典医寺に戻ったウンスは、早速侍医の部屋へ向かった。
「ソク先生、アニのことでお話があるのですが」
声をかけるとすぐに通される。
そこにはオム医員もいて、すでに話をしていた様子だった。
座るよう促され、ウンスも腰を下ろす。
「丁度良かった。
私も医仙殿をお呼びしようと思っていたところです」
「ええ、何でしょう」
「あの下働きの娘ですが、辞めさせることにしました。
本来なら役所に突き出すべきなのでしょうが、あの娘が反省して盗んだ物を返すならそれは勘弁しましょう。
ですが、反省がないようであれば、然るべき処罰を受けざるを得ませんので、医仙殿からもそのようにお伝えください」
「ちょっと待って下さい!」
座った腰が思わず浮く。
こんな一方的な決定あるだろうか?
「あの娘は盗んでないって言っているんです。
オム医員の話だけを聞いて判断されるのは不公平じゃないでしょうか?」
その言葉に、オム医員もムッとして立ち上がる。
「お言葉ですが、あの奥の部屋に置き忘れたものが、二刻(三十分)もせぬうちに無くなったのです。
その間に入ったのはあの下働きの娘だけというのは、皆が知る事実です」
「それだけの理由で決めつけるなんて、強引すぎるわ!」
「それだけ?十分ではないですか!」
二人の口論が激化し始めて、侍医がまあまあ、と口を挟む。
「オム医員も医仙殿も落ち着いてお座りください。
それから医仙殿」
「何ですか?」
「医仙殿も高価な器具を失くされたとか」
「…ええ」
「それも、あの下働きがやったのではありませんか?」
「はい?
いいえ、まさか!
確かに失くなりましたけど、あの娘は探してくれていたのです」
「その際、オム医員を疑うようなことを言ったとか。
自らやっておきながら、他人に罪をなすりつけようとしたとは考えられませんか?
まだ子供だ。それでうまく誤魔化せると思ったのでしょう。
だが長年勤めている医員と来たばかりの下働きの娘、どちらの言い分が正しいかは誰でもわかるでしょう」
「ソク先生。
彼女はオム医員を疑うような事は言ってませんし、それにどっちが正しいとかは、長さとも身分とも関係ないと思いますけど?」
「ええ、確かに。
ですが今まではこのようなことはなく、あの娘がきた途端、紛失が続いているという事については、どのように?」
「それはたまたま…」
「たまたま、ですか。
説得力がありませんな。
医仙殿があの娘を贔屓にしているのは知っていますが、そのせいで目が曇られているのでは?」
目が曇っているのはそっちでしょう!と思わず口から出そうになるが、すんでのところでとどめた。
このままではただの水掛け論だ。
ちらりとオム医員の顔を見ると、憎らしいことにその釣り上がった目を細め、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
(何なの?!この%$#&%男!)
ここに侍医がいなければ思い切り中指を突き立てやるところだ…どうせ通じないだろうが。
しかしながら状況を振り返ると、どうも今は分が悪いことはウンスにも分かる。
言い負かすだけの材料も証拠も何もない。
「とりあえず、もう少し時間をもらえますか。
もう一度きちんと探し、調べてからでも遅くないと思います。
それまで、アニは私がしっかり監督しておきますから」
「わかりました。では三日差し上げます。
それでよろしいですね」
「ええ」
きっと何か手がかりがあるはずなのだ…他に犯人がいるならば。
ウンスは仕切り直すことにした。
昨日は一日雨だったのに、
今日はお天気も良く暖かい
車の中から、満開の桜とお花見をする人々の波だけは見てきました
皆さんはお花見行かれますか〜?