英語の論文なので恐縮ですが、岡山大学医学研究科の大学院生が教授の指導の下に、岡山大学病院における2011年から2022年の25の成人の再発・難治性のFLT3変異のあるAMLの症例(うちギルテリチニブによる維持療法を移植後早期に行ったのが14例、これを行わなかったのが11例)の結果から、再発・難治性のFLT3の遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)でも、造血幹細胞移植後の早い段階において低用量から開始するギルテリチニブ(ゾスパタ)による維持療法を行うことによって、そのような維持療法を行わなかったグループと比べて、1年間の無再発生存率を大きく改善できたというデータをもとに、そのような移植後早期の維持療法が予後の改善に役立つことを示す英語論文が公表されています。
具体的には、移植後早期(外国の治験では移植後中央値55日でギルテリチニブを始めているところ、この症例研究では中央値36日でギルテリチニブを開始しています)にギルテリチニブによる維持療法を行ったグループについては、1年後の無再発生存率は100%であったのに対して、これを行わなかったグループの1年後の無再発生存率は36.4%となっています。また、とくに、非寛解又は微小残存病変がある状態で移植を受けた19人の患者についてみると、ギルテリチニブによる維持療法を行ったグループでは1年後の再発率は0%であったのに対し、これを行わなかったグループにおける1年後の再発率は68.8%とかなり高い数字でした。これらの結果から、25例というごく限られた数の患者の方を二つに分けて移植後1年間に限定しての再発率や無再発生存率を比べたデータであるとはいえ、移植後早期に少量のギルテリチニブを開始し、後から増やしていく維持療法が無再発生存率の改善に大きな効果を上げることが示されているように見えます。
以下は、この論文へのリンクです。
なお、FLT3の遺伝子変異のある急性骨髄性白血病に対して、造血幹細胞移植後にギルテリチニブなどの分子標的薬を組み合わせて維持療法を行うことの有効性については、2021年9月に本ブログのFLT3遺伝子の変異があるAMLに対する最近の治療方法を整理した論文についての中で、英語の論文を翻訳したものがあります。もっとも、2年前のものなので、現在ではやや古くなっているかもしれないのですが、そちらの方が他の薬剤との併用も考えたより詳細なものなので、ご参照下さい。