さて、今回はバンダイキャンディ事業部から発売された「スーパーミニプラ 装甲騎兵ボトムズ外伝 青の騎士ベルセルガ物語」レビューの最終回。
前回の「③メルキア騎士団 計画編」文字数制限による取り零し分を、何時もの裏付無・特定個人&団体への愛故のお気楽極楽与太話を交えてレビューして行こうと思います。

…あれは確か1988年の夏頃(以降 当時)。月刊ホビージャパン(以下 HJ)本誌か、本作の「HJ版別冊②」(以降 ムック②)で、本機の作例メインビジュアルを初めて見た時の思い出となります。

その日、当時所属していたワンフェスサークルの寄合場に、本を持ったサークルメンバーのボトムズファン2人(以下 最低野郎共)がモノ凄い怒りの形相で駆け込んで来たのです。

ここで、前回提示した(自分なりの)「ATデザインの最低必要条件」三原則を転載してみます。

【ATデザイン三原則】
①頭身が5.5頭身以下(2.5頭身以上)な事
②デュアル&バイザー・アイで無い事
     (顔面が左右非対称であるのが望ましい)
③頭部と胴体の幅が同じな事
     (首が無いのが望ましい)

これを踏まえた上で、問題となったHJの作例メインビジュアルを御覧下さい。

「…何、コレwww」

本を見せられた自分を含めた他メンバーは(怒りに震える最低野郎共には大変申し訳なかったのですが)思わず大爆笑しておりました。これには2つの大きな理由があります。

まず1つ目。それは本機の素性(6.5頭身以上)が巧妙にデザイナーによって隠されていた事が上げられます。

実は本機の初出は意外と早く、1987年2月に発売された初の「公式設定本=HJ別冊①(以降 ムック①)」においてさりげに発表されておりました。その後、7月に発売された文庫版④巻で大暴れを果たし「青の騎士」は無事完結を迎えたのです。

処が、本人が描いた「ムック①」では俯瞰&広角レンズ(この時点でかなりの作為を感じます)/幡池 氏が描いた「文庫版④」では煽りカットと、従来のAT通り頭部は比較的大きく描写されておりました。

この作例メインビジュアルを担当したMAX渡辺 氏ですら、当初はAT従来の5.5頭身で造形前ラフ画を上げていた位。つまりメインスタッフにすら、造形直前まで本機の素性を隠していた事になります。
で、実際に出されたのがコレって…
誰がどう見てもATじゃないじゃん!

…尤も、これぞデュアルマガジンにて小粋なジョークをかましていた、あの「愉快な兄ちゃんデザイナー」ズバリその人。

つまりは、スゴく「らしい」藤田 一己 氏の久々のオチャメさへの笑いだったのです(今の社会人の目から見ると、全く冗談じゃない一大事だと思いますが)。

そして第二、ここからがいよいよ本題となるのですが…当時も今も該当する言葉が無く、自分達の間では「異形」と呼んでいた「80年代後半のキャラクターロボデザイントレンド」

【シルエット上、極端化する特徴】
  ①ヘルメット内顔面部の小顔化
  ②プロテクト・ガード部の張り出し(※)
      ※…角・肩・胸・尾てい骨・腰・肘・膝部等
  ③足首部の前後伸ばし
  ④  ②&③により形成される脚部鳥脚形状
  ⑤バックパック・武装の巨大化

以上5点を、オフィシャルな立場で最もセンシティブに表現して見せた事が、本機のもたらした最大の衝撃だったと思います。ぶっちゃけ、当時の心境を素直に表すと…
当時の「スーパーロボット」としてあまりに別格なその「格好良さ」に、もう笑って認めるしか無いと言う感じだったのです。

でなきゃ、とてもじゃないけど当時の激動ムーブメントに即時対応出来る精神的自由度なんぞ持ち得ませんでしたから。
処が、そうはいかなかったのが「最低野郎共」。「青の騎士」にあれだけ夢中になっていたにも関わらず、本機を見た途端「これはATに対する冒涜だ!」と"可愛さ余って憎さ百倍"宣言。

以降サークル内では「青の騎士」に関して口にする事すら憚るようになってしまい、一種のタブーとして全く話題にすら上がらなくなってしまったのです…。

そんな「ボトムズ界最大の問題事」がスーパーミニプラ化されました。それが、この「ベルゼルガ SSS-X テスタロッサ」となります。
ATM-FX∞「ベルゼルガ SSS-X テスタロッサ(以降 テスタロッサ)」。

