

とりあえずウンスの離れへと連れて行く。

 

 

「これを飲んで落ち着いたら、何があったか聞かせて」

 

ウンスはアニを座らせ、温かいお茶を入れる。

 

「……ありがとうございます」

 

茶を一口飲み、アニは話し出す。

まだ青ざめていたが、口調はしっかりしていた。

 

「今朝出勤して、いつものように掃除を始めたのです…」

 

下働きの仕事はまずは掃除と洗濯から始まる。

今朝も他の下働きと一緒に掃除を始めたアニは、決められた場所を掃除していた。

そこにあの個室も入っていたと言う。

 

「掃除が終わって洗い場にいたら、薬員様から薬草の仕分けを手伝ってくれと言われたので、それを手伝っていたのですが、そしたら急にオム医員様がやってきて」

 

足音も荒々しくアニのところへやってきたオム医員は、いきなり彼女の胸ぐらを掴み、怒鳴りつけたと言う。

盗んだ物を出せ!と。

 

「あの部屋を掃除した時、何か変わったことはなかったの?」

 

「部屋の窓が開いていたから、オム医員が使われたんだな、と思ったくらいで、特に何も気づきませんでした」

 

「確か彼、昨日は夜勤だったわよね」

 

「はい。

その時にあの部屋を使って、そのまま忘れ物をしたそうです。

でも私、盗んでなんていません…。本当です!

確かにあの部屋を掃除したのは私ですけど…でも初めから何もなかったのです!」

 

「それは本当ね?」

 

「はい」

 

アニは頷いた。

ウンスには嘘を言っているようには見えない。

 

「わかったわ。何か勘違いがあったのかも。

説明してくるから、あなたはここにいなさい」

 

ウンスはアニを置いて典医寺に戻った。