仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -33ページ目

屍マンモす

鈍色のほそい棒が立ち並ぶ
四角くて狭い場所だった。

外側には四方に白い壁があり
天からは太陽の子供みたいな光る玉がぶら下がっていて
俺の身体に突き刺さる管のようなものを
照らし出している。

ほそくてひ弱なニンゲンたちが
ほそい棒越しに
物珍しそうに俺のことを眺めている。

どうしてこんなことろにいるのだろう?

俺は溶けかけた脳みそから
最後の記憶をたどってみた。

……そうだ。
俺は老い、自らの死期を悟った。

だから群れを離れ、死に場所を探す旅に出た。
角のやつらを横目に歩き
牙のやつらに追われ
やがて背の高い氷山の谷を見つけ
俺は身体を横たえた。

やがてくる死と、再生のために。

だがこれはどういうことだ。
俺は再生の輪に乗ることもできず
以前と同じ身体で、また目を覚ましている。

これは悪夢なのだろうか。

一万年前…」「細胞の再生…

ニンゲンたちが、意味のわからぬ鳴き声を放っている。

こんなのは間違っている。
俺は覚悟を決めて旅に出たのだ。

……ああ、まどろみが帰ってきた。
そうだ。これでいい。これで俺はまた、正しく蘇る。

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カマキリはなかない

たった今ダンナを食べ終わったところだ。
いつも食べるバッタと大差ない味だった。

不思議と涙は出ない。

共に過ごした日々がほんの少しよぎったけれど
全ては子供のためだ。

遺伝子に刻まれた宿命に従ったまでだ。

ダンナの身体は子供たちが生まれる
卵の栄養になってくれるだろう。

思えばダンナはやせっぽちで
ろくに狩りもできないオスだった。

不器用で余計なことばかりして
はっきりいって目障りだった。

ただ一つ、褒めるところがあるとすれば
大抵のオスは逃げちまうってのに
自分から食べられに来たこと。

逃げもせず、抵抗もせず
黙って宿命を受け入れたこと。

そう考えると、あいつにもいいところが
あったのかもしれない。

カマキリはなかない。そもそも涙腺がない。

あたまをかきむしりたくなるほどなきたくても
なけないんだ。

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遠くみる、ゴリラ

思いだせない。
がんばるなんて大嫌いだったことは
覚えてる。

何もせず、ぼうっとして生きてきたことも
覚えてる。

最初からそうしたかったのか
それとも、そうせざるを得なかった
思い出したくない何かがあるのかは
分からない。

ゴリラには握力が1トンあって
本気を出せば大抵のものは
握りつぶせるらしい。

握りつぶしたいものはたくさんある。

斜めの目線とか
不意にわきあがる不安とか
風にあおられて泣きわめく虫どもとか
そういった類のものだ。

それは物理的な握力で
完全につぶすことはできない。

そうだ。

穏やかだねと言われがちなわたしは
怒っているのだ。
怒りが、わたしを行き永らえさせているのだ。

そしてその怒りが
誰かを傷つけたことがあるから
その記憶にフタをして
生きているのだ。

なぜフタをしたのかというと
わたしもまた、誰かの怒りによって
傷つけられたことがあるから
その気持ちが理解できるからだ。

遠くを見て忘れよう。
わたしはわたしの怒りと悲しみに
耐えられそうにない。

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