ミーマが提唱する「マシン・マキシマム構想」の元、ベルセルガを参考とし、FXシリーズを始めとする全アストラギウス銀河の戦闘テクノロジーを結集。

パイルバンカーに純クエント産単結晶合金製長槍を装備、「キューブ」と組合わせる事で「最強のAT」として完成した。パイロットは「ベルセルガ」ケイン・マクドガル。

…では、このテスタロッサが最もセンシティブに表現して見せた「異形」とは、一体どんなモノだったのか?その流れを簡単に纏めてみます。
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【仮称「異形」なる80年代後半のロボデザイントレンドへの流れ】

「機動戦士ガンダム」(1978)に端を発した「ガンプラブーム」により、以降80年代はガンダムの「プレーン」スタイルを基準とし「リアルロボットムーブ」が到来します。

ところが時ほぼ同じくして(キャラクターコンテンツはおろか)あらゆる娯楽産業を激震させる仕込みが既に為されておりました。

日本において1979年に端を発したTVゲームの台頭…「新メディア誕生」とほぼ同義語となる「ファミコンブーム」(1985)の到来です。

このブームはあらゆるキャラクターコンテンツに対して、そのアイデンティティとも言うべき商品展開ラインナップの根幹的な一新(SD化・ゲーム化等)を迫る事となりました。

当然「ロボット物=リアルロボット物」もただでは済まず、「機動戦士ガンダム~逆襲のシャア」(1988)を最後に一区切りがつかれる事となります(同時上映は「SD」ガンダム)。

…尤もこれはあくまでキャラクターコンテンツのメジャー路線な「表」のお話。その「裏」のマイナー路線(ぶっちゃけオタク界隈)においては、むしろこっからが本番となります。

70年代の「ヤマト」ブームにより、オタク界隈では同人誌…所謂「二次創作物」を嗜む事が当たり前の作法となっておりました。

そこに80年代の「SF(ガンダム)」ブームが続く事となる訳ですが…そこには"新たなムーブメント"が伴っていたのです。

それが"3次元の二次創作物"「ガレージキット」。表裏一体となる「ガンプラブーム」で続々と誕生した有力モデラー達が、そのまま凄腕造形師へとジョブチェンジ。

その勢いは本家たる同人誌をも差し置き、ついには専門のイベント・お店まで展開するに至ったのです。

当然「模型専門誌」がこの流れを放っておく訳がありません。当時は玩具・模型メーカーも独自に発刊しているような状況で、こぞって独占企画をモノにしようと動き出す事になります。

それが「アニメ映像本編スタッフ自身を召喚し、関連作品の発表場とする」事。

その関連作品には"ガンダム"の「MSV」(1983)を起点とし、様々な「リアルロボット物」が採用される事となりました。

原点となる公式作品を1次=メジャーとし、2次創作物=マイナーとするのなら、これは差し詰め「1.5次創作物」と言った処。つまりは「マイナーメジャー」な代物を造り出す企画だった訳です。
テレビ放映終了と共に本来ならその役割を終えるはずの各キャラクターコンテンツ。が、それを基にクリエイターが「高解像アレンジ」を施す事で、より延命出来る事を「MSV」は証明してくれました。

これは「玩具・模型メーカー」ならびに「版権元」にとっても決して悪い話ではありませんでした。

何しろテレビ本編よりも少ないコスト・カロリーで「次作企画」が立上がり、先の「読者投稿」職人達により内容の肉付け&ブラッシュアップが行われ、人気次第では次の展開(商材)へと拡大する事が出来るからです。

こうして「玩具・模型メーカー」主導の「模型情報誌」は、当時の尖った連中(オタク)達に対し、発行部数以上の絶大な影響力を持つに至ります。
そんな「クリエイターの高解像アレンジ」のエポックメーキングな例としては、「重戦機エルガイム」(1984)の「新人」メカニックデザイナー「永野 護 氏」による「ファイブスター物語(以降 FSS)」(1986)がその代表格になると思われます(初出自体は放映時のアニメ誌から)。

