梅雨の合間の晴れた日の平日に筑波山神社(つくばさんじんじゃ)に参拝してきたので紹介したい。

 

当社は延喜式内の名神大社。近代社格は県社であり、神社本庁の別表神社でもある。

 

従って、一般的な感覚ではかなりの有名神社ということなのだが、実はこれまで未参拝で今回が初めての参拝である。

 

関東にあるこのクラスの有名神社で未参拝だったのは当社くらいなものではないかというくらいである。

 

調べてみたところ、当社への参拝により、関東の名神大社は離島を除いて全て参拝したことになる。実は、伊豆七島の神津島に名神大社が2社あるので、関東の名神大社巡拝完了とはいかないのが残念である。

 

どうして、これまで当社を訪れたことがなかったかといえば、理由は2つある。

 

1つは過去に見た当社の画像があまり私を惹きつけなかったから。ただし、この先入観は実際の参拝で完全に覆されることになる。

 

もう1つは、筑波山というのは非常に混雑する山として知られているからである。

 

筑波山は日本百名山の1つであるだけでなく、その中でも最も標高が低い山なのだそうである。登るのに手頃な山でもあり、頂上からの絶景が素晴らしい山でもあるので、とにかく登山客でごった返すのである。

 

とはいえ、いつか当社を訪れるだろうとは思ってはいた。

 

そして、絶好のタイミングが来たのである。

 

ハイシーズンとは言えない梅雨の季節。そして休日と比較すれば間違いなく人が少ない平日に、空が晴れたのである。

 

そして、最も重要なことは、その絶好のタイミングで当社のことを思い出したということである。これがなければ何も起こらない。思い出したということは、当社に参拝する流れだということである。

 

当社へのアクセスは、つくばエクスプレスの終点つくば駅から筑波山シャトルバスに乗り36分、筑波山神社入口下車である。つくばエクスプレスの各駅の券売機で「筑波山きっぷ」というのを買っておくとよい。つくばエクスプレス、筑波山シャトルバス、筑波山ケーブルカー、筑波山ロープウェイの切符がセットになっており、もちろん別々に購入するよりもお得である。

 

 

バスを降りたところにある大鳥居。境内入口までは徒歩数分。

 

 

 

はっきりとはわからないが、ここからが境内となるように思われる。

 

少々雑然とした印象であり、この時点では、あまり期待できそうな感じはしなかった。

 

 

 

あいにく神橋の修理中。最初は楼門かと思ったのだが、神橋だった。

 

境内入口の期待感のなさに加えて、工事中というアクシデント。ところが、この後すぐ、予想を上回る素晴らしい神社であることを実感するのである。

 

少し余談になるが、この工事を請け負っているのが金剛組である。世界最古の企業である。「おお、これがかの有名な金剛組か」となったのである。西暦578年に宮大工が創業。それ以来、神社仏閣の建築や修復などが専門分野である。

 

 

工事中の神橋の脇にやっと社号標。もう少し手前にあるべきなのではなかろうか。

 

 

 


 

 

私の当社を見る目が変わったのはここから。神橋の奥の領域を見て、すっかり感心してしまった。

 

石段参道左手の御神木、そしてその先の楼門が素晴らしい。

 

表現が難しいのだが、スケールの大きさを感じるのである。

 

この時点で私が事前に持っていた当社に対する先入観を捨て、少なくとも平均的な一宮と同等以上の素晴らしさであると感じた。

 

神橋が工事中でなかったら、どれだけ良かっただろうか。

 

 

 

楼門の先も期待を裏切ることなく、良い感じである。

 

石段を上ると拝殿だが、その前に。

 

 

楼門を振り返ってみると、こんな感じ。

 

 

 

拝殿。入母屋造(いりもやづくり)。

 

私が当社にあまり惹きつけられなかったのは、ネットでこの拝殿の画像を見てそう感じたということなのだが、実際には歴史と重厚感を感じさせるものであり、社殿後背の社叢が素晴らしいことと相俟って、事前に持っていた先入観は簡単に覆された。

 

ちょうど夏越の大祓(なごしのおおはらえ)の時期で茅の輪が出ていたので、茅の輪くぐりをしてから拝殿に進んで参拝。

 

実は筑波山神社の本殿はここにはない。画像の拝殿兼幣殿の社殿があるだけである。

 

御祭神はイザナギ、イザナミなのであるが、本殿はそれぞれ男体山、女体山の山頂にある。そう、筑波山というのは総称であり、男体山と女体山があるのである。

 

今回、男体山と女体山が並んでいる画像は撮影できなかったのであるが(バスの途中で見えるが撮影しなかった)、肉眼で見るとどう見ても男体山の方が高いのに実際の標高は女体山が高いのだというから不思議である。男体山の形状は富士山に似ていて美しい円錐形、女体山はもっとなだらかな形状をしている。

 

 

 

拝殿に向かって右手方向にある境内社。日枝神社と春日神社。

 

2つの神社、2つの本殿に対して1つの拝殿という形式である。

 

これ自体はたまに見かけるのであるが、説明書きに「割拝殿形式」と書いてあった。割拝殿(わりはいでん)は過去記事「鞍馬寺・由岐神社・貴船神社」に鞍馬寺境内の由岐神社の説明で出てくる。

 

これまでの認識だと、割拝殿というのは中央を通路として通り抜けできる拝殿を指すのだと思っていたのだが、ここでは通り抜けはできない。単に2社共通の拝殿というだけである。本当にこれを割拝殿と呼ぶのか疑問であるが、もしかしたら、昔は通り抜けできたのかもしれない。

