化学が得意な高校生はValence/Valencyという言葉を知っているのではないか?英文法にValence/Valencyの概念を取り入れたのがHuddlestonとPullumというThe Cambridge Grammar of the English Languageの著者です
優秀な理系の生徒が英語を嫌いな理由
私の知り合いに極めて優秀な理系の人がいた。数学や物理では誰もが認める才能を持ちながら英語だけはどうしても好きになれない、英語の成績が良くない、とこぼしていた。「英語は論理がない」「例外ばかりで法則が見えない」と彼は言った。彼にとって英語は、理解ではなく暗記を強いる“先の見えない例外の塊”だった。
しかし、英語に論理がないのではない、皆さんが日本の学校、塾、予備校で習う学校英文法が論理がない、のである。もしも彼が、英文法をCGELという書籍の理論で「構造的な体系」「化学的な結合」として学んでいたなら、きっと英語が好きになっていただろう。英語は、本来、整然とした構造科学(structural science)なのだ。そして、その核心にあるのがValencyという概念である。
英語文法は「構造の化学」である
現実の英文法は、単語の意味の集合ではなく構造の結合体系である。単語はそれぞれ、ほかの要素と結びつく“手”をもっている。この“結合の手”こそが valencyである。化学では、原子(atom)がvalenceによって他の原子と結びつき、分子(molecule)や化合物(compound)を形成する。英文法においても同様に、語(lexeme)は valency に基づいて句(phrase)を形成し、句は節(clause)へ、そして文(sentence)へと構造的に発展していく。Word(語) → Phrase(句) → Clause(節) → Sentence(文)は、まさに化学における Atom → Molecule → Compound → Reaction に対応するのである。