更に1985年には「オリジナルビデオアニメーション(以降 OVA)」が確立され、結果新旧クリエイター達による「高解像アレンジ」企画が「模型情報誌」上に続々と展開する事となります(※)。
※…「聖戦士ダンバイン」(1983)を基とした連載記事「AURA FHANTASM」からOVA化された「New Story of Aura Battler DUNBINE」(1988)。「機甲界ガリアン」(1984)を基に「AURA FHANTASM」の手法を以てOVA化された「鉄の紋章」(1986)等。
そんな「MSV」で提示された「クリエイターの高解像アレンジ」の新たなテストケースとして「FSS」と並ぶ話題性を誇っていた本「企画」こそ、1984年9月号から1985年3月号の計3回に渡りDM誌上で連載された「青の騎士 ベルセルガ物語」だったのです(※)。

※…ガンダムシリーズにおける"意図的な「高解像アレンジ」企画"としては、本企画の数年後「機動戦士ガンダムZZ」(1986)の後を次ぐ模型企画に端を発した「ガンダムセンチネル」(1987)が例として上げられます。

これによって誕生する各メカ&キャラクターをそのまま造形する過程を「作例記事」化→作品その物を「原型」とする事で「ガレージキット」化→あわよく話題となればそのまま「実績」「企画」として持込み逆メジャー化と言う、流れるような「ビジネスモデル」が確立されました。
元々好きでこの業界に入ってきた「プロクリエイター」な以上「二次創作物」はお手の物。粋な発注内容とマイナー故の規制の緩さも相まって、全力で個性を発揮します。

片や、ついこの前までアマチュアながら腕一本だけで成り上がった「造形師」達も、その「プロクリエイター」の粋に応えメジャーにうって出ようと、全力で腕を発揮します。

互いの試行錯誤・採算度外視な再三のやりとりにより、共にリスペクトしあい磨きに磨き抜かれた結果どうなるか?…究極至高な「趣味的デザイン&造形品」が爆誕する事になります。

こうして様々な「趣味的デザイン&造形品」が誕生する事になる訳ですが、不思議とその傾向は同ベクトルを指し示していました。特徴を箇条書きすると以下3つ+αとなります。

①"細身マッシブな人型"が芯となっている事
②あらゆる状況に即した装備&全載せ可能な事(分離は絶対条件に非ず)
③シルエット&装飾に悪魔的意匠が施されている事(アーマー類の極端な巨大尖鋭化)(※)
そして何よりも
④最強・最高の存在として発注されている事

※…本記事冒頭にて紹介させて頂いた【シルエット上、極端化する特徴】の総括項目となります。これは「日本のキャラクターコンテンツ」…否、「日本のロボット物デザインの主流・原点」の発展・拡大解釈とも言える最大の特徴となります。(※※)

※※…日本のロボット物のあらゆる礎とされる「マジンガーZ」。その最大の影響力は、表裏一体作品「デビルマン」の持つ「味方側に悪魔(悪)の意匠を凝縮・単純化して取り入れた点」にあると考えます。
本来「生々しさ」が先に立つ「悪魔」デビルマンの嫌悪感を、ロボとして単純意匠化する事で相殺し「カッコ良さ」のみを抽出してデザインされたのが「マジンガー」だからです。これは、以降全ての「ロボット物」デザインに多大な影響を及ぼしています。

話を「3つ+α」に戻して…もうここまで来ると「リアルロボ」と「スーパーロボ」を分けて考えるのがバカバカしくなってきます。何しろ元発注の段階で「最強・最高」とされてしまっているのですから。

そして奇しくも、ほぼ同時期のアニメーター界隈において「金田 伊巧 氏」フォロワーによる「3つ+α」と同ベクトルな"新たなロボスタイルアレンジ作画"が注目を浴び始めておりました。

「超獣機神ダンクーガ」(1985)以降の「大張 正己氏」に代表される、今で言う「バリってる」作画の事です。
これはもう当時の業界全体における「リアルロボのスーパーロボ化」ムーブメントと言っても過言じゃ無いんじゃなかろーか(何言ってんだ自分)…もう良いや。面倒くさいから全部十羽一括りで。

つまり「最強・最高のロボット」を目指し、恐竜的進化の末に辿り着いた80年代後半のロボデザイントレンドこそが、この「異形」なのです。(※)

※…なお「ガンダム」側の視点に立った「異形」については(ここからの引用が大分被りますが)以下をご参照下さい。
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さて、そんな80年代後半のロボデザイントレンドを集約した「異形」テスタロッサ。

