「今日、実家に泊まるしかないわね。」奈緒は諦め顔で言った。
 
「そうだな。疲れたしな。綾香ちゃんも泊まれよ。」江田は坂本綾香に気軽に言った。
 
「そうするわ。有難う。 作詞の作業のため、伊豆に行っんだけど、伊豆高原のワンちゃんOKの宿で、しかも露天風呂つき!すごく良かったんです。遊びたかったけど、森に囲まれているから、誘惑されるものが何もない。皆が遊んでいる声が聞こえないから・・・・・・・」坂本綾香は上機嫌で話始めた。
 
「2階にある寝室を見てみようか。」奈緒がソファーから腰を上げた。3人は階段を上って2階の寝室へ。
 
2階の寝室には、寝心地よさそうなベットが2つ。布団を敷けば3人は大丈夫だろう。
 
「お布団敷けば3人大丈夫ね。」坂本綾香は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
 
「僕は1階の和室に布団を敷いて寝るよ。」江田は先回りして言った。
 
「江田さんの仙台の実家素敵ね。今度、仙台で公演するときは、泊まりたい。」坂本綾香は軽い冗談を言った。
 
「国分町でも行って食事しようか?」江田は二人を誘った。 
 
「国分町に素敵なレストランあったわね。」奈緒は思い出したように言った。
 
「あのレストランか。シェフがフランスや東京のミシュラン星付レストランでの修業経験ある。クラシックなフランス料理をベースに色々な食材の組み合わせにより生まれる、味、食感のマリアージュを大切にしている。目で楽しめ食べれる。」江田は奈緒の言葉に咄嗟言った。
 
「フランス料理か。いいわね。」坂本綾香は上機嫌で言った。
 
 
 
  江田の実家は以前と比べると驚かざるを得ないほど改造されていた。網代天井仕上げにした玄関。ホール部分には吹き抜けを設け、飾り棚を造作し、その壁面には朱色クロスを使用して玄関のアクセントとした。3段の上がり框からホールへと続くフロアは、オークのなぐり調の床材に。玄関収納も造作している。
 
「え!以前の家とは全く様変わり。信じられない。」玄関に足を入れると奈緒は驚きの声を上げた。
「わぁ~ 素敵!」坂本綾香も声を上げた。
 
  和室の壁は壁は塗り替え、襖や障子、畳などの内装はすべて一新。南側にあった和室を減築し、広縁に面した開口部を大型のサッシに取り替えたことで自然光が良く入り、庭の景色も眺められるようになっている。
 
 和室の隣の部屋は和風カフェのような造り。
 
「凄いじゃない。義父さんカフェでも始めるつもりなのかしら。和の佇まいが素敵。」奈緒は和風カフェ風造りの部屋を見回した。
 
  リビングには暗さを解消するために、既存の梁を現しにして吹き抜けを設けてある。床暖房対応の床はチェリー材のフロア。
 
「お父さんもなかなかやるな。」江田はリビングのソファーを腰降ろすと言った。
 
 
 

 仙台市内における道路混雑は東京などの大都市とほとんど変わらない深刻な状況。地下鉄等の公共交通機関の整備が不十分である仙台市においては、他の大都市圏と比較して自動車交通への依存度が高くなっているのかもしれない。

 

 仙台市街部に入るとノロノロ運転を余儀なくされた。やっとのことで、江田の実家に到着すると薬医門造りの門は改修工事をしていた。おそらく、江田の父親が改修工事を依頼したのだろう。

 

 トヨタヴィッツが黒色漆喰塀の前に止まっている。ポルシェをトヨタヴィッツの後ろに止め、車を降りてトヨタヴィッツに近づくと、運転席のドアが開いて、美しい女性が運転席から姿を現した。坂本綾香だった。

 

「今、着いたばかりなの。新しくトヨタヴィッツハイブリッドを買ったの。新車であなたのマンションに行ったんだけど。留守だった。あ 家に連絡した。怒られたけどね。は。は。は。」坂本綾香は悪びれる様子もない。

 

「私、車に乗ると衝動的に出かける悪癖があるの。以前、サッカーの中田選手の会いたくて、車で彼が住んでいる韮崎まで行ったことあるのよ。」坂本綾香は付け加えた。

 

「どうして、僕が宮城県にいるとわかったの?」江田は不思議そうな顔をして言った。

 

「あなたのfacebook見たの。江田さんの実家に行くんじゃないかと思ってね。」坂本綾香はこともなげに言った。江田は坂本綾香の言葉を聞いて、iphoneで自分のfacebookに被災地の写真をUPしたことを思い出した。

 

奈緒が二人で話しているところにやって来た。

 

「あら。綾香さん、どうして?」奈緒は、一瞬、驚いたような顔した。二人の美女が並んでいるのを見て、江田はあたりが一瞬明るくなったように感じた。

 

早速、江田はiphoneを胸ポケットから取り出して坂本綾香の父親に連絡。

 

「娘から連絡ありました。やっぱりそうでしたか。仙台に行ったんですね。迷惑かけてすいません。お嬢様育ちなもんですから・・」坂本綾香の父親は申し訳なさそう言った。

 

「心配なさらないで下さい。それにしても悪癖ですね。」 江田は軽い冗談を言うと、電話を切

った。