(さあ、この後どうしようかしら)
映画もいいわね…ショッピングはお金があんまり使えないけど、少しくらいなら大目にみてくれるかしら…
お土産って、持って帰れるのかな…
あれこれ思い巡らせていたところ、またもやスマホが着信音を鳴らした。
画面を見ると、今度は【狸オヤジ】となっている。
(……だから誰?!)
「…もしもし……?」
『ウンス先生!どこにいるんです?!
来週検査入院するはずのソン様が、急遽今日入院することになったのを聞いてませんか?!
挨拶と検査内容の説明を早く頼みますよ』
今度こそ上司のようである。
「えっ、今からですか??
それぐらいのこと、明日か、私じゃなくても…
私今日休みのはずじゃ」
「何を言っているのですか!
君が担当するなら、という条件で、エグゼクティブコースをご予約頂いたんです!
ああ、忙しい、私も急いで検査の予定を組み直さねば…」
そう言って、【狸オヤジ】は一方的に電話を切った。
ええええ、うそぉ〜
仕事のよびだし?!
話の内容から察するに、どっかのVIPが我が儘を言って検査入院を早めたと言うことなのだろうが、
そんな要求をすんなり呑む病院も有り得ないし、ウンスが担当するなら……って、医者は接待要員じゃない!と言いたい。
(はぁ…だけど、行かない選択肢なんてないわよね……昔を思いだすわ〜
仕方ない、挨拶と説明だけなら何とかなるかな)
幸か不幸かソウル総合病院は目と鼻の先だ。
ウンスは潔く立ち上がり、コーヒーショップを出て行った。
*
「ウンス先生!お待ちしていました!」
ソウル総合病院に着いたウンスは、待ち構えていた事務員に、連行されるように先導される。
「ソン様は既にお見えになっておられて、ウンス先生をお待ちかねですよ!
すみません、先生、オフでしたよね…もしかしてデートでした?」
ウンスの服装をチラッと見て申し訳なさそうに頭を下げた。
「どうして私じゃないと駄目なの?」
「何言ってるんですか〜!
ウンス先生の出てるクイズ番組のスポンサーの社長さんですし、いつも先生の大ファンだって公言していらっしゃるじゃないですか!
理事長ってお金持ちにはほんと弱いんですよね」
へぇ〜、こっちのウンスさんってクイズ番組に出てるの??
彼女、タレントドクターなのね。
私、無防備にふらふら外歩いちゃったけど、変なところSNSにあげられてないかしら…?
「先生、先生?大丈夫です?
では、白衣とカルテだけ持ってきて下さい、ここで待ってますから」
事務員にそう言われてウンスは部屋に入る。
ここが彼女の診察室のようだ。
となりには個室もついている。
ウンスは白衣を羽織るとカルテを探す。
「あった!ソンさん、これね…
あれ、この人、知ってる…」
有名な通信会社の社長だ。
確か…人間の言葉を喋るお母さん猿のCMが人気だった。
さすがセレブ、検査の項目をざっと確認したところ、新車が軽く一台は買えるコースだ。
病院にしてみれば超上客だもの、医者の休日返上させるくらいどうって事ないってことだろうけど…
一体トップは医者の人権をどう思っているのかしら…
ウンスは呆れたようにため息を吐くと、扉を開けて部屋を出た。
「お待たせ」
廊下には、事務員の他にもうひとり太った中年男が待ち構えていた。
「先生、ソン様はこの病院にとって大切なお客様です。
くれぐれも失礼のないように頼みましたよ」
その横柄な言い方ですぐにピンとくる。
(たぬき…!?)
さっき電話かけてきた狸オヤジに間違いない。
だが、この顔、どっかで…
(げっ…
チョ・イルシンじゃないの…!)
「何か私の顔に?」
(まさかこんなとこで出会うとは…)
「いっいえいえいえいえ…」
首をぶんぶん振る。
「では理事長、行ってまいります。行きましょう、ウンス先生」
(あ〜、びっくりしたぁ…
とんだサプライズだわ…会いたい人だけに会える訳じゃないのね…)
狸オヤジを残して、ウンスたちは別棟のVIP室へ向かった。
ウンス、お仕事するの巻
リアルセレブを登場させてみました〜
高麗の方が盛り上がってますね〜
こっちはオッサンネタばっかりでドキドキもワクワクもないな……もうちょっとだけ我慢してね
次回は霞家へ〜
どんな展開になるやら楽しみですね