今回も「可動させて遊ぶ→摩耗・破損する→修理」のため、敢えて合わせ目消しは行わないお気楽極楽製作法は相変わらず。ただし、新品らしさとスーパーロボット感を出すため、今回に限って全塗装を施してあります。

差し色はガンプラマーカーによるモノ…って、しまった。今気付いたけど、藤田氏特有の左肩上部「コの字型ガード」はゴールドだった。痛恨のミス。
"右のマグナム"「GAT-FX02Mヘビィマシンガン」。80年代ロボと言えば、やはり持て余さんばかりの「長モノ」を振り回してのロングレンジ攻撃。

"左のファントム"「パイルバンカー」。テスタロッサを「最強」の存在とさせるための直接打撃による一撃必殺武器。何時の世も男の子心に突き刺さる代モノです。

ご覧の通り、定番の間接配置により手堅い稼働範囲が確保されていますが、今回は何と言ってもスーパーミニプラならではの「軽量・小サイズ」が長所として効いています。

このお陰で、恐らく歴代のテスタロッサ・モデルの中で最も「重力・幅」に気兼ね無く、お手軽・お気楽に「カッコいいポージングがさせられる」屈指のモデルとなっているからです。
なので、元祖は「ジャンボーグA」(1973)、リアルロボット物では「戦闘メカザブングル」(1982)以降定番化した、「青の騎士」衝撃の「主役メカ交代」シーンも再現可能。

リアルロボット物の文法に則りながら突如出現した「スーパーロボ」と言う事で、超チート機ならではのメチャクチャな強さが印象に残っています。
…さて、前回は「レグジオネータ」のデザインについて「モチーフ=異物としての機械を噛み込んだ胎児」・「テーマ/コンセプト=SF洋画/起源」?と妄察してみた訳ですが。

「テスタロッサ」についての「モチーフ」「テーマ/コンセプト」はどうかと言うと…実は「レグジオネータ」先に在りきで、本機は後からデザインされたのではないか?と考えています。

つまり「コンセプト=対レグジオネータ」は先に決まっているので、後はこのレグジオネータを「どう解釈し可視化するか」で残る2つが決まる…そんなデザイン過程だったのでは?と言う訳です。

そしてそのヒント。「ヒーローロボ」ではあまり見ない「バイザー部」デザインの元ネタは、当時まだ普及に悪戦苦闘していた「ハロウィン」の仮装バリエーションの中にありました。

お手軽なジャックランタンやゾンビ・モンスターとしてドラキュラ・狼男・フランケン等が有名ですが、時々「鳥の嘴のようなマスク」を見掛ける事があります。
これは「ペストマスク」と言い、その名の通り「対ペスト患者」に対し接してきた「ペスト医師」が発症防止のために着用していたマスク(※)。

※…「ウォッチャー」(2016)のパッケージ絵が今まで見た中で1番イメージに近いかも。

この当時の「ペスト医師」には、まだ研究途中だったペストに対しての対応力が備わっておらず、実際には対象患者の隔離・患者がいた建物の破壊等を主にやっていたそうです。

故に、患者の生死に関わらず元凶もろとも根絶やしにしようとする「ペスト医師」は、時に市民から「死神」呼ばわりされたとか…最早「ペスト・バスター」と言った感じ。

そんな「ペスト・バスター」を「テスタロッサ」のモチーフにしたと仮定すると、今度は「レグジオネータ」にも他の1面…「別解釈」が見えて来ます。

「ペスト」は別名「黒タヒ病」とも呼ばれており、病は風に例えられ、風は寄り集まる事で嵐となります。「黒」「タヒ」「嵐」…まさに「レグジオネータ」その物を表すキーワードのオンパレードとなるのです。

原作において「レグジオネータ」は、その圧倒的能力により魅る者を惹き寄せ、取込み、洗脳してきます。それを「流行り病」と捉えるのなら、当にレグジオネータは「黒タヒ嵐」その物と言えるのです。

という訳で、自分は「モチーフ=ペスト医師」「テーマ=ペスト(黒タヒ嵐)/コンセプト=対レグジオネータ」とし、それを80年代後半のロボデザイントレンド「異形」で纏め上げ可視化したのが「テスタロッサ」のデザイン…と妄想していました(※)。