 

 

さらに奥に進むこともできるし、当社は拝殿の奥の領域の社叢が素晴らしいので、是非見逃さないようにしていただきたい。

 

 

 

右手一番奥にある愛宕山神社。実は1回見逃してしまって、境内案内図を見直して見逃しに気付いて戻ってから参拝した。

 

 

今度は拝殿左手奥の領域。

 

 

 

素晴らしい社叢に、ちょうど紫陽花の季節で、美しい青い紫陽花。

 

 

 

朝日稲荷神社。

 

ここの御祭神が変わっており、議論を呼ぶ。

 

御祭神が書かれている案内板を撮影すれば良かったのに撮影し忘れてしまって、正確な記述がわからないのであるが、ネットで画像を検索したところ、御祭神は太田命(おおたのみこと)と大宮能売命(おおみやのめのみこと)と書かれていたようである。

 

稲荷といえば御祭神はウカノミタマなのであって、珍しいのである。

 

実は、太田命はウカノミタマと同一であり、大宮能売命とはウカノミタマのツインソウルの姫神様だということである。

 

大宮能売命については、丹後国二宮の大宮売神社(おおみやめじんじゃ)というのが存在する。

 

そして、この朝日稲荷神社の御祭神を書いた案内板によって、その姫神様の謎が解けたのである。「稲荷なのになんで太田命、大宮売なんだろう」という疑問から始まり、その疑問をうちの女神様たちにぶつけて解決したわけである。

 

御祭神が通常とは異なる名称になっている場合、実はよく知られた名称の神様と同一神であるという例であり、また、男女ペアで祀られている場合に実はツインソウルであるという例でもある。注意してみてみると面白いのである。

 

なお、その後ウィキペディアのオオミヤノメの項を読んだところ、伏見稲荷大社には大宮能売大神として祀られているほか、各地の稲荷神社でウカノミタマの配神として祀られているそうなので、私が知らなかっただけで、この男女ペアについては知られていたのかもしれない。

 

ただし、世間にはオオミヤノメ=アメノウズメという説があり、これは誤りである。過去記事「神社巡り 大國魂神社」では境内社として宮乃咩神社(みやのめじんじゃ)が出てきており、御祭神はアメノウズメとなっている。女神様たちによれば、これは二重に間違っており、本来の御祭神はオオミヤノメであるとともに、オオミヤノメをミヤノメと呼ぶのもおかしいそうである。

 

そして、間違って祀られている場合に御祭神はどうなってしまうのかという問題があるが、神社側でアメノウズメを御祭神としていても、神様から見れば明らかに間違っているため、この境内社の御祭神を実際に引き受けているのはオオミヤノメだそうである。

 

 

色々説明したいことがあって話が長くなっているのであるが、いい加減切り上げて、やっとケーブルカーである。ここから男体山頂を目指す。

 

 

8分で筑波山頂駅に到着。ここで山頂までの登山の前に、左側の展望台にあるレストランで昼食。名物の「つくばうどん」をいただく。

 

 

 

登山道は整備されているが、岩場もある。15分かからないくらいで山頂に到着。

 

 

 

男体山の山頂本殿。イザナギを祀る。

 

いつも思うのだが、山頂にどうやって神社を建てられるのかよくわからない。大変であることは間違いない。

 

 

 

山頂からの絶景。男体山は標高871m。

 

 

一度ケーブルカーの山頂駅まで戻って、今度は女体山頂を目指す。

 

 

 

 

こちらは男体山と比べればなだらかな登山道。わずか8分くらいで山頂に到着したかと思ったのだが、まだ途中だった。山頂までだと男体山と同じく15分くらいかかる。

 

 

せきれい石。この石の上に鶺鴒(せきれい)が止まり、イザナギ・イザナミに夫婦の道を教えたという言い伝えがある。

 

 

すぐ隣りにある鶺鴒稲荷神社。要するに、これが女体山頂の本殿かと勘違いしたのである。

 

 

少し先にあるガマ石。永井兵助という人物がガマの油売りの口上(一枚が二枚、二枚が四枚・・・)を考え出したのが、この岩の前だったという。

 

女体山は山頂も含めて巨石が多い。

 

 

 

女体山頂本殿に到着。イザナミを祀る。

 

まずは参拝。その後、その奥の巨石と展望のスポットへ。

 

 

女体山の標高は877mで、男体山よりもわずかに6m高く、ここが筑波山全体で最も標高が高いところである。

 

 

 

 

 

女体山頂からの絶景。

 

男体山頂では柵があったが、女体山頂では柵などなく、巨石群の上に立って何も遮るものがない状態である。それもあって、絶景だというだけでなく、非常に気分が良い。ただし、一歩間違えて落ちたら助かることはないだろう。

 

この女体山頂の巨石群の絶景スポットにはさすがに人が多く集まっており、20人くらいいたように思う。先客が巨石の上で休憩していたり、写真を撮っていたりして、あまりスペースがなかったのであるが、タイミングよく場所が空いたので、わずかな時間ではあるが巨石の上に立って絶景を楽しむことができた。

 

 

最後に女体山頂から見た男体山。富士山に似た形状の美しい山である。

 

なお、帰りはケーブルカーの筑波山頂駅まで戻る必要はなく、女体山頂から徒歩5分くらいのところにロープウェイ乗り場があるので、ロープウェイで下山である。

 

全体として、今回の筑波山神社参拝は非常に素晴らしい体験だった。感動した。

 

機会があれば是非訪れてみていただきたいと思う。

 

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