「東京のカエル」 -2ページ目

「東京のカエル」

駄目な2人が今日も歩いていく

街で見かける、頭の悪そうなカップル。
2人が2人して人前でいちゃこら、ぺちゃぺちゃまわりが見えず、
常識もないことをうかがえる痛々しいカップル。

確かに頭は悪い2人だけど、
その部類のことではないと思いたい。

違う、私が言いたいのは、
私達は、2人して仕事ができない。
会社で仕事が一人だけできず、その上まわりの目を怯えて
なおさらヘコヘコ頭をさげながらもずっと耐えて笑ってるタイプの方。


舌が出ている犬を見て「かわいいね~」と言ったら、
昔兄に言われたことがある。

「舌が出ている犬ってあんまりほんとはよくないよ」




私とモリタは、片方がかわいいチワワで片方が賢いドーベルマンや、おっとりしていても
どっしりと構えたセントバーナードでもない。


私達は2人して、舌を出している犬なのだ。





人生で初めて会社という場所に27歳で入った。
我慢をすれば、お金は今までの極貧とは違ってまともに暮らせる。
そう思えば、我慢をして通うことはできる。


だけど、私は仕事ができない。
そんでもって、年下の子もいる中で一人怒られるのが恥ずかしいもんだから、
ヘコヘコ頭を下にさげてへへへと笑っては、パソコンをカタカタ静かに打つ。

向いの同期の山本は、とにかく頭の回転がすこぶるよい。
仕事も美貌も備えた二つ年上の同期。

「美園ちゃ~ん、これ美園ちゃんがやったやつやんなぁ?」
私と彼女は2人でペアになって1つのフォーマットを入力しなければならない。
そこでどちらかがミスをすればどちらかの責任になる。

あごに肩肘をついてパソコンのモニターの横に上から見下ろすニヒルな笑いをして顔を出してきた。
まわりにも聞こえる声でそう言う彼女の顔が、私はこの世で一番下品に見える。

もちろん、それは私の失敗ではあった。

「あぁ、すみません……!うっかり間違って登録してたかも、、教えてくれてありがとうございます!」


なにが、「ありがとうございます」や。
私はこの社会で、なぜ、人から何か言われるたびに「ありがとうございます」と
言わなければならないのかよくわからない。

電話だよ、と電話に出た社員に対しても「ありがとうございます」、
「指摘していただいてありがとうございます」。






「ありがとうございます」











モリタときっとおんなじように、向こうの世界でどなられて
何もないふりして必死にパソコンに向かっているのだろう。


私達は言い返す能力もないほど、駄目な2人。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーつづく






















モリタとつきあってかれこれ1カ月が経つ。

モリタはすさまじく大人になってきている。

やはり経験と慣れ、ってすごいな。


チューすら恥ずかしくてなかなか自分からできなかったモリタ。

今じゃあたしが寝てようが何してようが後ろからくっついてくる。
モリタ成長。

年下に限らず前々から彼氏ができると悩んでたこと、
たぶん誰もが乗り越える第一関門であろう、

トイレ

まず、うちの家は驚くべきほど狭く、
トイレの音はだだ漏れ。
ダミー音なんか作ってもばれる。

そう、ダミーでは隠しとおせない。

ならば……



モリタに女のトイレを慣れさせる、私も恥ずかしさをつきやぶり
トイレにこもれるようになる!

ということ。

まず、私が実践したのは、
モリタ自信が心おきなく男らしく
トイレに私の前でこもれるようになること、
だと思った。


そこで…、モリタがおなかがいたいといった際には
必ず「トイレで出してきなよ~」と笑って言うようにした。

すると最初は「いや、出ないから」なんて言ってたけど、
次第に、え、していいの?と心を開き「よし、こもってくる!」

というようになった。
問題は、私の方。
私がまだモリタに対して恥ずかしかった。
まあトイレで思わず出た情けないぶざまな音を聞いてほしい人も
よっぽどじゃない限りいないだろう。

最初はお風呂に入ったふりしてシャワーの音でごまかしていたけど、
せめて音はイヤだけど、私もトイレで大がしたい!!!!!!!!!
と言えるようになろうと頑張った。

何回か勇気を決してトイレの話になると、
「出してこようかな、、」とおなかをさすりながら
言うようになった。



あえて
ここで言うが、これは私という性格を考えて本当にこのセリフすら言えないくらい
人の目を気にするのだ。

だからこのセリフにはコッパズかしさと恥じらいがあったけど、
モリタも笑顔で「出しちゃいなよ!」というようになったのである。


おかげでなんとかトイレがしたい(大)ときは、お互いに言えるようになったのだ。




あとは、、、、、いかに音を隠すかである。
~プロローグ~


私の性格からして、
毎日メールも電話もしない。
だいたい用があるときと、
町歩いてて教えたいものがあったときとかしか。

メールするなら会おうよ、って思ってしまうのだ。
そして電話もなんかよそよそしくて無理に会話しているみたいで嫌。

だから全く連絡がないと森田はふと電話やメールをしてくる。
「何してるの?」
とか
「声聞きたくなった」
とか。。



あ、、あたしこんなの頻繁にやられるの無理、、
会いたいなら会いたいって最初から言えばいいのに。。



そう思った最近ちょっと嫌気がこみあげてきそうになっていた。
「だめだめ、それが嫌なら、、、、、
じゃあこういうときは自然にこうすればいいっていう行動に慣れさせたらいいんだ!」
って考えを改めてみた。



森田は会いたくても素直に言うことに慣れていない。
でも、あたしだってたぶん最初はそうだ。
緊張するし慣れないし素直に会いたいなんて言えない。
だからわざとらしくバレバレな用件を作るんだった。
でも相手からしたらたまにそのよそよそしさにイライラする。


彼氏なんだし気をつかうことない。別にちょっとでも会いたいなら会えばいいし、
まるまるその日をあたしのためにあけることなんてない。森田の生活する一日の中で
会いにきたいと思ったら会えばいいし私も会いにいく。

私も森田もまずは自分のことをちゃんとしてからだ!



そう思って実行したのが、会いたい夜は
「今から仕事終わって帰るとこ。今日は森田んちで寝るーーーー」
と電話してさっと寝るときなどわりかし近所なので行くことにした。

そんな感じで
わざわざ用件作らなくても会いたいとき、今日は一緒に寝たいときなんかは
自然に会えるように必死でチャリをこいで森田んちに行っては、
そこから朝仕事に行ったりしていた。



最近は森田から「今日仕事終わって予定あるー?ごはん作っとこうかー?」
なんて言うようになってきた。

自然にいろんな行動が私に対してできるようになってきた森田。





ふぁーかわいっ!