※…あくまでも、単に「妄想・邪推を想起させる出来の良い立体片手に呑む酒は旨いよね?」という「全くのホラ話」となります。
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最後に、数有る「ホビー誌企画(作例・ガレキ化)」の中で「青の騎士」の「テスタロッサ」だけが別格・突出した特別感がある理由について以下に纏めてみます(※)。

1、非アニメ化にも関わらず、詳細な線画設定がある事

2、設定発表直前後に、ほぼ完璧なイメージフラッグシップたる立体モデルが存在する事

3、その後、何かしらの形で数回以上の引合い(再収録)に出されている事

※…なお、この3条件を充たす当時の同じようなキャラクターコンテンツ(ロボット物)と言えば、「FSS」と「ガンダム センチネル」位しかありません。

「1」に関しては、大概はイメージイラストが1枚あるだけで、そこからモデラーがイメージを膨らませて造形するのが前提。わざわざ線画設定を起こすにしても、せいぜい斜め前&斜め後全身図+武装設定くらい。只の一作例にそれ以上のカロリーをかける事自体が異常事態なのです(※)。

※…「オーラファンタズム」(1987)が良い比較例となります。アニメ化されたサーバイン&ズワウスには詳細な線画設定が存在しますが、それ以外のメカはイメージイラストが数枚あるだけです(※※)。

※※…故にイメージイラストしかないこれらのメカを率先して「公式玩具化」している「ロボット魂」シリーズの異常性が際立ちます。これは先駆けたる「模型」部門ですら未だ躊躇して踏み込んでいない未知の領域なのです。

「2」に関しては、「ホビー誌企画(作例・ガレキ化)」としての正に本懐と言った処でしょう。何しろ「雑誌記事」という情報と「ガレキ」という商品による相乗効果で、強烈な印象をユーザーに植え付ける事が出来るからです。

そして一番重要なのが「3」。ただの一雑誌の一記事なら、掲載後1ヶ月でその存在は消費され、露と消えてしまいます。が、ムック本や文庫と言った形に纏められれば、再販を重ねる事で年を跨いでその存在をアピールし続ける事が出来るからです。

…尤もこれが一番難しく、大概は再販ラインナップから外されたり、出版社自体が倒産し「絶版」となってしまうケースの方が多いのです。

「青の騎士」もしばらくは提供維持出来ていたのですが、何時しかその不幸なケースに巻き込まれてしまいました。これが、ほぼ同じ出路ながら「FSS」「ガンダムセンチネル」との差違を生み出してしまったのです。

ですが今回のスーパーミニプラ化により、再び「青の騎士」に注目が集まり再評価の気運が高まったように感じます。

故に、今回の商品化に関連したスタッフ・企業の皆様には感謝の念しかありません。
ではこちらも、最後の〆として小ネタを一つ。藤田 一己 氏によるメカニックデザインの特徴と言えば、眼光だけで見るモノ全てを貫き刺すような「鋭いデュアル・アイ」。
何かと「ATじゃない」と蔑まれて(?)きた「テスタロッサ」(ついでにレグジオネータ)に関しては、立体モデルが入手出来たらぜひ一度試してみたい事がありました…それが「鋭いデュアル・アイ」化。
…実はテスタロッサのバイザー下(レグジオネータは頭部下)の僅かな隙間から見える口部パーツ上部に、ラピーシールにて「鋭いデュアル・アイ」を既に仕込んであったのです…フフ。確かにATじゃないや。
…ふう。と言う事で、前説1回・レビュー4回の1年に渡ってご紹介してきたスーパーミニプラ「装甲騎兵ボトムズ外伝~青の騎士ベルセルガ物語」シリーズレビュー。

これにて〆となります。長い間お付き合い頂き、誠にありがとうございました。


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…さて。以降お届けするのは、当ブログお馴染みの「あまりに本筋と話が違っちゃったので番外扱いにしたよ」コーナー…言わば「後書き」部。
その内容と言えば、特に筋金入りな「ボトムズファン」の皆様にとっては大変失礼な気持ちにさせてしまうかもしれない、半分グチ混じりのロクでも無いモノ。

でも、それでも!今回どうしても書かずにはいられなかったのです…ま、備忘録だから仕方ないね。

ですので、純粋なレビューのみ(?)ご覧になりたい方はここでお暇を頂き、お時間と心に余裕のある方のみ、以降お付き合い頂ければ幸いです…それでは、どうぞ!

