「全国の小学校で35人以下学級」(第372号2021年1月号) | 仙台市青葉区八幡2丁目・小田眼科ニュース

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第372号2021年1月号「全国の小学校で35人以下学級」の話



 昨年末に、来年度予算案をめぐる閣僚折衝が行われ、萩生田光一文科相と麻生太郎財務相が、公立小学校の1クラスの人数を25年度までに全学年で35人以下に引き下げることで合意しました。中学校については今後の検討課題となりました。
 現在の規定では小学1年生のみが35人で、小学2年生から中学3年生までは40人学級となっています。文部科学省は来年の通常国会に義務標準法の改正案を提出することになります。
 仙台市では、仙台市長の郡 和子氏が市長立候補中の公約を守り、すでに、平成30年4月から、35人以下学級を中学校2年生まで実現しています。

 それで、今月は、「全国の小学校で35人以下学級」の話です。

 1958年に成立した義務教育標準法では、1クラス当たりの上限人数を50人と定めましたが、1980年度に一律ではなく「45人から40人」と幅を持たせて引き下げました。さらに民主党政権下の2011年度には小学1年生のみ35人に引き下げましたが、財政難を理由に他の学年では据え置かれました。
 今回の定数一律引き下げは約40年ぶりのことです。来年度は小学2年生を35人とし、5年かけて段階的に引き下げ、25年度に全学年で35人学級となる予定です。
 これまで、教員が一人一人の子どもと向き合う時間を確保し、きめ細かな指導をするため、少人数化への要望が強かったのですが、財政難を理由に受け入れられませんでした。
 少人数学級が成立する追い風になったのは、新型コロナウイルスの流行でした。感染防止のため教室での三密を避ける必要が叫ばれ、与野党や全国知事会、小中学校の校長会など23の教育関連団体が、少人数化は不可欠と訴えました。
 今回の決定で、2025年度までにすべての公立小学校は全学年で35人学級が実現する事になりましたが、中学校の少人数学級はまだ認められていません。
 経済協力開発機構(OECD)が2年前に実施した調査では、日本の小学校教員の仕事時間は週54時間、中学校教員は週56時間で、ともに世界最長でした。その長時間労働の主な要因は書類作成や部活動の指導など授業以外の業務でした。
 さらに近年は、情報通信技術を授業に活用することが求められるなど教員が担う業務は増加傾向にあります。1学級で5人減ったからといって仕事量が激減するわけではありません。「きめ細かな指導」には多忙解消が不可欠です。
 小学校を35人学級にすることで、教員を5年間で約1万4千人増やす必要があります。18年度の小学校教員採用試験の競争率は全国平均で2.8倍と過去最低でした。この教員希望者の少なさは長時間労働と無関係ではありません。
 また、教員の数だけではなく意欲と情熱をもって子どもと向き合う教員の確保が重要です。
 日本では教員の数はクラスの数で決まる仕組みのため、少人数学級にしないと教員の定数を増やすことができません。貧困、虐待、発達障害など手厚い支援が必要な子どもは急増し、教員に求められる仕事は増え続けています。これまで、文科省は教員を増やそうとしてはきましたが、増やせたのは1年任期の非正規教員のみでした。非正規の教員では担えない仕事が多く、今や小学校で3割強、中学校で6割弱の正規雇用の教員が過労死ラインとされる長時間労働を余儀なくされています。
 文科省や教育関係者から「少人数学級の成功は大きな一歩だ」という声もありますが、質の高い教員や教室数の確保、教育・労働環境の改善など、まだ教育には多くの課題が残されています。

小田眼科医院理事長 小田泰子
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