急に思い出しました。
夏の夜にふさわしい怪談でもしてみましょうか。
私たち中年になると、周囲ではお祝い事よりお悔やみが多くなります。
そしてお悔やみに付き物が相続トラブル。
本当の身内でさえ兄弟は他人の始まりというように、親が死んだら急に疎遠にしていた兄弟姉妹が「財産よこせ」とやってきますね。何にも面倒見ていなかったのに、それは当然の権利とでも言うように、いけしゃあしゃあとやってくる。そして裁判沙汰、泥沼化。結局、法律は法律なので、生前どんなに面倒見ていようと、そんな事は関係なく、法定相続人に平等に財産は分けられていく。
困るのは、親の家に子供の誰かが住んでいた場合。他の相続人は「家を売って現金でよこせ」と詰め寄ります。しかし家を売ったら住む場所がなくなる。さあ、どうする?泣く泣く家を売るか、借金をして他の相続人に渡すか。
どう転んでも、こんな身内はもう絶縁間違いなし。
本当の身内でさえこんなにもめるのに、そこに後妻なんかがいた日には、事態はもう血を見る争いに。
私の知人が実際に被った被害。
その祖父と先妻の間に息子がいました。
先妻は先に亡くなり、祖父は後妻をもらう。後妻との間に子供なし。
次に祖父が亡くなり、祖父の財産は後妻と息子とで半分ずつ。結局、息子夫婦は後妻の面倒を見ながら同居していました。
息子夫婦には男女の子供二人いて、娘は同居。
そして次に息子が先に亡くなり、その財産は息子の妻と子供二人で相続。
その後、同居していた祖父の後妻が亡くなった。
それが大きな問題を招きました。
後妻が亡くなった途端に、後妻の親戚一同が詰め寄り「財産よこせ」と始まったのです。
息子の妻とその娘と後妻が同居していた家は、地域の一等地にあったため、そこに目をつけてきたのでしょう。
とにかくご想像通り。
「家を売って現金でよこせ」と一歩も引かない。しかし、息子の妻と娘、すでに老人と中年の女性には経済力がなく、家を売らない限り現金は持っていないし、借りれるあてもない。しかしこの二人は住み慣れた家を離れたくない、つまり売りたくない。
結局、見るに見かねた別居の息子が何千万円かを立て替えて後妻の相続人に渡し、この後妻親族とは縁を切ったのでした。
立て替えた息子が私の知人なんですけどね、可哀相に。自分の将来のために一生懸命貯金してきたお金のほとんどを守銭奴たちにもぎ取られたわけです。
ここで、なぜそんな問題に発展してしまったか。
大きな落とし穴は、祖父が後妻をもらった時に、息子を養子縁組しなかったことでした。つまり、息子は祖父の直系家族だけど、養子縁組してないので、後妻とは赤の他人状態だったのです。
そして、まさかこんな大問題が起こるとは露知らず、健気に後妻の面倒をせっせと見てあげていたのでした。
悔やんでも悔やみきれない。
後妻からしたら、「しめしめ」とほくそ笑んでいたことでしょう。
男は一般的に生活能力がないので、奥さんに先立たれると途端に不安になり、財産目当てなのも気づかずに気安く再婚してしまいます。そしてこれまた男のくだらない本能とも言いましょうか、だいたい再婚相手は自分より10歳以上年下の後妻が多い。そうなると、順当に考えて男が先に死んで後妻が生き残るはず。
だいたい、高齢者に片足突っ込んだ年寄りと再婚しようと思う若い女は、9割がた財産目当てでしょう。だから、自分が不利になるような養子縁組の話なんて絶対に言い出さない。
まあ、蜘蛛の巣を張り巡らせて手ぐすね引いて待ってる毒蜘蛛みたいなものですね。
私の親も同様です。
まんまと毒蜘蛛に引っかかって、子供と疎遠にさせられ、財産は根こそぎ持って行かれました。
これもそれも、ぜんぶ、男がだらしないからいけないのよね。
ちなみに我が親の後妻には、前の夫との間に二人の子供がいて、私の親との間には子供はいない。前の夫が死んだら後妻の子供に財産が入り、私の親が死ぬと後妻にこちらの財産半分が行き、さらに後妻も死ねばもともと私の家計の財産の半分までもが後妻の子供に行く算段。つまり両ドリ。
やっぱり後妻になるだけあって、どこまでもしたたかで欲深いのでした。
そういう訳で、中年になると、同様の相続トラブルをあちこちで聞きます。
そして大概が後の祭り状態。
やっぱり用意周到、計画的に財産を狙っていた人間にはかなわないのです。
皆さんも気をつけてくださいね。
親が死にそうになる前に、自分の戸籍がどうなっているのか、家の名義はどうなっているのか、しっかり確認しておいた方が身のためです。
後で泣を見ないためにも。