スーサイド・スクワッド [ネタバレ覚悟!] | 冷やしえいがゾンビ

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めっきりノータッチですが、メインは映画に関する垂れ流し。

スーサイド・スクワッド

 

見ました。 http://wwws.warnerbros.co.jp/suicidesquad/index.html 

 

 

DCコミックスを元にした映画世界「DCエクステンデッド・ユニバース」に含まれる作品。そんじょそこらのヒーローでは太刀打ちできない非常事態を収束させるべく集められたのは、危険で悪い超人類(メタヒューマン)!

 

 

予告編を見る限り、「めちゃめちゃ面白そうじゃん!今年ナンバーワンでしょ」って感じでしたが、残念ながらナンバーワンではなかったですね。

 

かといって「こりゃダメだ」って感じでもなく。なんとも評しがたい大作映画でした。本編を振り返っていきます。ネタバレしていきますよーーーー

 

まず冒頭にウィルスミス演じるデッドショットというキャラが登場。このシーンの印象は「こんなに駆け足でキャラ紹介するの?」「編集下手だな」って感じ。

 

続いてマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クイン登場。これまた編集下手。妙にバタバタしててそれでいてキャラの魅力があまり見えてこない。正直言って「大丈夫かよ…」と不安でした。

 

この2シーンが映画全体の中でかなり浮いてて、けっこうな違和感。スーサイドスクワッドの中でも華のある2人を強調するために無理やり付け足したかのような…

 

次のシーンは政府のお偉いさんと思われるスーツ姿の黒人おばさんが「スーパーマンが去った今、どうやって身を守るの?」「悪人を集めて特殊部隊を結成するわよ」「そのために私が来た!」と宣言するのですが、そのセリフの直後にタイトル「SUICIDE SQUAD」が表示されます。「そのタイミングでタイトル出すのー!?」「おばちゃんはスーサイド・スクワッドではないだろ!」と思いました。まだこの段階でも不安濃厚。

 

タイトル後に、おばさんが「部隊に勧誘しようと思っている悪人たち」についての情報をモノローグで語りながら紹介していくのですが、ここからやっと映画「スーサイド・スクワッド」が始まったかのような感覚でした。

 

改めてザクザクとハイテンポでキャラを紹介していくのですが、デッドショットとハーレイクインの事もまた説明するので「だったらアヴァンタイトルのプチ紹介はなんのためにあったの?」という疑問が浮かびました。

 

ただ、テンポは良いしアプローチも下手じゃない。キャラクターの個性と魅力はある程度伝わりました。特にウィルスミスが演じてるデッドショットなんて、ワルとしての面をどこまで出せるのかな?と思ったんですが、金に汚く、ウデは確かな、銃のプロ。娘には弱い。簡潔に描けてる。バットマンがからんでくるのも良かったし。

 

ただ、「あんなキャラいますよー」「こんなキャラもいますよー」と紹介が続くと「えーと、なんのために部隊結成するんだっけ?」というモヤモヤ感が湧き上がるのです。

 

「具体的な危機、今作で打倒すべき敵、排除すべき危険因子」を提示しないままにスクワッドメンバーの紹介を続けているため、緊張感が薄まっていきます。

 

キャラ紹介のテンポに乗る事ができれば「楽しいなーこの映画!」という感覚になるかもしれませんが、私個人としては「うーん」と思いました。「部隊結成そのものは目的じゃないよね?」とかモヤモヤ。近頃自分の中でよく使ってる表現で言えば、「あらすじに載るような展開」をもう少し早く描写してほしかった。

 

なんだかんだでワルい奴らが集められ、首に爆弾を埋め込まれて強制的に入隊させられます。何気ない描写で、さらに個性が引き出されていくスクワッドの面々。この辺の「ワルならではのジョークセンス」は、デヴィッド・エアーらしさが発揮されてる部分でしょう。

 

ラスボス・最終目標をどう設定するのかな?と見る前から思っていたのですが…正直下手ですね。あのキャラをラスボスにするのであれば、「取り返しのつかないところ」に至るまでに、少しずつ不安がふくらんでいくように段階を踏む必要があったと思います。

 

お祭り映画とはいえ、サスペンス性をもっと高めていく工夫は盛り込めたはず。唐突に「はい、今回のラスボスはこいつです」と提示されるような…全体的に間の悪さを感じました。

 

それでも退屈せず、それなりに楽しく見れたのは…スーサイドスクワッドという設定の強さに依るところが大きいのですが、デヴィッド・エアー監督の語り口のうまさも貢献していると思います。デッドショットがスクワッドに加わる条件を提示する(押し付ける)場面とかね。(そこはそこでウィルスミスのチカラか?)

