アルファロメオ・モントリオール 本質を見抜けなかった若い頃 | モータージャーナリスト・中村コージンのネタ帳

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いわゆるスーパーカー屋さんでアルバイトを始めたのは、まだ十代の時。それこそ免許を取ってたったの1年で、フェラーリやランボルギーニなどに乗ったわけです。勿論、当時はまるで分っていません。フルサイズ系のモデルはともかく、ミッドサイズ系(表現が正しいかどうはわかりませんが)の3大モデルと、当時言われていたのが、ディーノ246GT、ポルシェ911カレラRS、それにアルファロメオ・モントリオールでした。幸運にもこの3台、すべて乗りました。それもかなりちゃんと飛ばして。しかもそのほとんどは、新車もしくは限りなく新車に近いモデルばかりです。若かったですからね。もうヤンチャしまくってましたし。その中で、自分の評価として一番低かったのがモントリオールでした。

どれほど当時の状況が恵まれていて、今見たらよだれものかわかる写真が⇓です。

ディーノ2台とモントリオール2台が、ご覧のように展示場に並んでいました。因みに、ディーノはこの時さらにもう一台ありましたから…。

で、モントリオールです。流石にディーノはすぐに売れちゃいましたし、だいぶあとになってやってきたポルシェカレラRSは、港に着く前から売れちゃったほどの人気。でもモントリオールは結局ずーっと居ついて、いわゆる不良在庫。そこで展示場のボスは、何とこのクルマを社用車にしてしまおうという大胆な決断。というわけで晴れて、あちこち細かい仕事でこのクルマを足に使ったというわけです。しかし、こいつ、運転するの、上に挙げた3台の中でも一番難しかったんですよ。とにかくほとんどレーシングクラッチ(元々は33用のV8エンジンですから)かと思うほど、半クラッチが使えません。とにかく一瞬で繋がるんです。だからずいぶんエンストしました。それにエンジンがもさっとしてたるい。って、これ、ポルシェやディーノに比べた時の話です。良い音するし、カッコもいいし、内装なんか特に素敵でしたけど。ステアリングがまた、ポリッシュウッドで滑り易いんです。他のクルマは革巻きなのに。当時パワステなんてついてないですからね。重いからツルンツルン滑るし。そんなこんなでモントリオールがあまり好きではなかったんだと思います。

この写真で背後に写っているエランは、確かシリーズⅣだったと思います。スプリントです。そしてモントリオールの影に完全に隠れてウンド―とボンネットが少しだけ見えているクルマ。これ、何とマセラティ5000GTです。当時はてっきりフルアのボディかと思っていたのですが、どうやらアレマーノみたいです。そうそう、エランは下取り車だったので、しょっちゅう乗ってました。でもシートポジションが僕には合わなくて、嫌いなクルマの筆頭でしたね。ってエラン好きからはバッシングされそう…

とまあ、今考えればとてつもないクルマたちに囲まれていたわけですけど、悲しいかな知識がなかった。それがどんなに貴重なものか…

今考えてももっと写真撮っておけばよかったとか、もっと触っておけばよかったとか、いろいろ後悔をしているのですが、まあそれもこれも経験というわけだったのであります。

モントリオールにしても、その後何年もたって、知識が深まってからも乗りました。当時乗ったクルマとは全然違って、すごく乗り易くなっていました(たまたまその個体だけかもしれませんが)。クラッチは軽いし、そのつながりも楽だし…。もっともヤンチャして飛ばせるような状態ではなかったですね。当時ちゃんと本質を見抜いていれば、モントリオールをもっと楽しめたのではないか?と今は思っています。