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…さて。ついに「ガンダム」以上に扱う事が躊躇われるネタ(ボトムズ)が来てしまいました。

奇特にも自分のブログを読んで下さっている皆様からすれば、本ネタが他記事に比べ、明らかに引き気味・他人事感覚な事に気が付かれているかと存じます。

と言うのには、実は深い訳がありまして…皆さんも一度はネット上で見た事があるんじゃないでしょうか、「一般人の認識」というコピペネタ。

■一般人の認識

ガンダム:安室とシャーがたたかう話
エヴァ:パチンコ
マクロス:歌う
ギアス:知らん
ボトムズ:アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントの陣営は互いに軍を形成し~etc.…長い長い。

アニメ好きの間では有名ロボアニメでも、所詮世間の認識はこの程度…という自虐ネタ的前振りから、何故か最もマイナーメジャーなのがオタク特有の早口で詳細解説されるというギャップネタの1つ。

このコピペネタの秀逸な処は、濃いオタク・マニア層の中でも突出して面倒臭もとい「濃さ・重さ・そして、覚悟」を持つ「ボトムズファン」の生態を的確に表している点にあると考えます。

つまり「なぜボトムズの扱いに躊躇するか?」と言うと「身近な友人達(=最低野郎共)」のそれを通じて「散々痛い目に遭わされてきた」からなのです(※)。

※…あくまでも自分の周りだけのお話ですので、くれぐれも「全てのボトムズファン」がこうだとは絶対に思わないで下さい

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【とある「ボトムズファン」(最低野郎共)の備忘録】

「ボトムズ」というキャラクターコンテンツに関わる人達は、ひとえに「献身的」であるとされています。

かなり間隔が空くとは言え「版権元」は確実にガッツリした「続編」を発表し続け、「メーカー」は定期的な商品展開を行い一大バリエーションを完成させる。そして「ファン」が、それを粛々と買い支える。

三種三様各々の立場から"最大限のリスペクト"を以て支え合うその姿は、世のため人のため自己犠牲を惜しまぬ「敬虔な信者」を彷彿とさせ、一見「理想的」とも言える関係を築いているように見えます。
ですが時々、関係者の思いを篩に掛け、その意思と力を試すかのようなビッグウェーブを引き起こしやがるのです…「加減しろバカ!」「もうちょっと何とかならんのか?」というような。
熱意を"値段"で試さんとする「メーカー」と、目的達成のためなら社会的"タヒ"すら厭わぬ「ファン」。そして、それを敢えて"放置""黙認"する「版権元」。
この本編さながらの関係性「共食い」こそ、奴ら「ボトムズ(最低野郎共)」の真骨頂。そしてそれは、キリコ&ケイン同様 何の関係も無い周辺をも巻き込んで行く何ともはた迷惑なモノだったのです…。

【事例その①:LD-BOX】

PPTシステムの確立により「ビデオレンタル」が既に一般化していた1990年頃、ファン待望の全話収録LD-BOXがようやく発売される運びとなりました。

当時「LD-BOX」は「究極のコレクターズアイテム」として、何処かしらファンの矜持を試すような要素があった事は否定出来ません。

ですが根本的な問題として「3BOX1セット約10万円」という、当時としてはかなり強気な価格設定がありました。

が、それに相応するだけの「スペシャル特典」を付ける事で、誰もが納得し得る存在価値を示していたはずなのです。
例えば1992年に発売された「仮面ライダー パーフェクトLD-BOX」。15万円という破格なお値段ながら、資料性・思い出補完という意味で完璧な「仮面ライダースナック」付属の全546枚+異種3枚カードを復刻、大きな話題となっています。

それに対し「ボトムズ」はどうだったかと言うと…「美麗なジャケットアート」に「豪華設定&解説書」、まあこれはデフォでしょう。

でもさあ…このお値段で、ただの「バトリング新聞」「投票券」「100ギルタン紙幣&500ギルタン金貨」それに「運任せのサイコロ」を「スペシャル特典」と言い張るのはどうなのよ?

