大吉のおみくじには何か人喜ばすものがある。たとえ、ネットおみくじであっても。

PCの画面に表示されたネットおみじくじを見た時、何故か道夫の心の中は幸福感で一杯になった。

  facebookを立ち上げると、facebookで親しくなったモデルをしている超美人のロシア人モデルからメッセージがあり誘われた。

 

 通常facebookで女性から誘われることなどない。

 

「大吉のおみくじのご加護だな。これは。」道夫はそう呟くと、既に立ち上がっているメッセンジャーに書き込んだ。

「AKIBAでどう?」

「OKよ。(⌒-⌒)ニコニコ...」メッセンジャーに文字が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「娘が車で出て行ってから、2日も家に戻らないんです。以前も、車で出て行って家に戻らないことがあったんですが、その時は、娘があなた様のマンションの周囲を車で回っていたということがあったんです。

 

 今回も、あなた様のマンションに行ったのではないかと・・・ 車であなた様のマンション付近を回ってみたんですが・・・ 見当たらないんです。」坂本綾香の父の心配気な声がスマホから聞こえてきた。

 

 以前、坂本綾香の自宅を訪問した際、坂本綾香の父親に手渡した名刺に書いてあるスマホの番号に電話をしてきたのだろう。

 

「私は、今、宮城県にいるんです。」江田は咄嗟に言った。

 

「宮城県にいるんですか。」坂本綾香の父親の声の調子が少し変わった。

 

「ひょっとしたら、私が仙台にいるのではないかと思って、綾香さん、車で仙台に向かっているのかも知れません。何か情報があればすぐに連絡します。」江田は坂本綾香の父を安心させるように言った。

 

「すいません。よろしくお願いします。」坂本綾香の父親は電話を切った。

 

「綾香ちゃん、2日も家に戻っていないらしい。」江田は奈緒に手短に言った。

 

「え! そうなの。」奈緒は少し驚いたように言った。

 

「あ そう言えば、以前、綾香ちゃんと仙台の実家に行ったことがある。そのとき彼女にgooglemapでナビさせたことがある。」江田は思い出したように言った。

 

 早速、坂本綾香のスマホに電話。

「ル、ル、ル」しばらく呼び出し音が続いた後、留守電登録音声に変わった。

 

坂本綾香の父親から電話があってからすぐ、二人はカフェを出て、ポルシェに乗り込んだ。

 

「綾香さん、彼氏と何処かに旅行に出かけたんじゃない。」奈緒は車の助手席に腰を降ろすと言った。

 

「とくにかく、僕の仙台の実家に行って見よう。」江田はキィを差し込んで回した。

 

「え! 仙台の実家?」奈緒は驚いたように江田の顔を見た。

 

江田は無言でポルシェを発進させた。

 国道45線で宮城県中部にある宮城県七ヶ浜町に向かった。

 

 七ヶ浜町は、仙台市中心部から東に約20km、南は太平洋に面し、北と東は松島湾と三方を海に囲まれ、西は仙台市、多賀城市、塩竈市と隣接する、松島湾の南西に突き出した半島状の形態をなしている。七ヶ浜町では、東日本大震災で100名を超える犠牲者を出した。

 

 七ヶ浜町は東北最古の海水浴場、菖蒲田浜があり、背後には約500世帯の住宅が密集していたが津波に押し流され、跡形もなくなった。防波堤も崩れ、白砂青松で知られた砂浜も大きくえぐられている。

 

 国道45号線から、七ヶ浜町内を一周する県道58号線に入って、流木ピアノの演奏会が開催される予定になっている七ヶ浜国際村に向かってポルシェを走らせた。

 

 途中、海岸沿いにあるログハウス調のカフェレストランに入った。最近オープンしたばかりの店。海岸沿いにあるのでロケーションは頗るよい。海に入らなくてもてもラグジュアリー&リゾート感のある店舗になっているので楽しめそうである。

 

 店内は綺麗で清潔。カップル向けの雰囲気である。パスタは2人前から注文できる。早速、パスタを注文した。

 

「運転疲れたろう。」江田は奈緒の少し疲れたような顔を見て言った。

 

「うん。ここから運転代わって。」奈緒は白い高級バックからキィを取り出して江田に手渡した。

店内にはビートルズの「イマジン」が流れている。

 

 江田がアップルウォッチを見ると午後2時30分。遅いランチである。

 

「今日は七ヶ浜国際村が最後だな。」江田はパスタのセットメニューのドリンクに手をやった。

 

と、江田のiphoneが鳴った。

 江田はアップルウオッチの緑色の電話アイコンを押した。iphoneに着信と同時にアップルウォツチにも着信があるのである。

 

「江田ですが。」江田はアップルウオッチに向かって言葉を発した。

 

「江田さんですか?坂本綾香の父親です。突然電話して申し訳ありません。実は娘が娘が・・・」坂本綾香の父親の慌てたような声がアップルウォッチから聞こえてきた。