ほそかわエアミュージアム  | 蝋画塾 Atelier Berankat のブログ

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第二次大戦中に開発された、「蝋画」という描画技法を紹介するブログです。

 

元荒川(今春に撮影)

 

私の住居からさほど遠くない場所に、利根川水系の一級河川元荒川が流れている。

台風19号が上陸した日、ネット上に表示される水位の変化を見守っていた。

これまで関東に来る台風に危機感を感じたことはなかったが、今回は違った。

大事なものと布団を家の2階に上げ、その夜はそこで就寝した。

 

台風一過、幸いなことに元荒川は氾濫する事もなく家にも被害はなかった。

2階に上げた物の中には、大阪府池田市で展示予定の制作途中の作品もあった。

 

 

上の写真は水位が減少に転じてきた翌夕方に撮影した元荒川。

緑の草が水に浮いて見えるところは、本来は水のない河岸。

 

気象衛星ひまわりの台風19号の赤外線写真(気象庁より)

 

 

最近頻発する自然災害の原因のひとつに、地球温暖化がよく挙げられる。調べてみると、CO2をはじめとする温室効果ガスが、地上からの赤外線を吸収し、それを再放射する時の熱で空気が暖められるという。

 

これまではその働きによって地表は適度な気温に保たれてきたが、人間の営為によってCO2量が増え、それに伴い放射される赤外線量も増えたため、温暖化が加速し気候変動を起すまでになった。

 

各国が話し合いでCO2の排出量をコントロールしようとしているが、国同士の他のあらゆる話し合い同様、利害が絡むため小さな合意の忍耐強い積み重ねが続いている。

 

 

CO2を吸収し酸素を排出する植物は、この大気のバランスに大きく関わっている。

これも人間の営為により、地表の森林は減少の一途を辿っている。

 

植林を行なうことで森林の減少分を相殺する取り組みも行なわれているが、植林と伐採のサイクルを長期的な見通しで管理し続ける必要があり、即効性はない。これも忍耐強く地道に推し進めていかなければならない。

 

植物が吸収したCO2は、枯葉や枯れ枝として地に落ち土壌に蓄積される。森林の成熟に伴い蓄積量は増え、成熟しきった時点で平衡状態になる。森林の面積が増えれば、大気から土壌に移行するCO2が増えていく。

 

 

人体も赤外線を放射している。今回の展示では、赤外線センサーによって会場内の人の動き、体温や気温の変化に連れてランダムに明滅するライトボックスを設置する。

 

 

ライトボックスの透過光で葉を観察すると、葉脈の入り方や流れ、規則性、色合いの濃淡の繊細な変化が明瞭に見て取れる。その色素の沈着のあわいに、古いアルバムの先祖の姿が浮かび上がる。

 

私が葉に加えた作為は、太陽光が届く量を葉の部分によって変えることで、緑の葉が枯れて茶色に変色していく濃淡が人の姿に成るようにコントロールしたこと。

 

展示終了後、先祖の像を焼き付けた葉は採集した場所の土に戻し自然の循環に還す。

画像の定着に感光剤などの薬品を使わず、太陽光のみで行なう理由はそこにある。

 

このヴィジョンにおいて作品を展示するという行為は、葉が枝から落ち、土へ還るまでの過程の一部となる。

 

大阪府池田市の市制施行80周年記念として企画されたこのイベントは、「人間と植物」をテーマに掲げている。

展示ヘ向けた作業を通し、植物との関わりを改めて再考する機会を頂いたことに感謝したい。

 

 

細河エアミュージアムHP→ https://air-museum.art/?fbclid=IwAR3vRJGmfcJv-UU8kSokPNieV8DZm08uMSGMyx9bi2xwQJHDboCDBPRQL44