先日、BMWのデザイン、エクステリア・クリエイティブ・ディレクター、永島譲二さんにお話を聞く機会を得ました。いろいろ面白い話が盛り沢山でしたが、引っかかったのがBMWキドニーグリルの話。BMWといえばキドニーグリル。これは切り離して考えられないほど、常識。しかし、BMWがクルマを作り始めたころ、そのキドニーグリルは存在しなかったのです。
最初のモデルDIXIのグリルはごく当たり前のこんな感じ↓
しかしおなじDIXIでも、このグリルを装備していたクルマもあるんです。↓
このクルマは同時代にドイツで自動車メーカーとして存在していたイーレというメーカーのクルマ。といっても中身はBMW DIXIですから、言ってみれば光岡自動車のような存在でしょうか。このクルマはイーレ・スポーツと呼ばれたクルマで、そこにBMWの名はありません。このデザインを見たBMWはこのグリルデザインを取り入れてクルマ作りを始めました。最初はBMW303、その後315スポーツと発展し、以後ほぼすべてのモデルにキドニーグリルが付くようになったというわけです。
イーレというのはこんなエンブレムを持っています。↓
1977年、当時ミュンヘンで第1回のオールドタイマーミーティングが開催されました。カメラを持って覗きに行くと、スマートなおじさんが、「おい乗っていくか?」と声をかけてくれました。乗せてもらったクルマはこれ。↓
BMW327です。そして傍らで大胆にもビールを飲んでいるおじさんがオーナーで声をかけてくれた人。かくしてBMW327のパッセンジャーシートに収まり、オールドタイマーランを楽しんだという次第↓
ところで、イーレの話に戻りますが、イーレはこんなクルマを作っていました↓
誰が一体これをフォードだと思うでしょうね。これはフォード・アイフェル・イーレスポーツというクルマで、BMWじゃないんです。BMWが作ったのはこっち↓
あまりにも有名な328ですけど、この2台、どう考えても似てませんか?つまり、イーレのコーチワークをBMWが頂いたというわけですね。
そしていつの間にやらこのキドニーグリルはBMWのものに…
実はイーレ、今も存続しているようですがクルマは作っていません。作っているのメリーゴーランドやオートコースターという、英語だとバンパーカーというそうで日本は何というかわかりませんが、遊園地にある、周囲をバンパーで囲われて、ガツンガツンぶつかって楽しむやつです。
というわけで、キドニーグリルはBMWのオリジナルじゃない…というお話でした。