この時点で既に「大問題」なのですが、喜び勇んだ友人は何の苦もな無くその場で全3BOXを即予約。
発売日ともなると「パイルダー」と名付けた中古軽車でわざわざ家の前まで乗り付け、嫌がるコミケ仲間らを無理やり拉致して車内監禁。

そのまま秋葉原まで出向いてBOX回収。あろう事か電車もバスも通っていない辺境の自宅までとって返し、朝まで全話鑑賞とシャレ込みやがったのです。
その間ただひたすら耳タコな「ボトムズ」の蘊蓄話オンリー、しかもBOX毎計3回!こんなん只の苦行以外の何物でもありゃしません。

奴は、ゴウトのようなドヤ顔でこう宣ったものです。
「高い安いの問題じゃねーんだよ。買う時ゃ買う。ただ、それだけさ…」

うるせーよ。

「…たまには、火薬の臭いを嗅ぐのも悪くない。だろ?」

ブン殴ってやろうかと思いました。


【事例その②:超特大ガレージキット】
ガレージキットメーカー「ボークス」の「造形村」による"究極のボトムズ立体物"「1/8 スコープドッグ」が1996年に発売されました。そのサイズ何と全高約50cm、価格はまたもや10万円以上!

今でこそ珍しくもない「50cm」という立体サイズ感。ですが、マジンガーZ以降の「スーパーロボット」ムーブに振り回されてきた世代にとって特別な意味を持ちます。

昔の玩具・模型業界の「ことわざ」に「(30cm以上の)デカい玩具は売れない」と言うのがありますが、その定説を覆した「ジャンボマシンダー」(1972~)の衝撃を体感してしまっているからです。

故に公式玩具・模型でまず出ないであろう「メガサイズモデル」は、80年代当時にマイナーからメジャー進出を夢見ていた「ガレージキット」メーカーにとって、夢の「フラッグシップモデル」だったのです。
1987年発売の海洋堂「1/35レッド・ミラージュ」(原型:小田 昌弘氏)を皮切りとしたこの流れは、本モデルと同年発売の「1/144 ヤクトミラージュ」(原型:谷 明 氏)を併せ、今まさにクライマックスの様相を呈しておりました。

そんな話題性抜群の現物到着を知らされた自分たちは、週末ともなると早速ワンフェスサークルの寄合場と化していたその友人宅へと集合。

そんな自分たちの目の前に飛び込んできたのは、浴槽に沈められた無数のATパーツと、異常過熱でオシャカとなった風呂釜に悲鳴をあげる友人家族の阿鼻叫喚な地獄絵図でした。
何故か同じ穴の狢という理由だけで友人と共にこっぴどく叱られ、ほうほうのていで友人部屋に逃げ込むと、懲りずにパーツのヤスリ掛けを手伝えと宣います。

何でも従来通りの鍋内煮沸&洗剤洗浄による離型剤落としじゃパーツが大&多すぎて埒があかず、一挙まとめて風呂場浴槽で試したものの熱量が足らず、ガンガン焚いたら風呂釜がイカれたとの事。

つまりは、とても離型剤がとれたとは言えないシットリしたパーツ油面を、大まかな表面処理も兼ねてヤスって一皮剥けと仰るのです。

そのサイズ故に事前準備しておいたという600番&1000番の業務用ロール紙ヤスリを思い思いに千切り、瓦のような巨大なATパーツを手に取って早速作業開始。

齢20を越えた野郎数人が、叱られた直後に部屋にこもり、数時間も寄って集って何か無言でゴソゴソやっているのを流石に不審に感じたのでしょう…襖を開けた友人家族らの見たモノは。

床一杯にうず高く積まれたATパーツの山と、部屋一杯に漂うキャスト粉塵により緑の濃霧にまみれた和室六畳の変わり果てた姿でした。

再び悲鳴をあげる友人家族らに追い立てられ、残り1/3のヤスリ掛けを残し、以降一切の出禁を言い渡される自分たち。
さすがに二十歳を過ぎた良い大人が、職場以外で二回連続こっぴどく叱られたのには酷くこたえました…帰路で皆で飲んだ缶コーヒーの何と苦かった事か。
寄合場を失い、以降サークル活動も自然消滅となった程…いや、これは盛り過ぎか。実際は皆仕事で忙しくて自然消滅したのです。まあ大きなきっかけではありましたが。

数年後、別に仲が悪くなった訳でも無いので「久々に元サークルメンバーで集まって呑もうや」という事になり、そこで何とか完成したという事で写真を見せてもらう事になりました。

そこには、サザエさん家みたいに居間中央のコタツに家族全員&猫達が入ってにこやかにレンズを見上げるお姿が。皆様久しぶり、お元気そうで何よりです。
んで、北海道の熊とか宮城のコケシ等の入った土産物を飾るガラス戸棚の中に、例のブツは飾られておりました…いや。何故によりによってこんな所に置くのよ。

「いやあ、苦労したよ!結局このためだけにサンダーと電動ドリル買っちまった。低速にしないとすぐ割れたり熱変色しちゃってさあ…」

…なあ。これ、只のスコタコじゃ無えよな?

