「娘が車で出て行ってから、2日も家に戻らないんです。以前も、車で出て行って家に戻らないことがあったんですが、その時は、娘があなた様のマンションの周囲を車で回っていたということがあったんです。
今回も、あなた様のマンションに行ったのではないかと・・・ 車であなた様のマンション付近を回ってみたんですが・・・ 見当たらないんです。」坂本綾香の父の心配気な声がスマホから聞こえてきた。
以前、坂本綾香の自宅を訪問した際、坂本綾香の父親に手渡した名刺に書いてあるスマホの番号に電話をしてきたのだろう。
「私は、今、宮城県にいるんです。」江田は咄嗟に言った。
「宮城県にいるんですか。」坂本綾香の父親の声の調子が少し変わった。
「ひょっとしたら、私が仙台にいるのではないかと思って、綾香さん、車で仙台に向かっているのかも知れません。何か情報があればすぐに連絡します。」江田は坂本綾香の父を安心させるように言った。
「すいません。よろしくお願いします。」坂本綾香の父親は電話を切った。
「綾香ちゃん、2日も家に戻っていないらしい。」江田は奈緒に手短に言った。
「え! そうなの。」奈緒は少し驚いたように言った。
「あ そう言えば、以前、綾香ちゃんと仙台の実家に行ったことがある。そのとき彼女にgooglemapでナビさせたことがある。」江田は思い出したように言った。
早速、坂本綾香のスマホに電話。
「ル、ル、ル」しばらく呼び出し音が続いた後、留守電登録音声に変わった。
坂本綾香の父親から電話があってからすぐ、二人はカフェを出て、ポルシェに乗り込んだ。
「綾香さん、彼氏と何処かに旅行に出かけたんじゃない。」奈緒は車の助手席に腰を降ろすと言った。
「とくにかく、僕の仙台の実家に行って見よう。」江田はキィを差し込んで回した。
「え! 仙台の実家?」奈緒は驚いたように江田の顔を見た。
江田は無言でポルシェを発進させた。