時刻表にも愛読者はいる。
宮脇俊三先生が、「時刻表2万キロ」の冒頭に書いた名言である。
なんと、一言にして上手い掴みだろうか。この書き出しを見て、読んでみようと思った人がたくさんいるはずだ。そして、デビュー作にして見事に大ヒットした。
私も時刻表の愛読者であった。「であった」と言うのは、最近は愛読者では無いと思う。かつての時刻表は、改正の度に目を見張るようなトピックがあって、ページをめくるのがとても楽しみだった。しかし、近年の時刻表は全く面白みが無い。「改正」ではなく、「改悪」なのではないかと思うことがある程だ。
宮脇先生も、年々つまらなくなっていく時刻表を憂いていた。でも、時刻表製作者の名誉のため言って置くが、これは時刻表の編集者のせいではない。走らせる側のJRの責任である。
新幹線という採算至上主義の列車を毎回増発し、夜行列車という庶民的で趣のある便利な乗り物を毎回消していく。もう、20年近く続けられている改悪である。しかし、そのために愛読者が減る時刻表は気の毒である。まさか、面白くする為に、勝手にブルートレインを大増発する訳にはいかないし、夜行の快速を臨時で書き足すわけにも行かない。「これはつまらない」とわかっていながら、それを事実のままに出版しなければならない辛さを思うと、胸が痛くなる。
私が中学生ごろの時刻表を開いてみる。東京から九州方面に、多数の寝台特急列車が運転されている。関西から九州へも、たくさんの寝台特急の設定がある。東北方面も、上野~青森間の寝台特急「ゆうづる」が7往復も設定されている。そして、青函連絡船に接続し、函館から道内各都市へ向かう列車が接続してる。それはもう、芸術品の様な、高度なパズルの様な、美しく緻密な職人芸である。
JRは時刻表愛読者を増やす努力はしないのだろうか。かつて、「いい旅チャレンジ2万キロ」というキャンペーンがあった。国鉄が真剣に、時刻表愛読者を増やし、列車に乗ってもらおうと努力していた時代である。当時に比べ、利用者は圧倒的に増えている事だろう。でも、時刻表愛読者は確実に減っていると思う。ファンを大事にしないものは、いつか必ず報復を受ける。
早くJRに気付いて欲しい。