 

あとは紅一点のハーレイクインでポップな空気感を作るのが上手かったです。上手いというか…ハーレイクインに頼りすぎじゃないかな!キャラクター自体を魅力的に描く、物語を進めるために一言言わせる、苦境を打開するためのアイディアを提示させる…色んな形で彼女は目立ちます。ハーレイクインというキャラをブレイクさせようとする意図さえ感じられます。

 

元は正常な精神科医だったハーリーン博士がどのような経緯でハーレイクインとなったのかもしっかり描かれてる。序盤ではなく、中盤以降に回想として描くところも特別扱いの証拠。

 

しかし演じてるマーゴット・ロビーのポテンシャルが高い! プレッシャーもあったでしょうが、とてつもなくキュートなキャラクターとして見事に成立させてます。

 

ミッションを遂行していくスクワッドは、かなり遅いタイミングで目的とラスボスを知る事になります。このタイミングは観客がそれらの情報を知るタイミングと同じ。観客にスクワッドメンバーへの感情移入を誘うには有効な手法かもしれませんが…若干デメリットの方が大きくなってしまっているように感じました。

 

スクワッドのメンバーは確かに強いのですが、常にチームを抜けて逃げようとしています。ここがただの寄せ集めでなく、全員がBAD GUYである所以だったように思います。

 

というか、すぐチームを抜けたがる役どころもハーレイクインが担ってるんですよね!!

 

首に爆弾埋まってるから一人で離れても意味ないんですけど、ちょいちょい刺激を与えてくれる存在。一人になったところで敵に襲われても、かなり強いから切り抜けてしまう。そこにチームメンバーが追いつくと「どうしたの? さあ行きましょ」とか言ってくれるから小悪魔的。

 

そんなハーレイクインを自由の身にすべく、彼女の王子様・ジョーカーが登場。悩みの種である首爆弾も、ジョーカーの手にかかれば即解除…その流れは分かるんですが、爆弾のプロフェッショナルという設定が前提として描かれていないのでチート的な展開に見えなくもないです。

 

ジョーカーのお迎えでチームを抜けたハーレイクインがどうなるかは本編を見てのお楽しみ。

 

いよいよラスボスの元に近づいたところで、スーサイドスクワッドがバラバラになる展開に。ここはエモーショナルで上手い展開だと思います。あくまでも強制でしかなかったチームが、チームでいる意味を無くすのです。これ自体は素晴らしいし、この映画で絶対に必要な展開でもあるんですが、結果的に映画のリズムが完全に停滞してしまう。。。このタイミングでそれやるの!? と、一番落胆した展開でした。

 

しかしその後にスーサイドスクワッドが本来の目的に立ち返っていく、そのきっかけとなる、あるセリフはお見事!最高!!うならされました。本当に何気ないセリフなんだけど。

 

いよいよクライマックス。ラスボスとの対面です。前フリは色んなところで下手くそでしたが、なんとか辿り着きました。

 

ところが今作のラスボス。とある目的を持って活動してます。

 

それは「最終兵器」を作ること。得体のしれないパワーで、「最終兵器」を作ろうとしている。これが完成したら世界は、文明は破滅してしまう。ってこの展開…新鮮味がないよーーー!!! なにしろ、ついこの前見た『ミュータント・タートルズ:影シャドウズ』と同じなんだよーーー!!!

 

なぜこの展開がフレッシュさを感じさせてくれないのか。それはずばり

 

完成するもしないも、製作者・監督のさじ加減次第

 

だからです!

 

ゆえに「完成を止めるためにはどうすればいいか」、主人公サイドが頭を使って手段を探そうとするのが通例。なんか面倒くさくて、難しそうな条件を、勇気と知恵とパワーで達成し、完成を食い止める。こういう展開ならまだなんとか面白さはキープできたかも。

 

しかしスーサイド・スクワッドは…「ラスボスを倒せば止まる」という条件に落ち着いてしまった。その戦闘はそれなりに楽しいものの、様々なアイディアにあふれた楽しさがあるかというとそうでもない。キャラクターの個性がさほど生かされていない。

 

そういう意味ではなかなかに残念なクライマックスとなってしまいました。ただ、ラスボスを倒すために必要な要素が、最終的に「勇気」だったところには納得。「勇気が大事」展開って個人的には好きなんです。伏線も効いてたし。しいて言えば「スーサイド」スクワッドだけに、自己犠牲によって命を落とすキャラがいても良かったように思います。

 

大団円の後は恩赦で釈放…とは行かずに再び収監。それでも、ささやかな報酬を手にしたスクワッドメンバーが幸せそうにしてるのを見ると嬉しくなりました。

 

というわけで、なんだかんだで嫌いになれない映画でした。上記に書いたのは修正案や代替案を含めた批評のつもりです。時系列をうまく動かせば、もっとサスペンス性を高められたんじゃないか?とか、目標設定をこうすべきだったとか、根本的な部分で納得していないものの、腹が立つほどのいびつさではなかったし、今作のアプローチの方向性も多少理解できました。

 

ウィル・スミスとマーゴット・ロビー、ジョエル・キナマンというキャストも魅力的でした。本当はキャプテンブーメランをトム・ハーディがやる予定だったらしいですが、あの人を引っ張ってくるには少し脚本が弱かったかな。

 

バットマン率いる「ジャスティスリーグ」と対になる悪の軍団を成立させるためだけの映画とも言えますが、その中にデヴィッド・エアーの作家性も盛り込まれていたし、キャラへの演出力は流石。『バットマンvsスーパーマン』の惨状よりは全然マシだと思いますよ。

 

DCの無茶振りに対して、なんとか次第点で切り抜けた今作、私はオススメしたい一本です。