「ターボカスタムよ。俺ァコイツが一番のお気に入りだからな」

あれか。スコタコに追加パーツキット組み込んだんだろ?

「んにゃ、一式買い直した。13万位だったかな?サフも塗料もリッター級で使うから、金がかかってしゃーなかったわ」

はあっ?!じゃあ俺たちが苦労してヤスったパーツは…すると奴は、バニラのようなニヤケ顔でこう宣いました。
「使ってねーに決まってんじゃん。さっき言ったろ?サンダーとドリル買ったって。いやあ、やっぱ機械だと早えよなあ。精度も段違いだしさ!」

うるせーよ。

「じゃあ何で最初からターボカスタム買わなかったんだって?…そんな先の事は分からない、だろ?」

ブン殴ってやろうかと思いました。


自爆・誘爆・ご用心。かように、また数多の関係各位の談話も示す通り「明らかに誰もが得しない」にも関わらず、一度関係を持ってしまったら最後まで「地獄(ボトムズ)に付き合ってもらう」羽目になるこの始末(そして絶対謝らない)。
本編の登場人物に成りきって「自己破滅の美学」というマゾ的な快感を求め、各々が己の役割を果たさんと敢えて苦難の道へと突き進むその姿は、まさに「狂信的な殉教者」。

デジタルな現在「課金名(迷)言」の中に「1ありす50万円」という単位がありますが、「1ボトムズ10万円」というのがアナログ当時な自分らの率直な感覚です(※)。

※…「課金騎兵モバマス」を見た時は、友人のボトムズ共を思い出し「上手い事 言うなあ…」と思ってました。

この連中の更に達が悪いのが、この「○ボトムズ」の数でボトムズに関する「発言権」を決めるその価値観。貢いだ分だけ「真の語り部」足り得る。逆を言えば、この条件を満たさずば「ボトムズを語る資格無し」(そんな無茶な)。
更には「他作品と一緒にボトムズを語る事」を極端に嫌うのです。初見の印象で「他作品に比べて地味」と言われ続けた事が「トラウマ」として根強く残り、一緒に語られると「ディスられるんじゃないか?」と思い「拒否」を生むのだそう。

そのクセいざ語りだすと、高橋監督自ら手掛ける「刹那的な戦場ポエム」な予告ナレーションよろしく、時に謎めかし、仰々しく、そして「むせる」。何とも面倒くさい言葉使いをドヤ顔でカマして来るのです…だから全然巧くないっての。疲れんなあ。

そんな「最低野郎共」の生態を間近に見てれば、そりゃあ語り合うのはもちろん、ほんの些細な軽口でさえ口にするのも憚るようになってしまいますよ。

なので自分にとっての「ボトムズ」の印象は、最早好きも嫌いも良いも悪いも無く、ただただ「一般人の認識」をしているのみ。

促されでもしない限り「アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントの陣営は互いに軍を形成し~」なんて説明なんざしないってもんなのです。

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尤も本記事によって「ボトムズ」という興味深いタイトルを俯瞰で見直す機会を得、ようやく当時のボトムズ好きな友人達に対しての細やかな「リベンジ」を果たせた気がしています。

…まあ、このネタを見た後で何を言われるか分かったもんじゃありませんが。

という訳で、足掛1年計5回もの永きに渡ってお送りしてきたスーパーミニプラ「青の騎士 ベルセルガ物語」レビュー。これにて〆となります。お付き合い頂き、ありがとうございました。


P.S.
そしてこの記事を纏めている最中、数ヶ月ぶりに最低野郎共からこんな「リベンジ(メール)」が届きました(※2020年秋頃)。


…いや、ホント勘弁して。地獄(ボトムズ)を見れば心が渇く。もう、そっとしておいてくれ…。