もっとも、良いものには自腹を切れ、というのが私のモットー。
試写会で公開前に観賞した林業関係のおエライさんは言った
「率直に申し上げて、まあ、面白いと思います」
木材業界のおエライさんは言った
「私どものシーンはちょっとしかありませんが……」
(木材を使う→建築現場はチラッとしか出てこない)
私の職場のエライ人は
「いい映画だから若い連中に見せろ」と言った。
ご冗談を、と思った。

原作本は手に取ったことがある。
数ページで萎えた。
何だか弱小産業を茶化されてるようで、不愉快だった。
矢口監督の作品は好きである。
『ウォーターボーイズ』も『スウィングガールズ』も、特別版のDVDを持ってる。
でも、ネタが自分の業界となると……
「頭を空っぽにして観ればいいのよ」と妻が言った。
そして、鑑賞後の感想───
率直に言って、面白かった。
まず、映画作りに厚みを感じた。
例えば、とある林業現場の風景。背中に箱を背負った作業員が画面を横切る。箱にはアンテナがついている。
それからしばらく後のシーン、林業会社の社長がパソコンを見ている。画面に写るのは植林地を図った測量図。
──現場で背負っていた箱はGPSの機材。地籍調査にも使用される高性能な測量機器だ。
そのデータは機械的に作図され、GIS(地理情報)としてパソコンに取り込まれる。
映画の中では一切説明されない。
「キックバック」とは、チェンソーのバーの先端部を木に当てた時、バーが激しく跳ね返る危険行為のこと。
これも映画の中での説明はない。
研修生のだらけた態度に腹を立てたヨキが
「これがキックバックじゃあ!」
といきなりチェンソーを跳ね返らせ、脇に立っていたマネキンをぶっ飛ばす。
よく勉強している。それでいてウンチクを垂れない。
林業を映像(風景)で表現しようとしている。
まあ、三重県でも有名な林業家、HさんやYさんが協力しているから、知識は豊富に教われるだろう。
教えられる側にその気持ちが有れば。
この映画のために、2010年からスタッフが現地入りし、林業経験を積んだ。
監督自身は12年に現地入りした(初めて山村に現れた時は農協の職員に間違われたとか)
しっかり時間を掛けている。
だからネタの摘み食いではない、本当らしさがあり、映像に厚みがある。
矢口監督の、題材に対する真摯な姿勢に敬意を表したい。
さて、一つだけ疑問に思ったことがある。
村に都会の大学生、スローライフ研究会の若者たちが現れ、田舎をバカにしてふざけて、主人公に追い返される。
登場人物を丹念に掘り下げる監督が、何故こんなステロタイプで魅力のない人物像を配したのか、私には理解出来ない。
ましてや、この映画のターゲットはこういう若者たちのはずである。
因みに、木材にはリラックス効果、作業能率を向上させる効果がある。
某大学で、学生を対象とした作業能率の実験をした。
鉄筋コンクリートの部屋と木材を使った部屋。
データでは、明らかに木材の部屋の方が能率が高かったのに、アンケートでは評判が悪かった。その理由は
───木は臭いから
日本人はどうなってしまうんだろうと思う。
若い頃、冬山の木材伐採現場にいた。
暗い内に現場に着き、土場(丸太に切った木材を積んでいる道路際の場所)で夜明けを待つ。
外が白んできて車を出ると、清冽な空気がぴっちりと身を包んだ。
その空気は切り立ての木の匂いがした。
一日中、丸太をいじっていると、身体中に匂いが染み込んだ。
手の平はいつも木の匂いがした。
───これを「臭い」と言われたら、私は絶句するしかない。
さて『ウッジョブ!』公開から4週目、私が観た回は観客が5人しか居なかった。
やっぱり、林業なんかウケないのかな。
日本の富は都会に集中し、若者は山村に興味がない。もはや笑い物にする気もないのかな?
私は林業関係者として、この映画を多くの人に観てほしいと思う。
おちゃらけ映画として、気軽に楽しめる
───但し、監督はおちゃらけた気持ちで作ってはいない
ふんどし祭りも面白いぜ。
クライマックス、凄いよ!
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